高橋さん_後編_

“ひとひねり”を発見する! 海外企業に魅了される瞬間/高橋 亮(後編)

投資信託「ひふみ」のアナリストに、ビジネスや世の中の流れを語ってもらう連載、「ひふみのアンテナ」。今回は主に海外株を調査するシニア・アナリストの高橋亮に聞きます。日本人アナリストとして、距離などのハンデを乗り越えてどう海外企業を調査しているのかを話してもらった前編に引き続き、後編では、企業にときめく瞬間を語ってもらいます。前編に引き続きマーケティング・広報部の大酒が聞きます。

前編はこちら↓

単に地味なだけではない家庭用発電機企業

――地味で地道な企業が好きだとのことですが、取材していて「おっ、いいな!この企業」と思う瞬間はどんな時ですか。

単純に地味で地道なだけではなく、販売方法が面白い、といったように、“ひとひねり”あることがわかった時が、取材していて楽しい瞬間ですね。前編でも話したように、僕は取材先を絞りません。行けるところは全部行きます。最近ではあまり期待をせずに行って「案外いいじゃん」と思ったのが、米国のジェネラック・ホールディングスです。

一般的な家庭用発電機の会社だと思っていたんです。でも、取材してみてわかったんですが、全米のハリケーンの発生をモニタリングして、停電が心配される場所に広告を打ったり営業担当者を送り込んだりする、という洗練されたマーケティングをしていた。付加価値の源泉は、実はマーケティングにあったわけですね。

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成長ストーリーに賭ける中小型株

――以前に米国で高橋さんが取材したモトローラソリューションズも、主力は警察無線のメーカーです。どんな“ひとひねり”があったのか、気になりますね。

警察や消防の無線機器メーカーですね。公的機関の無線は、非常に複雑な規格や許認可が絡んでいます。そうなると参入しようと思っても面倒くさすぎてできないんです。高い参入障壁がある一方で、需要は一定数ありますよね。

さらに、行政が求めるスペックも、徐々にですが高くなってきている。そうなると小さなメーカーは対応できなくなり撤退していくため、残存者利益が大手に集中するわけです。「無線機器のメーカー」ととらえると魅力はそんなに感じられないかもしれませんが、取材して周辺のファクトを知ることで魅力がわかってきます。

大型株は、こうした成長ストーリーが見えにくい。様々な事業を抱えていると、自分がどんな成長ストーリーに賭けているのかが、ぼやけてしまうんです。事業がシンプルな中小型株の方が、1社あたりの分析時間が短く済みますし、好きになった強みに賭けることができますね。

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巨大ブランド企業の買収をどう読む?

――米国に話が偏ってしまったのですが、欧州ではよい出会いはありましたか。

実は、欧州はまだ「これは!」という企業に巡り合っていないんですよ。欧州はマクロ経済的にみると低成長で、日本によく似ています。また企業も、日本と同じように製造業が多い。グロース株(成長株)よりもバリュー株(割安株)が多く、そういった意味で未知のビジネスに出会いにくいのかもしれません。

――欧州企業で言えば、最近はフランスのLVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)が米国のティファニーに買収提案をしましたね。

そこは、いつかこうなる のではないかと思っていました。LVMHやケリングなど欧州の巨大ブランド企業は、知名度の高いブランド企業を手に入れたいと思っているわけですが、創業家が株主として残っていると、買収しようと思ってもできないことが多い。少々のプレミアムを乗せて株を買い取ろうとしても、創業家は売ってくれないでしょう。その点、ティファニーは創業家が株主から抜けているパブリック企業です。

巨大企業に買収されずに残っているブランド企業のうち、創業家が支配株主にいないのはあとは英バーバリーくらいですかね。バーバリーが今後どのような道を歩むのかはまったく分かりません。いつかは買収される可能性があっても、それがいつなのかは誰にも予想できませんし。だからこそ、僕はこういったイベントに賭けるのではなくて、地道な取材で成長性を見極めたいと考えています。

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(インタビューを終えて)
もともと銀行マンだった高橋ですが、20代の後半、運用会社のアナリストに転身しました。5社が合併してできたばかりの運用会社だったため企業文化がないに等しく、自由に仕事ができたことが成長につながったそうです。前編でも少し触れましたが、最近、高橋は医療機器関連企業の調査に没頭しています。これまで知らなかった業界について学ぶことは楽しいとのことで、根っからのアナリスト気質を感じました(マーケティング・広報部 大酒)

※当コメントは個人の見解であり、個別銘柄の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。また、当社運用ファンドへの
※組入れをお約束するものではありません。

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