【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝 #14
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【彰義隊の本田晋】
第二章 暗い井戸の底をのぞき込んだ日 (7)銓子との縁談静六に縁談話が持ち上がったのは、東京農林学校本科二年生の終わりごろ。卒業まであと二年と迫った満二二歳の春のことであった。
松野先生に呼ばれ、こう切り出された。
「彰義隊の元頭取で本多晋(すすむ)という方の一人娘に婿を取る話があるのだが、なんでも是非大学の首席をもらいたいとのことで、僕のところへ頼みに来られた。どうだ、行く気はないかね」
静六は面食らった。まだ結婚のことはまったく考え