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【イベントレポート】崔真淑さん経済勉強会 令和はどうなる?経済ニュースを読み解こう

こんにちは。
「ひふみラボ」編集部の坂崎です。

6/18(火)、「平成時代を振り返り 令和時代を読み解く」経済勉強会を開催しました。今回はゲストに、テレビや雑誌の経済ニュース解説で活躍されている気鋭のマクロエコノミスト、崔 真淑(さい ますみ)さんをお招きしました。

崔さん初の著書、『30年分の経済ニュースが1時間で学べる』(大和書房)が今年4月に発売となりましたが、本の内容から「令和の日本」を 読み解くためのキーワードとしていくつかピックアップして、図解を交えながらわかりやすく解説いただくという趣旨です。

レオスの経済調査室長の三宅一弘がインタビュアーとなり鋭く話を引き出し、後半は、代表の藤野英人も交えたトークセッションも行ないました。

平成の30年を振り返り、令和の日本を展望するよい機会となったと思います。

こちらでもイベントレポートをお届けします。

金融ショックとイノベーション

実は、レオスの三宅と崔さんとは、大和証券SMBC金融証券研究所で先輩・後輩として在籍していたことがあるいうご縁。「先輩が話し手で、後輩が聞き手」というのが普通かもしれませんが、今回はあえて、崔さんに三宅がインタビューをしていく、という形式をとりました。

大先輩を前に、崔さんも最初は少し緊張気味…?

平成30年間というのは、「デジタル」と「グローバリゼーション」により経済が大きく動いていたため、経済の仕組みを学ぶのには貴重な示唆が多い時代だったとのこと。今回は、本の中から次の7つの質問を三宅がピックアップ。崔さんがわかりやすく解説してくださりました。

・世界金融危機はどうやってはじまった?
・中国はどのようにして経済発展してきたのか
・バブルがはじけて消費はどう変わった?
・企業不祥事のたびに聞くコンプライアンスってなに?
・人口減少でどんな日本が待っているのか?
・国の経済力を上回る企業が誕生したのはなぜ?
・産業をのみ込む巨大IT企業にどう向き合うか?

「ネットで検索しても出てこないような、私の仮説を軸にたくさんお話をしたいと思います」と場を大いに盛り上げてくださった崔さん。いろんな「仮説」が飛び出しましたが、中でも冒頭から会場の熱を上げていたのが、「金融危機とイノベーションの関係」です。

崔さん:
「リーマンショックが終わったあたりから、『ビッグデータ』という言葉をよく聞くようになりました。また、2008年グーグルが無人運転車両を開発しているというニュースをメディアが取り上げたことがきっかけで、3回目の『人工知能=AI』ブームが起きましたね。ここで皆さんにお伝えしたい仮説は、金融ショックとテクノロジーの革命に関係があるのかどうか。私は関係あるんじゃないか、と考えているんです。

当時、投資銀行や証券会社ではアルゴリズムを使った理数系に強い優秀な運用者たちが、バッサリ解雇されていました。では彼らの再就職先はどこか?雇用統計などから見て推測できるんですが、グーグルやアマゾンなど、いわゆる『GAFA』を代表するようなテクノロジー企業に移ったのではないかと考えられるんです。

ですから私は、金融危機はイノベーションの母になりうる、と考えています」

金融ショックというネガティブな現象の裏で、次世代の新しいテクノロジーが誕生するというポジティブな変化もある――この「創造的破壊」という崔さんの仮説に、三宅も「危機とイノベーションは表裏一体という考え方はその通りだと思う」と同意していました。

中国はまだまだ成長する?

また、平成30年間で顕著に見られた大きな経済の動きは、何と言っても中国の台頭です。これには「一党独裁資本主義」という中国の体制が影響したと話す崔さん。崔さんは大学院でコーポレートファイナンスの研究を専門にされていますが、「創業家オーナー会社や大株主がいる企業、すなわちある種の独裁的な経営者や株主がいる企業の方が、世界的に見ても ROE、ROAが高い傾向がある」とのこと。

「中国は一党独裁という状態で意思決定のコストが小さかったからこそ、いろんな仕組みが急速に整ったのではないか」というのが崔さんの仮説です。

一方で、一人っ子政策による人口動態の変化が今後の中国成長にブレーキをかけるのでは、という意見もあります。ところが「やっぱり中国ってすごいと思うんです」と崔さん。

崔さん:
「大学院で多くの学術論文に触れていますが、経済学の最高峰の学術雑誌でも、中国人の学者が本当に増えています。というか、中国人ばっかり。お互いの論文を引用しあっているなど、チームワークで研究を進めています。アカデミアの現場では、いろんな知識が蓄積されている。先行きは明るいという見方もできるのではないかと思います」

三宅:
「リーマンショックが起きた2008年というのは、ちょうど北京五輪があった年。北京五輪までは中国は安い労働力で栄えたのですが、そのあとは指導部が成長モデルの転換をどんどん促しています。特にここ5年ほどは、起業、イノベーションを推進しているので、次のイノベーションの芽は育っていると私も思いますね」

米中貿易摩擦の問題は長引く?

