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上場から1年、持株会社化によって新たなステージへ

「私たちの上場ストーリー」は、上場にまつわる様々なエピソードを通してレオスのことを知っていただくとともに、株式市場の魅力や面白さをお伝えしたいと発信しているシリーズです。

この連載を始めたのは、2023年4月にレオス・キャピタルワークスが東証に上場したことがきっかけでした。

ところが今年、2024年4月にSBIレオスひふみ株式会社という新会社が設立され、レオス・キャピタルワークスの単独株式移転により東京証券取引所グロース市場に上場、新しく「165A」という証券コードになりました。それにともない、レオス・キャピタルワークス(証券コード7330)は上場廃止となっています。

左がSBIレオスひふみ株式会社、右がレオス・キャピタルワークス株式会社の上場通知書

…これはどういうことなのでしょうか?

少し専門的な話になりますが、SBIレオスひふみはレオス・キャピタルワークスの持株会社(完全親会社)になったということです。ホールディングス化によって子会社となったレオス・キャピタルワークスは非上場になりました。

2024年4月からの新体制

持株会社化?ホールディングス化?
やっと上場のことが分かってきて、そろそろこの連載も終わろうかと思っていたところで、思わぬ難問に突き当たってしまいました…

このお知らせを発表した当初、レオスの株主になってくださっている方からも反響がありました。
そこで今回は、新会社(親会社)SBIレオスひふみ 広報IR部の担当者に、なぜ持株会社化をしたのかという疑問をぶつけてみたいと思います!(聞き手:レオス・キャピタルワークス株式会社マーケティング部/長尾)


持株会社移行の背景と目的

―今回お話を聞いたのは、SBIレオスひふみ株式会社広報IR部の八尾(やつお)さんです。八尾さんは約1年前まで、レオス・キャピタルワークスの株式戦略部でシニア・ファンドマネージャーとして活躍していました。

IR担当の八尾

八尾:これまではファンドマネージャーとして投資家の立場で企業の価値を分析し、投資信託ひふみシリーズ、とりわけひふみワールドの運用に携わってきました。その経験を活かして、今はIR(インベスター・リレーションズ)担当者として、企業と投資家の橋渡し役を担っています。
レオス・キャピタルワークスが上場したあと、IR担当として2023年7月に異動になったという経緯です。

―今回の持株会社移行について、まず目的を教えてください。

八尾:持株会社化により、当社の企業価値を高めるためにM&Aをはじめ多様なパートナーと機動的な資本業務提携等を行なうことが可能となります。以前はこういった活動がかなり制約されていました。これは、レオス・キャピタルワークスは投資運用業を本業とする金融機関であり、金融庁の監督下にあることから金融事業とは全く異なる事業への進出が厳しく制約されていたという事情がありました。
極端な例ですが私たちがレオスの企業価値を高められると考え「焼肉屋をやりたい!」といっても、金融機関である以上簡単にはできなかったんです。
 
今回の体制変更により、レオス・キャピタルワークスは引き続き金融庁の監督下ではありますが、その親会社にあたるSBIレオスひふみ株式会社は金融機関ではありませんので金融庁の監督下ではなくなります。
つまり「焼肉屋をやりたい!」と思ったら、子会社を設立して焼肉屋を開業することだって可能ですし、金融事業とは全く異なるビジネスを展開できるわけで、これが大きなメリットです。もっとも本当に焼肉屋をやるわけではないので、その点に関してはご安心ください(笑)
 
今後は子会社を設立するだけでなく、M&Aによる企業の買収なども考えられます。これまで考えられなかった新しい形での事業展開が可能になると、運用会社(金融機関)としての枠を超えた付加価値を世の中に提供できることになります。それが、今回の持株会社化の目的です。

