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【舞台裏レポート③】人が営む対局。叡王戦第3局

こんにちは。ひふみラボ編集部です。

レオス(ひふみ)が特別協賛をつとめる将棋の八大タイトルの一つ「第6期叡王(えいおう)戦」の五番勝負。
全棋士による段位別予選と本戦を勝ち抜いた藤井聡太王位・棋聖が、豊島将之叡王に挑戦する五番勝負を行ない、先に3勝した棋士が「叡王」の称号を獲得します。
1勝1敗で迎えた第3局の裏側をレポートするのは社長室の関です。

第1局、第2局のレポートはこちら↓

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豊島叡王と藤井二冠は、それぞれ1勝1敗で第6期叡王戦第3局を迎えました。対局場所は、名古屋の料亭「か茂免」です。

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「か茂免」は、名古屋市東区白壁にあり、名古屋の近代化の遺産が多く残る「文化のみち」一帯のなかにあります。道路を挟んだ向かいには、トヨタグループ創始者の旧豊田佐助邸などがあります。
豊島叡王は愛知県一宮市、藤井二冠は愛知県瀬戸市のご出身ですので、二人とも馴染みのある地元での開催も話題となりました。

緊張感の伝わる前日

対局前日に行なわれるのが、対局検分です。対局検分では、使用する駒や盤を確認したり、光の当たり具合や部屋の温度に不都合がないかを確認したりします。
幸運にも私は間近で同席することができ、3局の立会人である久保利明九段の左隣から様子を見守っていました。

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対局で使用する駒の確認のために二人の棋士が交互に駒を並べるのですが、沈黙のなかで「パチッ」という駒を指す音だけが響き、得も言われぬ緊張感が漂っていました。
今回の検分では、2種類用意された駒のどちらを使うのかを決めたのち、飲み物を置く場所などを確認した程度で終わりましたが、棋士によってはこだわりをお持ちの方もいるようです。
将棋連盟の石橋部長によると、棋士は対局の間ずっと盤上を見続けるため、駒の書体がポイントになることもあるのだとか。また、時には「部屋の明るさを変えてほしい」という要望が出ることもあり、その場合は照明を足すこともあるそうです。今回は天井に照明が増設されており、盤上が良く見えるようになっていました。

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あの加藤一二三九段は、「勝つためなら滝も止める」というご本人の言葉にあるように、対局中に気が散らないよう会場の中庭を流れる滝を止めさせたことがあるとか!

検分ののちは広間に戻ってインタビューとなり、豊島叡王、藤井二冠が翌日の対局に向けた抱負を語られました。
共に愛知県出身ということで、それぞれが地元開催への思いを口にされました。。また、豊島叡王からは、「内容的には苦しい将棋になっている」という言葉があり、第2局で勝利しているものの、気が引き締まった様子がひしひしと伝わってきました。
インタビュー後は記念写真の撮影となり、立会人の久保九段も加わる形で私たちも含めて撮っていただきました。

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背筋が伸びる対局開始

当日は朝から料亭「か茂免」に伺いました。町名にふさわしい白壁の間にある入り口の手前では、叡王戦開催を知る将棋ファンの方々が、対局に向かう棋士を一目見ようと入待ちする姿も。

控室では、対局部屋の中継を行なうととともに、将棋連盟の中継ブログの準備なども行なわれています。

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8時40分頃になると、控室を出て初手立ち合いのために対局室に向かいます。
ありがたいことに、前日に続いて立会人となる機会をいただき、対局開始を目の前で見ることができました。
先に藤井二冠が着席し、続いて豊島叡王が入室します。豊島叡王は懐中時計を右手前に置く際に、鎖を丁寧にまとめていました。

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定刻になったことが告げられると、一礼して対局開始です。
ここで驚いたのが、先手の藤井二冠がおもむろにお茶を手に取ったことです。
初手でどう指すかは既に決まっているはずですが、一息ついてから初手2六歩と指して対局が進んでいきました。相居飛車での始まりを見届けて、私たちは対局部屋を退席します。