後半は藤野も入っての、トークセッション&質疑応答でした。

平成2年からこの業界に入った藤野としては、平成の30年間は職業人生のほとんどすべて。崔さんから「平成の30年をファンドマネジャーとして生き抜いてこられた理由はなんだと思いますか?」との質問に対して、藤野は日光東照宮の陽明門にある「逆さ柱」の話を引用して答えました。

藤野:
「惨敗しない、これに尽きます。この業界では、たった一度の大失敗が命取りになってしまう。そうならないようにするには、“完全を目指さないこと”が大事です。ある時ダントツで成功していても、それが完成しきっていると、予想だにしない価値観の転換が起きた時に大負けしてしまうんです。日光東照宮の陽明門には、一本だけ猿の顔のような「グリ紋」の彫刻が逆さまになっている柱があります。あえて一つだけずらしているのは「満つれば欠ける(完全なものは滅びる)」という考え方から来ているそうです。さすが、家康ですよね。僕もこれに倣って、自分の運用の中身はあえて少しの矛盾をはらんだ状態にしておくようにしていました。5%くらいは自分の価値観とは違うものを入れているイメージです」

これには会場の皆様も深く頷いていらっしゃいました。これからの令和も、変化の大きい時代になるでしょう。投資でもキャリアでも「あえてゆらぎを持たせて完全を目指さない」というスタイルは、大事になってくるかもしれません。

最後に会場からの質問コーナーです。「米中貿易戦争の行方についてはどう考えていらっしゃいますか」という質問がありました。

崔さん:
「米国がファーウェイを締め出しましょうとなった時に、一帯一路で投資されている南米は米国の方針に賛同しなかったですし、ファイブ・アイズ同盟の一員である英国も、米国の見解とは一部異なる意見表明をしたと報じられました。さらにグーグルがファーウェイ製品にAndroid OSを提供しません、と表明したら、ファーウェイは自分のところでOSを作る、と言っているんですね。どのデジタルツールを使うか、というところで世界が二分されていくのではないか、という妄想をしているところですね」

三宅:
「はい、中国は情報のところを一番拒絶しているわけですね。中国は『ソ連がなぜ崩壊したか』というのを熱心に研究しています。最後のきっかけになったのは、ゴルバチョフのペレストロイカのグラスノスチ(情報公開)の失敗でした。これで一気におかしくなったものですから、習近平政権はこの教訓を生かして、反グラスノスチ、すなわちネット規制、監視社会化を意識するだろうと考えられます」

藤野:
「実は経済問題というよりは、中国の共産体制に対する攻撃だということですね。そうなるとかなり長引くと考えています。しかし必ずこの問題の裏で漁夫の利を得る人々もいるはずです。ということで、僕たちはASEAN出張で諸国の動きを実際に見てこようと思っています」

「このニュースの背景は何か?」「それがどんな経済メリット・デメリットを起こすのか」という視点で情報を捉えると、将来に活かすための知識に変換されていく。90分という短い時間ではありましたが、自分なりのニュースを読み解いていく楽しさが伝わったのではないかと思います。

終了後のサイン会も、大盛況となりました!

参加者の皆様の感想

参加者の皆様からアンケートでいただいた感想の一部をご紹介します。

崔さんの「サブプライムショックを受けて労働力がテクノロジー産業に移った」という話を聞いて、ネガティブな出来事の裏で必ずプラス面になることもある、冷静に見ることが必要だと思いました。(30代・女性)
三宅さんの米中貿易戦争のお話は、ニュースでは聞けない内容で新発見がありました。完璧ではなく、あえて不完全を取り入れる藤野さんの考えにとても感銘を受けています。すべてが勉強になりました。(20代・男性)
これからも時代・経済環境の変化の厳しい中、不易流行というか変えなくてもよいことは何かを考えさせてくれるような本質的な姿勢を知ることができるような企画を期待します。(40代・男性)
藤野さんの「米中貿易戦争の核心は社会主義(共産党)の体制変革にある」という考えを聴き、長期戦に備える姿勢にあらためようと思いました。(40代・男性)
金融危機はイノベーションのキッカケになるという崔さんのお話から、私の会社もAIの進化で過渡期を迎えているので、危機を変革のチャンスと捉えようと意識が変わりました。トピックや構成がとても興味深く、お話もとてもわかりやすくてためになりました。経済知識はもちろんですが、ものの考え方、知識や事象の捉え方についても学びになりました。(50代・女性)

ご参加いただきまして、ありがとうございました!

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