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【舞台裏レポート②】反撃の狼煙。諦めない藤井叡王と挑戦者・菅井八段の秘めた闘志

こんにちは。ひふみラボ編集部です。

レオス(ひふみ)が特別協賛をつとめる将棋の八大タイトルの一つ「第8期叡王(えいおう)戦」の五番勝負が始まりました。
段位別予選と本戦トーナメントを勝ち抜いた棋士が挑戦権を獲得。藤井聡太叡王と挑戦者・菅井竜也八段が、叡王をかけて五番勝負を行ない、先に3勝した棋士が「叡王」の称号を獲得します。

先日公開した第1局のレポートへの反響が想像以上で、ひふみラボnoteの記事の中でも多くの方にスキをいただいた記事となりました。ありがとうございます!

さて、藤井叡王の先勝で迎えた第2局は、藤井叡王の地元・愛知県(名古屋市)にて4月23日(日)に行なわれました。
今回は、溺愛する娘と一緒に将棋を勉強中という営業部の佐藤が、当日の舞台裏をレポートします!

菅井八段のさりげない心配り

私は第2局の対局のみの参加でしたが、前日に行われた検分と関係者食事会に参加したコミュニケーション・センター部の水野(レオス将棋部・大の将棋ファン)から様子をききました。

食事会の前には主催・協賛各社挨拶のほか、両対局者が意気込みを話します。

藤井叡王は、勝利したものの第1局で早くに時間を消費したことが課題だったと振り返り、第2局は工夫して挑むとお話しされました。

菅井八段は、「僕が頑張らないと叡王戦が盛り上がりません」とユーモアも交えて意気込みを語ったそうですが、その心のうちで燃やす闘志を、私は翌日の対局で見ることになります。

検分の様子

前日は、そんな闘志とは裏腹に菅井八段の優しさが垣間見えるシーンが。

それは見届け人との写真撮影でのシーン。
叡王戦見届け人制度については前回の記事で詳しくお伝えしていますが、抽選で選ばれた将棋ファンの方が対局に関わる流れすべてを間近で文字通り「見届ける」ことができるという制度です。
ここでもお二人の間に入り記念撮影をしたのですが、その後菅井八段が藤井叡王と見届け人お二人での記念撮影をお勧めになったそうです。

将棋ファンにとっては両人と一緒に写真が撮れることはとても幸せなことだと思いますが、見届け人の方が藤井叡王のファンだったのでしょうか。希望されたわけではないのに一歩引いて人気者の藤井叡王とのツーショット撮影の機会を作られた配慮ある行動にみえたとその場にいた水野は言います。
どのような場面でもさりげない心配りをなさる菅井八段のお人柄の素晴らしさが垣間見えました。

無音の空間、そして……

対局当日、9時からの対局の初手立会のため、私たちは8時45分頃に対局場へ向かいましたが、すでに菅井八段は着席していました。
微動だにせず、盤を見つめ対局に向けて精神を集中しているようでした。一切音を立ててはいけないと思うくらい、その背中からは気迫を感じました。第1局は藤井叡王に迫りながらも菅井八段にとって悔いの残る結果となり、第2局は絶対に負けられないという想いがあったのでしょう。

その気迫に「激戦が期待できるのでは!?」と期待に胸を膨らませていると、藤井叡王も対局場に到着しました。
藤井叡王はタイトル戦に慣れているからか、比較的落ち着いた様子に見えましたが、ヒリヒリとした空気を同じ空間で感じることが出来ました。
これまでテレビで将棋を観戦することはありましたが、お互いが初手を指すまでの静寂の中にある緊張感は現場に足を運ばないと体感できません。

両者強固な「穴熊囲い」

初手を見届けたあと、私たちは対局場を退出し、関係者控室で勝負の行方を見届けていました。
序盤は静かに進み、どちらが先に仕掛けるのかと見守っていると、まずは菅井八段が相手からの“王手”がかかりにくく最も守備力の高い囲いとされている 「穴熊囲い」に入りました。対する藤井叡王も王将を自陣の左隅に移動させてタイトル戦でははじめてとなる「穴熊囲い」にします。

