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マンガでわかる「投資信託」のはじまり

このマンガは、意外と知らないあるモノの始まりや起源について紹介するシリーズです。
身近なものや今では当たり前に存在するものでも、歴史を遡ってみれば誰かが発見したり、発明したものだとわかります。そうした人々の創意工夫や、実現させるまでの困難な出来事を知ることは、もしかすると未来を創造するヒントにつながるかもしれません。
投資信託の会社で働くキャラクターと一緒に、いろんなモノの「はじまり」を探しに行きましょう!
 
登場人物

第4話 投資信託のはじまり

もっと知りたい!投資信託ができた時代背景

世界で初めての投資信託は、1868年にイギリスで創設されたと言われています。

日本ではちょうど明治維新が起こった年ですが、この頃のイギリスは世界に先駆けて産業革命を達成し、世界的な覇権を確立して「パクス・ブリタニカ」と呼ばれる栄光の時代を過ごしていました。
推計によると1870年の一人当たりGDPは、世界平均が約1,500ドルなのに対しイギリスは約5,800ドルと世界一を誇ります。

文献を基にレオス・キャピタルワークスが作成

また、GDPでは中国やインドが人口比からイギリスを上回っていたものの、「大英帝国」としてこれらの国々に植民地支配を及ぼしていたイギリスは名実ともにこの当時の世界で経済的にも圧倒的な覇権を築いていたと言えます。

こうした中でイギリス国内では活発に投資が行われ、工場や鉄道をはじめとしたインフラなど様々な形で資本の蓄積が進みますが、結果としてイギリス国内の金利は低下していきます。
一方、革命によって国民国家の成立が相次いだヨーロッパ大陸諸国や、南北戦争を経験したアメリカでは戦乱からの復興や建国のための資金需要が強く、高金利が続いていました。

この金利差から、イギリスの投資家は海外に投資先を求め、海外への投資が盛んになっていきました。
しかし、まだ海外への移動は船、通信面でも大西洋を横断する海底ケーブルが1866年に敷設されたばかりの頃です。海外の情報を得る手段は乏しく、海外の投資対象について正確に調査をするのは難しい時代でした。
その結果、特に中小の投資家を中心に海外への投資によって大きな損害を被る例が相次ぐこととなります。

このような状況を解消するため、投資家が資金を出しあって海外の事情に詳しい人に運用を任せるという仕組みが生まれました。それが「フォーリン・アンド・コロニアル・ガバメント・トラスト(The Foreign and Colonial Government Trust)」という、世界初の投資信託です。この投資信託は、当初は主に植民地政府証券を組み入れ、その後米国の鉄道株を追加していきました。1880 年から 1913 年にかけての年率平均リターンは5.3%で、これは当時の英国のコンソル公債のリターン2.2%を大きく上回っていました。(コンソル公債:償還されない代わりに永久に一定額の利子が支払われ続ける公債)

「フォーリン・アンド・コロニアル・ガバメント・トラスト」の、当時の設立方針には「多くの種類の証券に分散投資を行い、中流階級の投資家にも大資本家と同様な利益を享受せしめることにある」と書いてあったそうで、小口の投資家が資金を出しあいプロフェッショナルに運用を任せて、分散投資によってリスクを抑えながらその成果を分け合うという、投資信託の基本的な考え方はこの時から変わっていないようです。

ちなみにこの「フォーリン・アンド・コロニアル・ガバメント・トラスト」は、今なお、実に150年以上にわたって存続しています。

(テキストの参考文献)
University of Groningen: Maddison Project Database 2020
経済法令研究会『銀行業務検定試験 受験対策シリーズ 投資信託3級』
Columbia Threadneedle Investments「F&C INVESTMENT TRUST」:https://www.fandc.com/fund-updates/

Explorations in Economic History : Volume 52, April 2014 「The first global emerging markets investor: Foreign & Colonial Investment Trust 1880–1913」

音声付きの動画はこちらでご覧いただけます。

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