 
―焼肉屋を展開するSBIレオスひふみ株式会社ですか!面白い例えで、想像が広がりますね。

八尾:実はレオスという会社は、元々自由な発想で事業を展開したいという考えのもと設立されたんです。これまでは柱となるのが投資運用業でしたが、金融業に限定しなくてもいいと考えています。近年では金融教育という文脈で各地で講演やワークショップを行なったり、YouTubeチャンネル「お金のまなびば!」を通して発信を続けたりしています。
そうした活動が、レオスの販売パートナーの皆様にとって、ビジネスのサポートにもなる側面があります。
 
例えば「お金のまなびば!」は既に約35万人もの方々にご登録いただいており、これは金融業界ではトップクラスです。販売パートナーの皆様には金融教育プラットフォームとしても好評で、具体的には動画を用いた営業担当の皆さんへの研修ツールとして活用する例もありました。
このチャネルの存在自体が、商品選定をするうえでの当社の差別化ポイントにもなります。そうした多様な活動はレオスの強みですし、もっと広げていくことができます。

―持株会社化に伴い、株主の皆さんやひふみのお客様に反響はありましたか?

八尾:20周年を迎えたレオス・キャピタルワークスに対しては、愛着やブランド認知の積み重ねがありますので、引き続き応援していただきたいと思っています。そして新しく設立したSBIレオスひふみ株式会社については、株主の皆さんやひふみのお客様にとってまだ馴染みがありませんので、上場企業として広く知っていただけるよう頑張っていきたいです。

2023年4月、レオス・キャピタルワークスが上場したときの様子。右側が八尾。

投資家とのコミュニケーション

―八尾さんはIRの担当になってから、どんな活動をしているのですか?

八尾:レオスが上場した時から、個人投資家の皆さんとの接点が増えてきました。博多や東京で説明会を開催しましたし、私たちとしても個人投資家の方々との直接の対話を重視しています。特に2023年12月の決算説明会は大和証券と協力して開催したこともあって、200人近くの方に参加していただきました。今後もこうしたイベントを通じて、個人投資家の皆さんとの関係を深めていきたいと考えています。

またSBIレオスひふみは個人株主の皆様に支えられています。当社の株主数は5,000 名を超えますが、このうち個人投資家構成比率は9割を超えています。当社程度の時価総額であればここまで個人株主数が多い企業はあまり見かけませんので、これは当社の強みになるだろうと考えています。

また機関投資家向けのIR活動にも取り組んでいます。直近では英国のロンドン、エジンバラに行ってきました。英国には昔から、長期で資金運用する機関投資家が多くて、私たちのニーズとマッチしやすいところがあるからです。
海外の投資家を訪問するのは、もともと日本の株式市場において海外投資家の比率や存在感が高いという理由もありますよ。

―海外投資家向けのIR活動がどんなものか想像がつかないのですが…?

八尾:今回はちょうど持株会社化するタイミングだったので、英国の投資家たちともその話をしましたよ。それから、レオスが考えている新商品について説明するとか。あと、彼らは「日本のNISAってどうなの」とすごく気にしています。
ご存じかもしれませんが、NISAって英国のISAという制度を真似してつくったんですよね。

NISAとは「少額投資非課税制度」のことで、英国のISA(Individual Savings Account)を参考に導入され、NIPPONの頭文字「N」をとってNISAと名付けられました。

出典:日本証券業協会HP  https://www.jsda.or.jp/jikan/qa/058.html

八尾:英国ではISAができてから国民の間に投資が普及し、同時に投資信託の運用残高もふえていったという経緯があります。そのため、日本でも英国と同じことが起こるのではないかと英国の機関投資家は想像しているのです。

あくまでファンドマネージャーを務めていた時代の個人的な経験値による感覚ですが、海外の投資家は比較的に長期の目線で企業の行く先を捉えているように思います。私たちとしては、その期待に応えるためにもしっかりとしたビジョンを示すことが大切です。投資信託の運用業務はもちろんですが、SBIレオスひふみとして金融業に限らず世の中に価値を提供していきたいという部分は、彼らにも評価してもらいました。

企業IRを見るときのポイント

―SBIレオスひふみの話から少しそれますが、株式運用の担当者としての経験が長い八尾さんから見て、企業IRを評価するポイントについて教えてください!