穴熊戦法とは、王将を隅に置き、その周囲を多くの駒で囲う戦法で、居飛車・振り飛車問わずに用いられる戦法です。その様子が、熊が穴に潜る姿を連想させることから名付けられたといいます。見た目からして守備力の高さを物語っています。

両者「玉」が一番隅に配置されている。
(出典:日本将棋連盟ホームページ内「叡王戦中継サイト」)

叡王戦での戦いは、AIがお互いの指した手を基に勝率を表示してくれ、どちらに風向きがあるのかを可視化してくれているのですが、この時点での勝率は両者ほぼ互角でした。

堅い守りである穴熊囲いをお互いが取っていることからも、対局が長引くことが予想されましたが拮抗した状態がいつ動くのか、関係者控室にいる私たちも息をのみながら観戦していました。

ここだけの話満載の関係者解説

途中、当日の大盤解説をご担当される糸谷哲郎八段(解説者)と中澤沙耶女流二段(聞き手)による関係者向け特別解説がありました。これまでの対局盤面を解説いただきつつ、将棋の歴史にも触れることが出来る素敵な時間でした。

「最高の居飛車vs最高の振り飛車」とも称される今回の叡王戦ですが、
「最近は、振り飛車使いの棋士が少なくなっています。振り飛車使いの棋士は居飛車使いの方との戦いに慣れていますが、居飛車使いは居飛車同士の戦いが多くなり、当たり前ですが振り飛車との戦いに慣れていないことが多いです。序盤の戦いでは振り飛車使いの菅井八段が有利ではないか」といった声もありました。

藤井叡王の姉弟子である中澤沙耶女流二段からは藤井叡王の居飛車へのこだわりを感じられるこんなお話をうかがいました。

「ある将棋イベントで、師匠の杉本昌隆八段が『振り飛車でやってみたら?』とすすめたところ、絶対にやらないと断固拒否したんです(笑)」
公式対局ではない場でも居飛車で突き通す芯の強さが、藤井叡王の強さに繋がっているのかもしれませんね。

どのお話も、将棋初心者の私にはとても面白く興味深いものばかりでした。

ちなみに私たちが解説を聞いているその頃、対局するお二人にはこんな場面も。
藤井叡王が持ち時間中に席を離れた際に、すぐ手元に置かれた不二家さんのお菓子を2個連続でつまむ菅井八段。盤面解説を聞きながらでしたが、真剣な取り組みの中でもお菓子を頬張る姿に和んでしまいました。
ちなみに、糸谷八段によると「相手がいるとやはり食べづらいですからね(笑)」と、真剣な中にも人間味を感じる解説もありました(笑)

大盤解説

昼食があけ、私たちは当社のキャンペーンで大盤解説の観覧にご当選された方々のお出迎えのために大盤解説会場へ向かいました。
大盤解説は13時から受付開始でしたが、受付開始前から会場前に長蛇の列が出来ていました。ご来場の方々の期待感がうかがえます。

将棋連盟の方によると、約200名の方がご来場されており、なんと1000名近い応募があったそうです。
ご観覧者は男性の割合が多いのかと思っていましたが、女性の方も大変多く、男女の割合はほぼ半数だったように思います。AIの普及によって対局がわかりやすく、見やすくなったことや、藤井聡太叡王のようなスター棋士の登場でファン層も広がっているのかもしれません。

ちなみに、当社のキャンペーン(大盤解説観覧券)も完全抽選でしたが、ご当選者の半数以上が女性でした。受付では、「ありがとうございます!」「大変楽しみにしていました!」といったお言葉を直接聞くことができ、将棋を通じて新しい方々との出会いをいただけたことを実感しました。こうした喜びのお声を聞けることも、特別協賛冥利に尽きます。

