対話することで未来をつくりたい。上場企業と投資家の良い関係とは(前編)
「私たちの上場ストーリー」は、上場にまつわる様々なエピソードを通してレオスのことを知っていただくとともに、株式市場の魅力や面白さをお伝えしたいと発信しているシリーズです。
今回は「投資家としてのレオス」をテーマに、上場企業の調査をする株式戦略部のメンバーにインタビューしました。
日本にはおよそ4,000社の上場企業があります。海外に目を向けると、さらに多くの上場企業が存在します。投資家は数ある企業の中から将来性を見極めて資金を投じ、リターンを得ることを目指しています。
レオスは投資家としてどのような調査活動をしているのか、上場企業や株式市場にどんな想いをもって接しているのか、ぜひご覧ください。
妹尾 昌直(セノオ マサナオ):運用本部 副本部長 兼 株式戦略部長
2021年1月入社。株式戦略部にて企業調査を担当し、国内株・海外株ともに知見が深い。レオスの運用チーム内では最も「感情のボラティリティが低い」とか。
企業文化からみえるもの
――妹尾さんが普段どのような調査活動をしているか教えてください。
妹尾:私がみている企業は国内外およそ半々、若干国内企業が多いかなというくらいです。
投資のアイディアは、街を歩いたりしながら「これってなんだろう」とか、新製品が出たら「なんか面白そうだ」とか、そういうところが考えるきかっけになったりします。
例えばですが、最近の話だとVRやARの技術が「なんか面白そうだ」と思い、そこからどんなビジネスをしていくんだろうと想像を広げます。ニュースを見て、「痩せ薬が流行っている」と分かれば、どこの会社がつくっているんだろうと調べてみたりします。そういう意味では、雑誌や新聞、お店で販売されているもの、街中の様子など、あらゆるものが企業調査をするうえで取っ掛かりになりますので、なるべく広くアンテナを張っておきたいと考えています。
そこから実際に企業にアポイントをとって取材させてもらい、その企業の強みや価値について探っていきます。
――企業の方とは、どんなお話をするんですか?
妹尾:私の場合は、「投資家が見落としている企業の強みや評価しきれていない点は何だと思いますか」「なぜ投資家はそれらの点を見落としている、または評価しきれていないと思いますか」という質問を投げかけることが多いです。すると会社によっては、投資家が評価していない企業の強みは「想定外に起きた事に対する適応力だ」と説明してくださったりします。「会社の企業文化」と答えてくださる企業もあります。もちろん「新製品の製品価値」という回答をする企業もあります。じゃあその「企業の適応力や文化」や「製品価値」って何だろうと、考えます。例えば具体的にその適応力が発揮された事例を教えてもらったりもします。
――なんだか、業績を考えるうえでは関係なさそうですが…
妹尾:でも、そういうソフトな部分が結果的に数字に出てきたりするケースもあります。
例えば何かトラブルが起きたときに、会社がそれに気づくのに1~2日かかり、修復するのに人を探してチームをつくって3~4日かかりましたという会社と、そうならないように事前の予測をしておこうという会社もある。トラブルが起きてからではなく「起きそうだ」ということで事前にケアしておこうと準備をする会社です。
上記2社では、結果的にその期に売上がたつのか、またはトラブルシューティングに時間がかかり売上が翌期にずれこんでしまったのか、結果だけみると売上高の数字に反映されたものに過ぎないですが、背景は会社の文化や柔軟な対応力に起因している場合もあります。
前者の場合だと、トラブル対応にコストと時間がかかって、売上を伸ばすために使うはずだった時間を浪費してしまいます。費用もかかるし売上も落ちる、ということで数字に出てくる可能性があります。
こうして考えると、「企業文化や柔軟性」みたいなものは何かしらの形で業績に表れてくるのではないかと考えております。
業績は「起きたこと」の結果ですが、その業績がどのように作られたのかという過程は業績には表れません。その点は、実際に企業の担当者と話し、生の声を聞くことでしか得られない情報もあると思っています。
調査の最初はデスクリサーチから始めることが多いですが、その調査の中で印象が良くない会社であっても、実際に取材して話を聞いてみると業績に対する原因とその結果、そして今後を考える上での前提条件などをしっかり伝えてくれる企業もあります。逆に業績は素晴らしいけど、話を聞くと業績が出た背景説明が曖昧だったりする企業もあります。そのように企業から説明を聞くことを通して、企業に対する解像度を上げようと、様々な質問をしながら試みています。
企業のリアルは、コミュニケーションに表れる?
――企業取材をしていて、「これは成長しそうだな」「投資したいな」と五感で感じることはありますか?
妹尾:経営者やIR担当者の、姿勢や対応力は重要だと思っています。自分の会社をどう成長させたいか、または世の中にどんな付加価値を提供したいのかを投資家のような外部の人に対して説明できることが大事だと思っています。
妹尾:五感という程のものではないですし、投資判断をする際の一つの要素程度ではありますが、経営者やIR担当者に当事者意識があるのかどうかは気になります。
投資家は、自分の所属する会社のことですら100%理解しているとは言い難い中で、どんなに企業取材や調査を行っても、完全に取材対象の企業や業界を理解することはできません。その中で、経営者やIR担当者が話すことの蓋然性が高いのかどうかを常に考えています。業績についての話もそうですし、彼らに当事者意識がどこまであるのかという点も重要です。仮に経営者でなくても、IR担当者がオーナーシップをもっているかどうかという点は、投資家にとって、その企業を信じてよいのかどうかという最後の後押しの一つになると考えています。
――企業調査をしていて、どんなところが楽しいですか?
妹尾:運用会社の企業調査は、最終的には株価が上がる企業を見つけることが重要になります。そして自分の判断が「市場」という場において、常に答え合わせをされている状態ですので、楽しいだけではないことも事実です。
とはいえ、企業調査の楽しい点も数多くあります。一つは世の中で起きていること、起きそうなことに受け身ではなく主体的にかかわっていける点です。
例えばニュースに対して「ああそうなんだ」と終わるのではなく、「これってどういうことだろう」と自分から関わっていくことで、それが投資のアイディアにつながったりします。様々な業界の企業と接することで、浅いかもしれませんが、広く世の中を見渡すことができる点も面白さの一つです。様々な情報をかき集めて、世の中の付加価値がどう動いていくのか等を、まるでパズルのピースをうめていきながら考えを纏めていくところにも面白さがあると思います。
――企業調査の現場で、妹尾さんがコミュニケーションを大切にしている様子が伝わってきました。
次回はレオスが創業間もない頃から続けている、社内での「IPOミニセレモニー」についてお話します!ぜひご覧ください。
※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。