八尾:それって、いまの私の仕事にダイレクトに返ってくる話なので言い辛い部分もありますが…。企業IRは、論理的に数字で説明する部分もありながら、感情に訴える部分を読み取ることも重要だと思っています。
「私たちはすごく良い会社です」と言っていても、売上が下がっていたり、利益が出ていなかったりすればそもそも説得力がありません。一方で業績だけでなく、5年後や10年後に社会の課題を解決する力があるかどうかを見ることも大切です。足元の業績は良くても、継続性・再現性がなければ投資対象として考えるのは難しいと思います。一時的なブームで終わってしまう事業も沢山ありますからね。

手前みそですが、SBIレオスひふみの持株会社化について英国の投資家に評価された点は、意外にもYouTubeでの発信でした。子会社のレオスが「お金のまなびば!」の動画コンテンツを通して金融教育に力を入れていることが評価されました。
それというのも、ヨーロッパでは古くから地位の高い人や富裕層が社会的な活動を重視する文化があります。ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige)の精神です。私たちが金融商品の販売だけに注力するのではなく、投資家として教育を大切にしている点が社会的に意義のあることだと思われたんですね。その日、実際に訪問したある投資家が、ロンドンの学生を対象とした「運用コンテスト」のお手伝いをしている方だったので、金融教育についての話で盛り上がりました。

皆さんもぜひ、そうした観点で企業IRを分析してみてほしいと思います。

―最後になりますが、今後のIR活動について教えてください。

八尾:SBIレオスひふみとしてのIR活動は始まったばかりで、課題も多いです。
例えば、子会社のレオス・キャピタルワークス、レオス・キャピタルパートナーズはともに金融の会社で、人的資本がすべてといっても過言ではありません。製品をつくる工場などは持っていないですからね。でもその価値を目に見える形式で説明するのはとても難しいです。女性管理職比率が何パーセント、といった単純な数値では分からない部分を、統合報告書やその他の発信を通じてどう表現するかが問われます。
それから社長の藤野とは、株主総会をもっと面白くしたいという話をしたりしています。個人投資家にアピールしていきたいので、株主総会の前後に誰でも参加できるIRイベントを開催するとか。
持株会社化によって、これまで以上に新しい価値を提供して株主やお客様の期待に応えられるようにしたいですね!
 
そしてこれが最も大きなことなのですが、当社株価が現在は公募価格を下回っていることにより株主の皆様にご心配をおかけしている現状があります。その解決が非常に重要な課題です。
これを解決するために、長期的に株を保有していただける株主様を増やしたいと考えています。そのために、個人投資家説明会をもっと頻繁に開催する予定です。直近では5月に大阪で個人株主様向け会社説明会を行いましたが、今後も全国各地で開催していく予定です。また、IR情報の発信頻度や内容をさらに充実させて、皆様にもっと当社のことを知っていただけるように努力していきます。
 
これからも会社全体で皆様の期待に応えられるように頑張りますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

持株会社化については動画でもお話していますので、ぜひご覧ください。

※個人投資家向けオンライン決算説明の動画につきましては、2024年5月31日にSBI証券で開催した個人投資家向けオンライン会社説明会を収録したものです。過去SBI証券HP(オンライン会社説明会)上に掲載した弊社主催のオンライン会社説明会であり、同社が有価証券の売買その他取引等を誘引する、又は投資勧誘、個別銘柄の推奨等を目的とするものではありません。

次回は最終回となります。外部の専門家として一緒に仕事をしてくださるマーケティングのプロ、上野 美香さんにスタートアップの資金調達やIRの仕事についてお話をうかがいます!引き続きご覧いただけると嬉しいです。

※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。

 

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