攻防続く盤面に一喜一憂

お昼を挟んだ後も、対局は互いに穴熊囲いのまま一進一退の攻防が続きます。

関係者控室では「(同一局面が何度か訪れることで指しなおしとなる)千日手の引き分けもあり得るのではないか……?」といった話しもちらほら出始めましたが、藤井叡王は徐々に長考が続き、いつの間にか菅井八段がやや優勢な展開になりました。
AIの評価値ではほぼ五分五分でしたが、検討をされている先生方も「やや菅井八段が優位」とおっしゃっており、午前中とは違った展開で目が離せません。

将棋初心者である私にはまだ盤面からどちらに優勢なのか読み解くことはできませんでしたが、リアルタイムで勝率が更新されるAIの評価も徐々に差が広がり、いつの間にか勝利の確率は藤井叡王が約40%、菅井八段が約60%に。
AIは最善手だけを選んだ場合で数値を算出しているので、必ずしも人間が指した場合にその通りにならないようですが、こういった可視化がなされているのは、初心者にも盤面のおおよその情勢が伝わるので大変ありがたいですね。

さらに関係者控室では、中継を見ながら日本将棋連盟 会長の佐藤康光九段と、藤井叡王の師匠である杉本昌隆八段が手元の将棋盤で実際に駒を動かし、先の展開を喧々諤々(けんけんがくがく)と検討されていました。

対局の行く末を検討する3人(左から当社代表の藤野、杉本八段、佐藤九段)

AIの評価=棋士の想いではない

対局は藤井叡王が第1局同様に持ち時間の4時間すべてを先に使い切り、1分将棋が続きましたが、115手で投了、菅井八段の勝利となりました。

思い返してみると、90手頃から菅井八段が駒を盤面に指した際のカチッという音が徐々に力強くなってきたことが印象的でした。この時点で、勝利に近づいてきた実感が菅井八段の中であったのかもしれません。

一方の藤井叡王は、対局後のインタビューで「中盤、序盤は自分の得意な展開ではなかった」と振り返りました。

それでも、対局は18時近くまで行なわれました。AIは劣勢と評価をしていましたが、藤井叡王の心中では違ったのではないでしょうか。

AIがどのように評価していても、実際に戦う二人は目の前の対局に最後まで全力を尽くします。「負けるわけにはいかない」という棋士の想いとここに至るまでの努力の日々が、私たちに感動を届けてくれるのだと思います。

今回はじめて対局を近くで見ることができ、少しではありますがお二人のお人柄にも触れることができたのはとても面白いと思いました。

藤井叡王は、テレビでも拝見するお姿とあまり印象に違いはなく、落ち着いていて柔らかな空気をまとった方だと感じました。(もちろん、対局前の集中しているお姿は凛とされています!)

菅井八段は、筋トレにも取り組んでいらっしゃるそうで、そのお姿からもストイックさを感じました。対局前に盤を見つめて集中している時の姿からは、対戦にかける想い、将棋にすべてをかけている熱意が伝わってきました。当たり前ですが、「第一線で戦うプロなんだ」と思わず身震いしました。

さあ、これで勝敗は互いに一勝一敗となりました。

藤井叡王、菅井八段、互角の戦いが続くお二人に今後も目が離せません。

番外編 オリジナルお湯呑完成!

第1局目のレポートでもお伝えした「ひふみオリジナル叡王戦お湯呑み」が完成いたしました!

私たちが叡王戦を熱く応援する想いを形にしたお湯呑みですが、第1局目は制作の都合上、お湯呑みに歴代の叡王戦の戦歴をプリントしたのみでしたが、完成ver.ではその文字を掘り込み、より立体的な仕上がりになりました。

藤井叡王、菅井八段からも直筆のサインも頂戴し、お湯呑みに掘り起こしています。
当初は関係者用としておりましたが、多くの反響をいただいたので機会があれば、ぜひみなさまにもお届けできればと思っております。ぜひご期待ください!


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