この対局はインターネットテレビ「ABEMA」で生中継されるほか、取材のカメラなどが複数入っており、見守る私の視界にはどうしてもカメラが飛び込んできます。気にしないようにしても意識せざるを得ず、久々に正座をしてかしこまったこともあって、私は対局部屋を出ると思わず「緊張したー」と口にしてしまいました。

対局以外も楽しめる控室

控室では、中継された対局の様子を見ることはもちろん、棋士の方たちが形勢を見ながら時々コメントする様子を見ることができます。レオスが運営するYouTubeチャンネル「お金のまなびば!」で藤野と対談していただいた日本将棋連盟会長の佐藤康文九段もおられ、棋士の着物の着付けに関するエピソードや、AI対戦のエピソードを伺いました。

佐藤九段にご出演いただいた対談はこちら↓

控室では、対局者がどんなおやつや昼食を食べているのかも目にすることができます。将棋ファンの中には棋士の方のおやつや食事に注目される方も多いですよね。
控室には対局者が食べるものと同じものが一つずつ用意され、写真を撮ることができました。(※撮影後は、将棋連盟関係者の方が召し上がっていました。)

こちらは午前のおやつ。豊島叡王の瀬戸内大長レモンケーキと、藤井二冠のプレミアムショートケーキです。スポンサーである不二家さんのお皿が可愛いですね。

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そしてこちらは昼食です。
豊島叡王は一色産鰻のコーチン玉子とじ丼、藤井二冠は会場となった料亭か茂免名物「ぽんきし」(きしめんのすっぽんスープ仕立て)です。季節の食材、地元の食材がふんだんに使われ、どちらも本当に美味しそうでした! 居合わせた棋士の方曰く、料亭での対局は食事が特に美味しく、楽しみなのだそうです。

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将棋は頭を使うから糖分が必要なのでしょう。おやつタイムは2回あります。午後のおやつは藤井二冠が瀬戸内大長レモンケーキで、豊島叡王はプレミアムチョコ生ケーキです。

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決着

今回の叡王戦では3局連続となる角換わりで展開していきました。
序盤はスピーディーに進行し、控室では「かなり早く終わってしまうのでは」という声もありました。
先に時間を消費したのは藤井二冠で、午前中には豊島叡王より1時間半以上持ち時間を減らす局面がありました。
しかし、昼食を挟んだのちは豊島叡王の消費時間も少しずつ増えていきます。中盤には、私からは攻められているように見える局面で、見切ったように攻めの手を指す藤井二冠が印象的でした。気がつくと豊島叡王の消費時間のほうが増え、徐々に藤井二冠の優勢がはっきりしていくなか、午後5時39分に121手で藤井二冠の勝ちとなりました。
【投了図】

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(出典:日本将棋連盟ホームページ内「叡王戦中継サイト」)

叡王戦第3局を終えて

将棋にAIが取り入れられてからかなりの年数が経過し、AIが弾き出す形勢判断や候補手を参考にしながら対局を観戦することも当然のことになりました。
私も、控室では生中継しているABEMAの画面を見ながら過ごしていました。
しかし、今回現地で対局に立ち会って改めて感じたことは、「人の関わりの重要性」です。
前日の対局検分と当日の対局開始前の空間には、対局者を囲んで張りつめた空気が漂っていました。淡々と行なわれる対局のなかでも、藤井二冠が席を外したのを見届けるとすぐに豊島叡王が一手を指し、藤井二冠の持ち時間を消費させるシーンがありました。人と人が立ち向かうからこそ生まれるドラマがあり、駆け引きがあります。
そして、その裏には関わる多くの人がいます。私がいた会場の「か茂免」だけでも、会場や食事を準備するか茂免の方々をはじめ、立ち会う棋士の方々、対局を中継する技術の方や、写真を撮ったり記事として伝えたりする方、解説をする方などがいます。

第3局では、「か茂免」から3kmほど離れた場所にある名古屋観光ホテルも大盤解説場となり、そちらを盛り上げている方々もいました。もちろん、解説の先には全国の多くのファンがいます。

コロナ禍で外出が難しくなっていますが、そんなときだからこそ、関わる多くの人の存在があって人の営みが成り立っていることを忘れないようにしたいと思います。