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【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝

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第14回山本七平賞を受賞され、100年経営の会顧問や、日本将棋連盟アドバイザーなど、多方面でご活躍されている作家・北康利先生による新連載企画です。 日本林学の父、公園の父と呼ば… もっと読む
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2022年5月の記事一覧

【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝 #58

前回はこちら↓ 【渋谷・本多邸】 第五章 人生即努力、努力即幸福 (4) 泥棒の取るものがない家農科大学の官舎を出て彼が住んだ渋谷の本多邸について触れておきたい。 家族も増え、晋夫妻との三世代同居を考えて引っ越したわけだが、そもそも彼は大きな家が大嫌い。最初は書生や女中なしで住める家をと考え、豊多摩郡渋谷町中渋谷(現在の東京都渋谷区桜丘町)に小さな家を建てた。 周囲から三メートルほど高い場所にあり、ウナギの寝床のように長細い敷地だ。奥に晋夫婦の隠居する離れを造り、渡り廊下

【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝 #59

前回はこちら↓ 【静六の好物・天丼】 第五章 人生即努力、努力即幸福 (5) 天丼会静六は東京山林学校時代、幸手(さって)の叔父(金子茂右衛門)に上野広小路の梅月(ばいげつ)という店で天丼を御馳走になったことがあった。靴一足を三年、靴下一足を四年使っていたあの極貧の時代である。 天丼を食べるのが生まれて初めてだった彼は、 (この世にこれほど美味しいものがあったのか!) と驚嘆した。 本当はもう一杯食べたかったが、これ以上散財させては申し訳ないと思い遠慮した。 だが思いは残

「若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝」著者・レオスメンバー座談会 (4)

前回(第3回座談会)はこちら↓ ================================== 本編 ――今回も第4回座談会にご参加いただきましてありがとうございます。参加者は前回と同じく本連載の作者である北康利先生、レオス・キャピタルワークス株式戦略部のシニア・ファンドマネージャー八尾 尚志、シニア・アナリスト小野 頌太郎の3名でお送りいたします。 第三章までは静六の家庭環境や成長の過程にスポットが当てられていましたが、第四章では大学を卒業して社会人となり、いよ

【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝 #60

前回はこちら↓ 【安田善次郎翁】 第五章 人生即努力、努力即幸福 (6) 勤倹貯蓄の大先輩・安田善次郎大正一〇年(一九二一)の初秋のこと、静六は安田銀行創設者の安田善次郎を大磯の別邸寿楽庵(じゅらくあん)に訪ねた。 彼にとって安田は憧れの人だ。〝ケチの安田〟と呼ばれるほどの勤倹貯蓄の権化。静六の四分の一天引き貯金も、安田の五分の一天引き貯金を参考にした可能性が高いのではないかということについてはすでに触れた。 この時の訪問の趣旨は、安田邸の庭園を一般に開放してほしいと依頼

【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝 #61

前回はこちら↓ 【本多静六と銓子夫妻】 第五章 人生即努力、努力即幸福 (7) 銓子の死ある日、銓子が静六に折り入って相談があると言ってきた。 「この間、以前世話をした苦学生がやって来まして、肋膜炎で二、三ヵ月転地療養の必要があると医者に言われたそうなんです。なんとか助けてあげたいので、日光行きのお金を用立ててあげてもよろしいかしら」 〝日光行きのお金〟というのは、銓子がまだ日光に行ったことがないというのを聞いた静六が、 「〝日光を見ずして結構と言うな〟という。お前も〝結