湯浅さん

新ファンド「ひふみワールド」運用責任者が見る 投資先としての世界/湯浅光裕(前編)

投資信託「ひふみ」のアナリストにビジネスや世の中の流れを語ってもらう連載、「ひふみのアンテナ」。

わたしたちレオス・キャピタルワークスは、新たに世界株を投資対象とした投資信託「ひふみワールド」の運用を10月8日から始めることになりました(募集開始は9月26日)。

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「ひふみワールド」のファンドマネージャーを務めますのは、レオスの創業者でもある湯浅光裕です。運用経験は社長の藤野英人とほぼ同じ29年、レオスでは世界最大級の政府系ファンドであるノルウェー政府系年金の投資一任運用を担当してきました。前編では、ひふみワールドを運用するうえで関心を持っている国・地域の魅力について、語ってもらいました。

聞き手はマーケティング・広報部の大酒です。

湯浅 光裕(ゆあさ みつひろ)
1990年ロスチャイルド・アセット・マネジメント入社、1993年日本株運用ファンドマネージャー就任、ロスチャイルドグループが海外で募集したユニットトラスト、年金資金の運用を担当する。2000年、ガートモア・アセットマネジメント入社、中小型株ファンドの運用担当。2003年、レオス・キャピタルワークス創業、取締役就任(現任)。運用本部長、ひふみワールドファンドマネージャー。海外機関投資家との連携経験が長い。

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企業が強くなる仕組みがビルトインされた米国

――最近は海外調査に出ずっぱりですね。相対的に関心の高い国はありますか?

いろいろな地域に行って、やはりあらためて米国のすごさを感じました。米国って何でも持っている。天然資源がある。人口が増えている。食料自給率が高い。軍事力も最強。技術力の厚みもある。企業が存在するのに最も適した国だと思います。

――米国企業はどうして強いのですか?

ひとつの答えは「新陳代謝」ですね。M&Aが活発で、事業を売却したり、会社が合併したり、はたまた倒産したり……会社の形がダイナミックに変わります。常に自己資本利益率(ROE)、すなわち、経営の効率性を上げるまたは維持する努力を経営者がしているんです。

ROE(自己資本利益率)
Return On Equity、会社が自己資本をどれだけ有効に活用して利益を上げているか(経営の効率性)を示す指標。

ROEが上がらない事業はさっさと売却するし、ROEが上がるなら買収する。ROEは日本では「8%」が一つの合格ラインとされていますが、米国では15%というのは当たり前なんです。それを前提に経営者が選ばれています。株主の期待に応え、企業価値を最大化するエージェント。それが米国の経営者です。

――その経営者を養成するためのエリート教育も用意されているんですか?

学歴そのものは本質ではないけれど、学歴主義は人を動機づけるシステムではあります。ROEを上げる、または高い水準のROEを維持する人が経営者として選ばれる仕組みがあって、そうした経営者を育てる教育が用意され、優秀な若者がそれを目指すように動機づけられている。つまり、ある意味では企業価値が上がることが社会システムとして組み入れられているのが米国ですね。

もっと言えば、先進国は出生率が下がって人口が減少傾向になるものですが、移民を受け入れることで米国企業は豊富な労働力とマーケットを手に入れています。米国は何でも持っていると言いましたが、持っているものを最大限に生かす仕組みが社会にビルトインされているのです。

一方で、株価としては高くなりがちです。それは投資家はみんな米国を信じているから。米国で割安株を探そうと思っても、そう簡単ではありません。地道に調査するしかないと思っています。

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ブランド力の欧州

――ほかの地域にはあまり興味がないですか?

いやいや! そんなことないですよ。もちろん米国企業は強くて、バラエティに富んでいます。巨大IT企業や航空機など、日本にない産業がたくさんある。けれども、例えば欧州には米国があまり持っていない産業があります。世界的なブランド品産業です。

LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)は革製品のルイ・ヴィトンや腕時計のウブロなど世界的なブランドをいくつも持ち、時価総額はトヨタ自動車と同じくらい。巨大ブランド企業です。それから英国のアストン・マーティン、イタリアのフェラーリ。ブランド力を持つ企業がたくさんあるのは欧州の特徴です。こういうところはうちのメンバーではオシャレ番長の八尾が強いので、よく調べてきていますね!

