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じっくり読みたい人類史から全巻一気読みしたいマンガまで/巣ごもり読書におススメの一冊(後編)

ゴールデンウイークならぬ、「STAY HOME 週間」がやってきました。この巣ごもりの期間を、ゆっくり読書して過ごすのも手でしょう。

レオス・キャピタルワークスのアナリストら運用部メンバーの13人に、おススメの本を聞いてみました。3回に分けてお届けする最終回です。今回は、大きな視点で人類について振り返る書物からSFマンガまで、硬軟取り混ぜて幅広く紹介します(一部敬称略)。聞き手は、マーケティング・広報部の大酒です。

人類の長い歴史が教えてくれる、パンデミックの行き先

運用部長の渡邉庄太は、1万3000年にわたる人類史を描いたピュリツァー賞受賞作『銃・病原菌・鉄』を挙げました。

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『銃・病原菌・鉄』
ジャレド・ダイヤモンド著
(草思社)

長い人類の歴史の中で、勝者と敗者を分けた究極の理由は何なのか、世界のイニシアチブを握るような文明と滅んだ文明とを分けたものは何なのか。このシンプルな問いに答えようとする本です。

もしくは塩野七生さんのシリーズもいいですね。内容はいずれも人類の長い歴史ですが、こんなときこそ歴史を振り返って、人々の行動を冷静にみつめることが大切だと思います。

世界が新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われている現在、注目されるのはスペインのフランシスコ・ピサロによるインカ帝国征服と、エルナン・コルテスによるアステカ帝国の征服でしょう。これは、本書の考察全体を象徴する重要な出来事として、表紙の絵にもなっています。いとも簡単に征服できた間接的な理由として病原菌の存在が挙げられていて興味深いです。

加えて、コルテスは征服後、アステカ帝国で貨幣として流通していたカカオ豆を初めて西洋に紹介し、バンホーテンやキャドバリー、ハーシーなどが工夫を凝らし、チョコレートという一大産業を築き上げてゆく様(そしてカカオ生産者がなかなか豊かになれない現状)が『チョコレートの真実』(キャロル・オフ著、英治出版)に描かれています。コロナショックの中でも新たな商機が生まれる現在と重なって、好奇心をそそられます。

気鋭の歴史学者による話題作

経済調査室長の三宅一弘は読書家の間で話題となっている気鋭の歴史学者による書を挙げました。今年1月に発売になった本です。

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『荒れ野の六十年~東アジア世界の歴史地政学』
與那覇潤著
(勉誠出版)

巣ごもりで読もうと思って購入しました。著者とはある研究会でご一緒しましたが、『中国化する日本』を著すなど気鋭の歴史学者でした。病気で勤務先の大学を退職されたと聞いていたのですが、執筆活動を再開とのことで同書を購入しました。正直、難しい内容で、どの程度まで理解できるかわかりませんが、読み進めたいと思います。

日中韓の歴史認識を論じた論文集。なぜかくもこの3つの国はすれ違うのか、各国の認識の形成過程に迫る労作です。

與那覇潤はうつ病を患い、2018年に執筆活動を再開しました。與那覇に会った人は、その多弁さと、きらめくような言葉に惚れこむと言います。

能力は個人の中にあると思われがちだが、本当は他者との共同関係がうまく作用している状態を『能力が高い』と呼んでいる」
知性とは『捉えなおすこと』。特定の視点に立つと見落とすものはある。見落としていることを知りつつも、一貫した視点を持つことは大切だというのが、僕の著作に共通するモチーフ」

知人との雑談で與那覇のこんな言葉を又聞きし、共感しました。

企業、政府のあり方をとらえ直す

企業というプライベートセクターと政府というパブリックセクターについて改めて考える本を紹介するのはシニア・アナリスト栗岡大介と、アナリストの小野頌太郎です。

小野は「資本主義の限界を訴える人がいれば政府の無力さを指摘する人もいます。一方、これらの役割についてはその境界線が曖昧になっているようにも感じられます」と話します。企業と政府の違いについて理解を深めるために、これらの行動を規定する倫理の側面から解明していく本を紹介してくれました。

