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投資家は少し先の未来を考え、投資する

「私たちの上場ストーリー」は、上場にまつわる様々なエピソードを通してレオスのことを知っていただくとともに、株式市場の魅力や面白さをお伝えしたいと発信しているシリーズです。

今回は「投資家としてのレオス」をテーマに、外部の専門家として一緒に仕事をしてくださるマーケティングのプロ、上野 美香さんにお話をうかがいました。

上野さんは上場企業に限らず、ベンチャー企業でのキャリアも豊富です。企業が誕生してから成長していく過程で資金調達には様々なフェーズがありますが、その長い道のりにおいて上場する意味を考えてみたいと思います。
投資家としてのレオスが周りの人からどのように見えているのか、少し俯瞰するイメージでお伝えできればと思います。(聞き手:レオス・キャピタルワークス株式会社マーケティング部/長尾)


上野 美香さん
マーケティング / ブランディング / プロダクトマネジメント
ネット・ IT関連ベンチャーで、事業立ち上げ期や新プロダクトの市場展開をマーケティング・広報・プロダクトマネジメント面から支援する。認知拡大、市場開拓、ブランド醸成に強みを持つ。
2017年からエンハンス社にて、同社のゲームタイトルの日本およびアジア市場でのリリースマネジメントやマーケティング、広報を統括したのち、新サービス立ち上げのためプロダクトマネジメントを担当。2011年から 2016年まで、 Evernote日本法人でマーケティングディレクターとして、日本オフィスと事業の立ち上げ、マーケティングと広報の統括、ユーザーコミュニティの醸成を通して日本市場での事業拡大に貢献する。2009年から 2011年まで、 Twitter(現・X)の日本でのマーケティングを担当し、日本における利用者数と認知の飛躍的な向上に寄与。
新規サービスや事業の立ち上げに必要な業務を幅広く臨機応変にカバーする。その他、音楽家 坂本龍一氏のネット配信プロジェクト「skmtSocial project」のウェブプロモーションや、TEDxTokyo、スタートアップ向けイベントSlush Asiaのメディアチームに参加。

ベンチャー企業の資金調達

――上野さんは以前、ITベンチャーへの投資をしている会社に勤めていたそうですが、ベンチャー企業の資金調達はどのように行われるのでしょうか?

上野さん:未上場企業の場合、資金調達をしようとすると限られた投資家に向けてアプローチしていくことになります。「自分たちはこういうビジネスをやっています」「こういうプロダクトがあって、強みはこれで、自分たちにしかできないものです」「このプロダクトがお客様にとってはこういう課題解決になり、市場も急成長しています」とビジネスの計画や成長性を示すことで、「資金を出してください」と投資家に説明するんです。上場企業のように、株式市場で多くの投資家から資金を集める方法とは少し違います。

私が勤めていたのは、インターネットやソフトウェアビジネスの分野で起業した、シードかアーリーステージのベンチャー企業に投資をするベンチャーキャピタルでした。当時はインターネットビジネスがはじまって「これからインターネットで世の中が変わるかもしれない」という頃で、日本のインターネットビジネスに投資をしてリターンを得ることを目的にしていました。
この会社はベンチャーキャピタルでしたが自社の資金だけではなく、アメリカの投資家などからも出資してもらいました。投資家にもいろんなパターンがあって、それぞれターゲットとしている投資先のステージがあるんです。

【ベンチャー企業の成長ステージ】
シード:商業的事業がまだ完全に立ち上がっておらず、研究を継続している企業
アーリー:製品開発及び初期のマーケティング、製造及び販売活動を始めようとしている、あるいは始めた企業
ミドル:生産及び出荷を始めており、その在庫または販売量が増加しつつある企業
レイター:一定の量産化などを経て安定的に収益を上げており、IPO直前の企業

経済産業省「METI Startup Policies~経済産業省スタートアップ支援策一覧~」
https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/meti_startup_policies.html

――それぞれのステージで必要な資金調達をしながら、事業を成長させていくのですね。

上野さん:私が勤めていたベンチャーキャピタルは、直接投資をするだけではなく投資先企業と密に連絡を取りながら、様々なサポートをしました。一緒に次の資金調達に行ったり、別の投資家を紹介したり、ビジネスプランや資本政策を作ったりといった仕事です。

ビジネスプランから見えた経済の循環

上野さん:それまではシステムエンジニアとして働いていました。社会人になって初めての転職先がベンチャーキャピタルだったので、当時は「資金調達」も「ビジネスプラン」という言葉すらも知らなかったんです! 今から考えると、よくそんな大胆な選択をしたなと思います。若さもあったかな(笑)

社内イベントに参加してくださった上野さん

上野さん:ベンチャー企業の社長にとっては、資金を集めるのも大事な仕事なんです。社長は「この1か月でどのくらいのお金が出ていって、どのくらいの売上があるか」といったことを把握しているので、創業間もない時期には特に、あと何か月で資金がショートするかという極めて重要な状況も把握しなければいけません。給与や取引先への支払いが止まると、たちまち会社がつぶれてしまいます。

