【イベントレポート】若者支援NPO今井紀明さん・藤野英人「投資と寄付の関係って?」
こんにちは。「ひふみラボ」編集部の坂崎です。
6/11(火)、若者支援のNPO・D×P(ディーピー)代表の今井紀明さんをお迎えしてトークイベント「投資×寄付 意思をもったお金の使いかた」を開催しました。当日は約60名にご参加いただき、参加者全員で現代社会が抱える社会課題について考えるよい機会となりました。
こちらでもイベントレポートをお届けします。
通信・定時制高校に通う子たちの現実
D×Pのビジョンは、「ひとりひとりの若者が自分の未来に希望が持てる社会」をつくることです。主に、不登校、高校中退、経済的な困窮など、様々な生きづらさを持つ10代の若者たちをサポートされています。
まず、今井さんからの活動内容のご紹介です。具体的に通信制高校・定時制高校へ通う高校生へのサポート活動の内容について詳しくご説明いただきました。
通信制高校の卒業生の約4割、定時制高校の卒業生の約3割が、進学も就職もしないまま卒業しているそうです。そんな彼らに必要なのは「社会関係資本(人とのつながり)」と「成功体験(「できた!」と思える経験)」。
(D×Pウェブサイトより)
この2つのサポートは、D×Pでは通信・定時制高校で単位認定される「授業」として独自のプログラム「クレッシェンド」を提供しています。多様なオトナとの関わりを通じて高校生が人とのつながりをつくることを目的とした授業です。現在は、大阪府内の定時制高校の3分の1にプログラムを届けているそうです。
この授業は社会人・大学生ボランティア「コンポーザー」(=オトナ)と高校生との関わりと対話を軸に進んでいきます。
通信・定時制高校に通う子たちの実情と支援の必要性に納得したところで、今井さんから参加者にいくつかの問いが投げかけられました。
例えば、「学生さんたちに対して、あなたならどうサポートしますか?」。参加者の皆さんは隣の人と話し合いながら、「自分ごと」にしていきます。
今井さん:
「大切なのは、個々の子どもと関わる時に絶対に否定をしないこと。自己肯定感が低くなりがちで、大人のことを信頼できない子どもたちがたくさんいます。まずは、広い心で受け止めてくれる人がいるというだけで救われるんです」
「儲からないけど、やらなきゃいけないこと」
後半は、レオスの代表、藤野英人も参加してのトークセッションです。
藤野との縁は、D×Pも参加した「日経ソーシャルビジネスコンテスト」。藤野は審査員をしていて、今井さんの突破力、熱量の高さに圧倒されたようです。藤野いわく、「出会ってすぐ、この人は常人じゃないと思った。もちろん、いい意味ですよ(笑)」。
「どうして日本には寄付文化が根付かないのか」という話は、藤野もよくセミナーでお伝えしていることでした。
藤野:
「以前、あるお坊さんから聞いたお話で、大きな気付きがあったんです。それは“一如(oneness)”という言葉です。一如とは、宇宙のすべての大もとは一緒という原則です。人間は社会的な動物であり、周囲の存在と切っても切れない関係にあります。
ところが、日本人は欧米に比べて宗教が弱いので、この一如の意識が希薄化してしまっているのではないか、と。日本人が投資や寄付をあまりやりたがらないのも、自分と社会との一体感がなく、自分の財布は自分のものだと考えているからではないでしょうか。
自分も他人もすべて一緒であり、何事も世の中のためになると思えば投資も寄付も快くできるはずです。それは私が投資の世界で伝えていきたいことでもあるんです」
一方で、今井さんは若い世代は寄付へのハードルが下がってきているといいます。そこにはクラウドファンディングなどが浸透してきていることが影響しているとのこと。
また、会場からの質問では、「社会の課題解決に重点を置く企業が出てきている昨今、NPOの役割とは」というものがありました。今井さんは「NPOの役割が変わってきている」と話します。
今井さん:
「NPOは“セーフティネット”の役割だと思っています。市場化できる部分については僕たちはやりません。国や企業の手の届かない部分がまだまだあるので、そこを支援するのがNPOです」
藤野自身は国際NGO・国境なき医師団のフィランソロピック・アドバイザーを務めてもいますが、「儲からないけど、やらなきゃいけないことがある」と寄付の意義に同意していました。
寄付について考えた、参加者のみなさまの感想
あっという間の90分でしたが、自分と社会とのつながりを認識するための充実した時間となりました。
参加者のみなさまからアンケートでいただいた感想の一部をご紹介します。
「否定せずに関わる」という今井さんの言葉が印象に残りました。今まで否定されることが多く自己肯定感が低くなりがちだからこそ、まずは受け入れて話を聞く事が大事なんだなと思いました。藤野さんの「儲からないけどやらなきゃいけないことがある」という言葉も印象的でした。自分以外と連結している感覚、社会とのつながりを意識していきたいと思いました。(40代・女性)
今井さんの話では大人のことを信頼できない子供がたくさんいるというお話が非常に響きました。金融関係の企業に勤めていますが、社会とのつながりとお金の関係に個人的にも課題を感じています。自身の課題感と同じ話を聞くことができました。(30代・男性)
NPOの役割が変わってきていて、セーフティネットを作っていくことが重要であるという今井さんの考えに共感しました。「社会との一体感」という藤野さんのお話も印象に残りました。(20代・男性)
通信・定時制高校について、今まで考えたことがなかったのですが、考えるきっかけをいただきました。高校生の就職事情、ハローワークが学校の斡旋で応募が一人一社しか受けられないことが多いということなどもはじめて知ることができました。(30代・女性)
NPOは社会問題解決ではなく、セーフティネットの構築。市場化するところはやらない、という今井さんのお話が印象的でした。貧困の格差が広がっているけれど、実際は見えにくいので。(50代・女性)
お金と社会とのつながりを深く考える人を増やしてほしい。アクティブ投資のファンを作るのもそこが大切だと思うので「ひふみ=儲かる」だけではない投資家を育ててほしい、そのきっかけになる機会をどんどん作ってください。(60代・女性)
ブログ、noteでも感想を書いていただいています。
Shunichi Shimoyamaさん セルフ・リライアンスという生き方
Takashi Kiyoharaさんのnote
ご参加いただきまして、ありがとうございました!
投資家は「お金」というエネルギーを企業に送り出すことで社会とつながっていますが、こうして寄付とセットで考えることで、その本質も見えてきやすいような気がします。参加者の方の感想コメントにもありましたが、これからもこのような機会をつくっていけたらと思いました。
レオス・キャピタルワークスでは、お金や投資を楽しく学べるような、さまざまなセミナー・イベントを開催しています。
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