東南アジアなどの新興国では、富裕層がたくさん生まれています。経済の成長期には起業家がたくさん現れ、成功する経営者も湧いて出てきます。そうした人々が求めるものはブランド品です。ブランド品のマーケットは拡大していくと考えています。

欧州は試練に立っています。欧州の盟主ともいえるドイツが、米中貿易戦争のあおりを思いきり受けている。中国への自動車輸出はさらに悪くなると思います。英国のEU離脱も控えている。警戒しています。一方で、有力なブランド企業の株価が割安になれば、我々のような長期投資家にとってはチャンスだと考えます。

分かりやすいようにブランドの話をしたけれど、欧州にはブランド以外にもたくさん魅力的な企業があります。世界にはこんな企業があったのかと驚く毎日です。

レオスが大きくなったことで得たもの

――アジアに関しては、中国は米中貿易戦争の只中でもあり、なかなか投資しづらいと思います。一方で東南アジアはどう見ていますか?

東南アジアも米欧にない市場環境があります。やはり人口ボーナスは大きいですよ。混乱期とはいえ、所得水準もそれなりには上昇しています。不動産やゼネコン、外食など人口ボーナスの恩恵を受ける企業の業績は伸び続けると思います。

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フィリピンの取材先でレオス社長の藤野英人(右)と

すでに私は東南アジア諸国連合(ASEAN)地域のいくつかの大手企業を取材しました。財閥企業などの中に有望な投資先があります。レオス・キャピタルワークスは運用資産総額が8000億円を超え(運用助言含む)、海外でも経営トップに取材できるようになってきています。ある財閥企業の取材ではトップと1時間くらい話せました。面白い情報がたくさん集まっています。

――工業国になるとか、人口ボーナスの次の段階の成長余地は東南アジアにあるのでしょうか?

東南アジアが日本のように技術力をつけ、付加価値の高い工業製品を輸出し、外需主導で成長するかというと、まだその確信は抱けません。米中貿易戦争の漁夫の利的な追い風もあり、ベトナムには製造業の生産拠点が増えていますが、まだまだのような気がします。付加価値の高い産業が国内で育つかどうか、注視したいと思っています。

――後編では、前編の話を踏まえて、どんな企業に投資したいのか、どんなファンドにしたいのか語ってもらおうと思います。

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世界にあふれるビックリ!をみつけにいこう
ひふみワールド、誕生

このたびレオス・キャピタルワークスは、日本を除く世界の株式を投資対象としたアクティブ運用の公募型投資信託「ひふみワールド」を新規設定いたします!(9/26募集開始・10/8運用開始)
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「ひふみワールド」新規設定記念トークイベント
9/25(水)19:00-20:30 東京会場中継配信中継配信

世界株投資信託「ひふみワールド」セミナー

9/13(金)19:00-20:30 東京会場
9/18(水)14:00-15:30 東京会場
9/21(土)10:30-12:00 福岡会場
9/21(土)15:30-17:00 仙台会場
9/24(火)18:30-20:00 福岡会場
9/26(木)14:00-15:30 東京会場
9/26(木)18:30-20:00 仙台会場
9/26(木)19:00-20:30 東京会場
9/27(金)18:30-20:00 名古屋会場
9/27(金)18:30-20:00 札幌会場
9/28(土)10:00-11:30 札幌会場
9/28(土)10:00-11:30 名古屋会場
9/28(土)14:00-15:30 東京会場
9/28(土)18:30-20:00 大阪会場
9/29(日)10:00-11:30 大阪会場
9/29(日)14:00-15:30 東京会場

◎当コメントは個人の見解であり、個別銘柄の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。また、当社運用ファンドへの組入れ等をお約束するものではありません。


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