小規模な会社の場合は、社長と同じ部屋で社員が働いている状況も珍しくないでしょう。目の前で働いている社員は、会社の給与で生計を立てています。家族を養っている社員だっているかもしれません。万が一会社が倒産したら、社員たちの生活はどうなるのでしょうか。そのプレッシャーを感じながら、起業家は自分が信じるプロダクトを作って世に出し、会社を運営します。それって、とてつもないパワーを必要としますよね。

私は先輩社員と一緒に3~4社くらいのベンチャー企業を担当して、ビジネスプランの作成に取り組んだりしていました。
その時わかったのは、

ビジネスプランって経済を表す縮図のようなものなんだ

ということです。会社がお金を集め、労働力をつかってモノやサービスをつくり、社会に価値を提供することで利益を得て、その利益から給料を払ったり次の事業に投資したり…そうやって循環しているのが経済とよばれるものですよね。サラリーマンだった私にとっては毎月お給料が振り込まれるのが当たり前でしたから、そのお金がどこから来たのかといった想像力は持っていなかったんです。

――お給料がどこから来るのか、なんとなく会社で働いているだけでは見えてこないかもしれないですね。

上場することは、資金調達の一つのフェーズ

上野さん:ベンチャー企業が成長していく過程で、株式市場に上場して資金調達を行なう(IPO)という選択肢もあります。未上場企業の資金調達と共通する部分は、投資家に対して「上場することで得た資金をどう使うのか、どうやって成長するのか」を説明する責任があるということです。
上場する場合は資金調達をする場所が株式市場という「公の場」になりますので、投資家の範囲が変わってきます。誰でも、いつでも株を買えるのは公平性が高く、その分ルールも厳正になるというわけです。

――その後はIRの仕事を担当されたそうですが。

上野さん:次の会社に転職した時、その会社はすでに上場の数か月前という状況でした。エクイティストーリーのプレゼンテーション資料を先輩と一緒に作ったりしましたよ。
上場後は決算説明会など、IRの仕事を通してアナリストやファンドマネージャーに会う立場になりました。かつてベンチャー企業の資金調達にかかわる仕事をしていたので、対投資家の仕事という意味では経験が活きたところもありました。

――その頃にレオスを知ったのですね。

上野さん:上場した直後の機関投資家向けミーティングだったと思いますが、そこで湯浅さんにお会いしました。

いつも明るく朗らかな副社長の湯浅

上野さん:当時レオスさんは麹町にオフィスがありましたね。そちらを訪問すると執務室に赤い絨毯が引いてあって、「上場おめでとうございます」といってくす玉を割って社員の皆さんがお祝いしてくれました。「これからスタートですね」と声をかけてくださったのを覚えています。

私はそれで、「あ、上場してからがスタートなんだ」と気が付きました。マーケット(株式市場)に出て、IR担当者としてこれからレオスさんのような投資家と対話していくんだと実感するような体験だったと思います。その後は本当に多くの投資家に会いましたが、レオスの皆さんや湯浅さんの明るい印象は、とても心に残っています。

投資家は少し先の未来を見る


上野さん
:IR担当者として投資家と話していると、

「あなたの会社は何を目指しているんですか」

と企業のビジョンや理念など深い部分を聞いてくるファンドマネージャーがいます。それは決算資料などからは読み取りにくい部分ですから、「企業をよく知ろうと聞いてくれているんだ」ということが分かって背筋が伸びる思いがしました。
そういう投資家は「今この時点の企業価値」を買いたいわけではなく、「未来の成長可能性」に投資をしたいんだと思います。「今こういう事実がありますよね。そのうえで、成長することを信じているし、信じたい。その確信を持たせてください」という対話をする場が、企業と投資家とのミーティングなのではと思います。

今ココじゃなくて、少し先の成長や可能性に投資をする。

足元を確認しつつ、将来の見通し・展望を考え、未来にどのくらいのお金が生まれるか、利益が出るかといったところを確度高く考えていくのが投資家の仕事なのではと思うようになりました。私にとって、印象に残っているアナリストやファンドマネージャーは未来のことを話す比率の方が高かったです。

――ベンチャー企業でのご経験を経て、上場企業のIRも担当された上野さん。お話を聞いて、企業が生まれてからどうやって成長していくのかをイメージすることができました。これまでは「上場」という一つのステージにスポットを当てて考えてきましたが、株式市場デビューする以前にも様々なステージがあると知ることで、「上場がゴールではない」という意味がわかってきました。そして、いろんなステージを経て企業が成長していく様子を、投資家として見守ることも大切なのではと思いました。

このシリーズを通して、上場するとはどういうことなのか様々な角度から見てきましたが、いかがだったでしょうか。上場企業で働いている人、サービスを利用する人、投資家、起業して資金調達をしたい人、いろんな人が集まって株式市場は成り立っています。皆さんもどこかでその一員になっているかもしれない、そう思って上場企業や株式市場により興味をもっていただけると嬉しいです。

※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。

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