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【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝

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第14回山本七平賞を受賞され、100年経営の会顧問や、日本将棋連盟アドバイザーなど、多方面でご活躍されている作家・北康利先生による新連載企画です。 日本林学の父、公園の父と呼ば… もっと読む
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2021年4月の記事一覧

【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝 #01

こんにちは。ひふみラボ編集部です。 今回より、作家・北康利先生による、林学者で投資家の本多静六の投資哲学を現代に伝える連載小説をひふみラボnoteでスタートします! こちらは毎週金曜日に更新していく予定です。 第1章の章末からは、レオスの運用メンバーが実際に小説を読んだ感想もご紹介していきます! 皆様もぜひ、お読みいただいた感想をFacebookやTwitterなどのSNSでシェアしてくださいね。 プロローグ 永遠の森 (1) 日本で一番参拝客を集める明治神宮。コロナ前は

【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝 #02

前回はこちら↓ プロローグ 永遠の森 (2) 本多はいわゆる生来の天才ではなかった。秀才でもなかった。ひたすらに努力の人であった。「人生即努力、努力即幸福」という彼の言葉が、そのことを雄弁に物語っている。幼いころの勉強嫌いを克服し、圭角(けいかく)のある性格を矯正し、早くに人生計画を立て、よい習慣を身につけて実践していった。 彼の造林学と人生計画には似通ったところがある。まずその環境に適した森林の理想型を頭に思い巡らす。寒冷地に暖帯の木を植えても早晩枯れる。自分の能力や環境

【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝 #03

前回はこちら↓ 第一章 勉強嫌いのガキ大将 (1)折原静六本多静六は慶応二年(一八六六)七月二日、武蔵国埼玉郡河原井村(現在の埼玉県久喜市菖蒲町河原井)の農家に、父折原長左衛門(通称禄三郎)、母やそとの間の六番目の子(三男)として生まれた。大学生の時、本多家に養子に入っているが、それまでは折原静六である。 八人兄弟であったが、三人は早世し、一〇歳の頃にはすでに兄が二人、姉が一人、妹が一人になっていた。幼くして命のはかなさを感じ、世の無常をかみしめるのは、当時のこの国の日常で

【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝 #04

前回はこちら↓ 第一章 勉強嫌いのガキ大将 (2)折原家と不二道孝心講静六の祖父折原友右衛門は傑物であった。 静六はこの祖父に最も大きな影響を受けたことを、自叙伝『体験八十五年』の中でわざわざ言及しているほどだ。 そんな友右衛門には深く信仰しているものがあった。不二道といい、江戸時代隆盛を極めた富士講の流派の一つである。 多種多様な神仏を敬う日本人の宗教観は、およそ世界の常識とはかけ離れているが、江戸時代はそれが顕著であった。幕府はキリスト教を禁止していただけで、民間信仰に

【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝 #05

前回はこちら↓ 第一章 勉強嫌いのガキ大将 (3)折原家と不二道孝心講(続き)富士講教主から絶縁を言い渡された後も、友右衛門たちは黙々と〝行〟を続けた。 明治一一年(一八七八)には、埼玉県庁付近の土木工事を〝土持〟の行として行っている。 これに対し、名県令として知られた白根多助(しらねたすけ)は「至誠報国不二道孝心講」と書いたのぼりを贈って労をねぎらった。友右衛門がいかに感激したかは、彼の戒名が至誠院報国孝心居士であることからも知れる。 明治一七年(一八八四)からの皇居内工