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『市場の倫理 統治の倫理』
ジェイン・ジェイコブス著
(ちくま学芸文庫)

本書では、人が何かを欲する時それを手に入れる方法には二つあるとし、それを取引(Trade)と取得(Take)に分け、この二つの"T"を起点に企業と統治機構の行動様式の違い、企業内と家庭内の個人のあり方の違いなどを論じています。

なぜ統治者は商売を卑しい行為と見做すのか。なぜ商売人は誠実であり勤勉であることが求められるのか。なぜ国営企業は腐敗し民間企業は不正を働くのか。あらゆる時代・国・組織に対して統一基準を持って解明してくれるため、難なく理解を深めることができました。何よりも、なぜ人はお金を汚いもの、お金を稼ぐことを卑しいことと考えるかの一つの答えが得られ事は、非常に感銘を受けました。

著者が演じる複数の登場人物が様々な立場から倫理について整理していくため、バランスよく議論が展開されています。また人類の歴史を旅する物語のようで楽しみながら読み進めることができます。ゆったりしながら知的好奇心を満たすのにぴったりな本だと思います。

一方で栗岡は、政府の役割は、政府そのものがデジタルトランスフォーメーション(DX)によって大きく変わる可能性を指摘します。

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『NEXT GENERATION GOVERNMENT
次世代ガバメント 小さくて大きい政府のつくり方』
若林恵著
(日本経済出版)

これまでは公共は国(政府)が作ってきました。しかし、テクノロジーの進化と個人の多様化により、これまでの「公共」の意味が変わるかもしれません。今後は公共の一部はプライベート・セクター(企業)が創り、テクノロジーにより個別に最適化されるかもしれません。コロナと共に生きる時代、僕たち私たちの未来の「公共」を考えてみませんか?

こんな時だからこそ、マンガの世界に没頭しよう

最後に、マンガを挙げたのは運用本部長の湯浅光裕と、シニア・アナリストの高橋亮です。

高橋がセレクトしたのは、なんと少女マンガの名作!

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『ぼくの地球を守って』(文庫版)
日渡早紀作
(白泉社)

『花とゆめ』という少女マンガ誌に連載されていた漫画ですが、万人に読まれるべきSF漫画です。高校の頃、単行本が待ちきれないがために、この漫画のためだけに『花とゆめ』を買っていたほどでした。

前世の自分の記憶と現在の自分との間を行きかい、悩み翻弄される登場人物に感情移入し、ページをめくる手が止まらなくなります。せっかく時間もあるので全巻一気読みはいかがでしょうか。


最後、湯浅は「まだ読んでいないけど、この連休に読みます」と紹介してくれました(笑)。投資家としては、大ヒットしている作品はしっかり押さえておきたいところですね。

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『鬼滅の刃』
吾峠呼世晴作
(集英社)

どうやらものすごく流行っているようですが、読めていない漫画です。うちの息子が夢中になっています。

大正時代、家族を鬼に皆殺しにされた炭売りの少年の話。鬼に変貌した妹を元に戻すため、そして敵を討つため、妹とともに旅立ちます。

現在の最新巻は19巻。一気読みしてしまいそうですね。

「STAY HOME 週間」、読書をして過ごそうとお考えの方の参考になればと、13人のおススメ本を紹介してきました。気になる本があったら、ぜひ手に取ってみてください。

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当社では月次の運用レポート「ひふみのあゆみ」を毎月ホームページにアップしています。他社にない特徴の一つは、運用部メンバーが共通のトピックについてコメントするコーナーがあること。どんな人がどんな考えでお客様のお金を運用しているのか、少しでもご理解いただきたいと考えているからです。GWに向けた運用部コメント“番外編”として、おススメの本を聞き、3回にわたってnoteにて紹介しました。

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