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「幸せなお金の使い方」は親が教えるもの レオス蛭田純が子どもに伝えたいこと(前編)

「これからのお金」「これからの投資」を一緒に考える“研究所”、ひふみラボ。こちらのnoteでは、ゲストの方々にさまざまな切り口で参加していただいています。

「子どもに伝えたい、お金のこと」は、ライター田中裕子さんによる連載です。

「お金についてなにを教えたら正解なのか、よくわからない」「子どもたちが生きる時代に、自分の知識が役に立つのか自信がない」そんな、お父さんお母さん、いらっしゃいませんか。一児の母でもある田中さんもその一人です。

本連載では、田中さんがインタビュアーとなって、「投資のプロ」でもあるレオス・キャピタルワークスのメンバーたちが考える「お金の教育」について、率直に尋ねていっていただきます。

今回はパートナー営業部の蛭田純が登場します。現在36歳、二児の父である蛭田は、2012年にレオスに中途で入社してから、お金の価値観がガラリと変わったと言いますが、それは一体どうしてなのでしょうか? 前編でお話ししています。

* * *

今回の話し手:蛭田純
レオス・キャピタルワークス パートナー営業部。2012年レオス・キャピタルワークスに入社、運用部を経てパートナー営業部に所属。二児の父。子どもたちにはあえて早期教育はさせなかった。お金についての考え方が30歳前後でガラッと変わった経験を持つ。
聞き手:田中裕子
ライター。1歳9ヶ月の娘を持つ母、ビジネス系出版社出身だが、お金についてはどうもフワフワしている。

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親はまず「お金の使い方」を教えるべき

——お金のプロにお金の教育について教えてもらおう! という本企画、第2回のゲストはパートナー営業部の蛭田さんです。蛭田さんは36歳、私にとっても「ちょっと年上の先輩パパ」。現在進行形で実践している「お金の教育」についてお話しいただければと思います。まずは家族構成を教えていただけますか?

はい、妻と小学2年生の7歳の息子、5歳の娘の四人家族です。とくに息子はやんちゃで、毎日家が大変なことになっています(笑)。

——あはは。小学2年生の男児って、ほんとうにエネルギッシュですよね。

そうなんですよ。自由奔放で、悩みのなさそうな「ザ・男の子」。まあ、そこがかわいいんですけどね。

うちは上の子がそんなキャラクターですし、お小遣いもまだあげていないので、本格的にお金の教育をスタートしているわけではありません。

ただ、お金の教育については、以前から決めている方針がひとつだけあるんですよ。

——おお、なんでしょう? ぜひ教えてください。

何はなくとも「使い方」を教える、ということです。ぼくはお金の使い方こそ、お金教育の根幹だと考えています。

——使い方ですか。「貯め方」や「殖やし方」ではなく?

ええ。たとえば節約術や「何歳までにいくら貯金しましょう」といった情報は、世の中にあふれていますよね。投資をはじめとした資産運用についても、最近は積極的に語られることが増えてきた。いずれも検索すれば知りたい情報は出てくるし、メディアでも特集されやすいテーマと言えます。

一方、「使い方」は正解を提示しづらい。情報になりづらいわけです。

——情報になりづらい?

やっぱり、「何にいくら使う」ってかなりセンシティブな話じゃないですか。個人の価値観が色濃く反映されるし、所得や家庭環境も大きく影響するし……親くらい近い関係じゃないと、「お金の使い方の本当のところ」は見ることができませんよね。

だからこそ親は「いい消費」、言い換えれば「幸せなお金の使い方」を子どもに伝えるべきだと考えています。

——なるほど。「使い方は親しか見せられない」って、たしかにそうですね。蛭田さんの考える「幸せなお金の使い方」の定義はありますか?

それはシンプルで、自分の好きなモノやコトにお金を惜しまず使うこと、ですね。……こう言うと贅沢だとか、浪費家に育てたいのかと思われるかもしれません。でも、決してそうじゃないんです。

ただお金を垂れ流すのではなく、反対に守り過ぎるのでもなく。自分の収入の中で納得感を持ってお金を使うすばらしさを、子どもには伝えたいですね。

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投資で学んだお金を使う意義

僕は、物心ついたころにバブルが崩壊した世代です。育ってきた社会は右肩上がりとは言えず、経済で言えば縮小均衡。節約や貯金が正しく、消費イコール浪費、つまり悪いことだと無意識に刷り込まれてきました。いわば、お金の「守り方」はすっかり身についているわけです。

——ああ、同世代として、すっごくわかります。

一方で、お金の活かし方はほとんど教えられた記憶がありません。だからかぼくは……個人のスタンスとしては「使う」や「殖やす」より、「貯める」のが好きだったんですよ。それはもう、自然と染みついた習性として。

