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【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝

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第14回山本七平賞を受賞され、100年経営の会顧問や、日本将棋連盟アドバイザーなど、多方面でご活躍されている作家・北康利先生による新連載企画です。 日本林学の父、公園の父と呼ば… もっと読む
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2021年8月の記事一覧

【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝 #19

前回はこちら↓ 【ドイツ林学の祖ハインリッヒ・コッタ】 第三章 飛躍のドイツ留学 (3) ドイツ林学とターラント山林学校ここで少し、当時のドイツ林学について解説しておきたい。 そもそもヨーロッパにおける森林は、童話『ヘンデルとグレーテル』のそれのように、従来は魔物の住む恐ろしいものとされていた。 それを近代に入ってヨーロッパの人々は人工的に手を加え、天然資源として収益を生むものに変えていった。中でもドイツは職人学校(マイスターシューレ)を設け、高級森林官(フォルスター)制

【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝 #20

前回はこちら↓ 第三章 飛躍のドイツ留学 モテモテの留学生活修学旅行から帰ってきて迎えた五月十一日は、ターラントに来て最初の日曜日であった。 「教会に行ってみないか?」 そう友人に誘われ、下宿の後ろの山の頂上にある教会に行ってみたところ、思った以上に壮麗な建物なのに驚いた。 日本人が行くと皆喜んでくれる。説教を聞いていると語学の勉強にもなる。それから日曜日には極力教会に行くことにし、銓子の伯母出口せいから餞別にもらった聖書が早速役に立った。 五月十五日はキリスト昇天祭で休

【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝 #21

前回はこちら↓ 【造林学の権威 ミュンヘン大学総長カール・ガイアー】 第三章 飛躍のドイツ留学 (5) ミュンヘン大学入学後に訪れた試練静六は、ドイツでたまたま目にした日本の新聞記事の中に銓子の名前を発見して思わず胸が熱くなった。 〈久し振りで日本の新聞を読んだ。中でも感動の深かったのは、わが最愛なる妻の名があったことで、五月一日及び三日の両紙に診療時間改正の広告があったことである〉 (明治二三年六月十五日付『洋行日誌』) 静六の留学中、銓子は新堀町の自宅に診療所を開

【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝 #22

前回はこちら↓ 【関東大震災から東京を復興させた男 後藤新平】 第三章 飛躍のドイツ留学 (6) 後藤新平との出会い静六がミュンヘン大学で博士号(ドクトル)に挑戦していた頃のこと、ふらっと一人の日本人が彼の前に現われた。それが後藤新平だった。 台湾総督府民政長官、南満州鉄道(満鉄)初代総裁、逓信、内務、外務大臣、東京市長などを歴任し、実行力もあったが、なにしろ言うことが日本人離れしたスケールなもので〝大風呂敷〟というあだ名がついた政治家だ。 関東大震災の翌日に内務大臣兼帝