具体的には、ずっと「お金が減ること」に強い抵抗感を持っていました。大学生になって一人暮らしをはじめて以降、できるだけお金を使わないように生活していましたから。モノを選ぶときの基準は、ほぼ値段だけ。働きはじめてからも、消費のスタンスは変わりませんでした。

振り返ってみると、それは決して幸せな消費ではなかったんですよね。ただ出ていく額の多寡だけを考えながら、妥協してお金を使う行為は。

このスタンスが変わったのは、レオスへの転職がきっかけでした。ぼくの「人生を楽しく生きる」という価値観は、投資を通して得られたんです。だから30歳を過ぎてからかな、ちょっと遅いですよね(笑)。

——投資で、人生観を……? ええと、どういうことでしょう。

ぼくはいま営業の仕事をしていますが、以前は藤野(前回の記事はこちら)と同じ運用部でアナリストとして働いていました。企業を分析して、どの会社に投資するか藤野らファンドマネージャーに提案する仕事です。

このとき学んだのが、ただ数字を見るだけではいい投資はできないということ。経営者に話を伺ったり、働いている人の表情を見たり、サービスを体験したり、総合的に評価しなければ、いい会社かはわからないわけです。

それで、最終的に投資の可否をどこで判断するか? 結局、自分自身が「心から応援したいかどうか」なんですよ。経営者や、その会社の力になりたいと思えるかどうか。

——じゃあ、業績はいいけれど経営者に会ったときに「あれ?」と思ったら……。

「カネ儲けのことしか考えていない事業だな」「従業員の表情が暗いな」と感じたら、見送ります。たとえすぐに成果が出そうでも、です。自信を持ってその会社を応援できませんからね。

わかりやすい例として、武器を製造している企業があるとしましょう。我々が投資し、その資金をもとに作った武器が戦争で使われたら会社は儲かります。投資をした我々も利益を得られるし、我々にお金を預けてくださったお客様にも還元できる。

ではその投資を、自信を持っていいと言えるか? 言えませんよね。それこそ子どもたちに、そんな企業が儲かる社会で過ごしてほしくはない。

——はい。

反対に、いい企業はぼくたちの生活を豊かにしてくれます。そんな企業に投資というかたちで応援することで、人々はよりいい生活を享受でき、幸せになれる。その企業が儲かれば、個人資産も増えて幸せになれる。投資は、世の中にいい循環を生み出すんです。

そしてあるとき、これは普段の生活も同じだと気がつきました。友だちがお店を開いたり、心から好きなお店ができたりしたら、多少価格が高くても通うでしょう。そうすると自分は幸せな時間を過ごせるし、お店は繁盛して商売を継続できる。

——お店がずっとつづくから、自分も通えてまた幸せになれる。

そうです。自分が人生を楽しむために、お金を使う。そのお金は「応援」となり、自分の生活に返ってきて、より人生を楽しいものとしてくれる。

ああ、いい消費ってものすごく幸せなものだなと腹に落ちたわけです。投資の世界に身を置いていなかったら、いまだに、ただの倹約家だったかもしれませんね。

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「いましか使えないお金」を使う

その気づきを得ると同時に、それまでのお金との付き合い方を後悔もしました。大学生のとき、お金を理由に海外に行くことをあきらめるべきじゃなかった。20代のとき、もっといろいろな経験をすればよかった……。

——お金がなかったというより、上手に使えなかったんですね。

そうですね。あとは、「時間」について考えなかったことも後悔しています。

——時間、ですか?

言うまでもなく、時間は戻らないものです。たとえば、ぼくと妻がこれから必要以上に節約第一、残高をひたすら増やすことを目指して生活したとしましょう。そして将来、じゅうぶんなお金が貯まり、ようやく財布を開こうとする。

ところがそのころにはもう、子どもは大きくなっているわけですよ。いくらお金があっても、小さい我が子と一緒に旅行したり、思い出をつくったりすることはもうできない。

——ああー。それは想像するとさみしいですね……。

ですからぼくは、「いましかできない消費」を大切にしたいと思っています。それがいまの自分にとっては、子どもとの時間に使うお金です。とはいえ特別な贅沢をするわけではなく、週末に海へ行ったりときどき旅行したり、という程度ですけどね。

言うなれば、子どもにたくさんの経験をさせるためにお金を使うことは、少なくともぼく自身をハッピーにしているんです。これは、「いい消費」と呼んでいいのではないかと思います。

プロフィール:

ライター:田中裕子
鹿児島県生まれ。新卒でダイヤモンド社に入社、2年間の書店営業で本を売る現場のあれこれを学び、書籍編集局へ異動。ビジネス書の編集を経験したのち、2014年9月にフリーランスのライター・編集者に転身、書籍の執筆やウェブや雑誌のインタビュー記事などを担当する。現在はライターズカンパニーbatonsに所属。1歳の娘を持つ母。
ウェブサイト: https://tnkyuko.themedia.jp/
Twitter : https://twitter.com/yukotyu
note : https://note.mu/tanakayuko

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