【叡王戦レポート】将棋を愛する人たちにレオス社員が勇気をもらった1日
レオスが特別協賛を務める第9期叡王戦五番勝負が4/7(日)にはじまりました。
藤井聡太叡王に対し挑戦者となったのは同学年の伊藤匠七段、竜王戦、棋王戦に続く藤井八冠への挑戦となります。
両対局者の将棋への純粋な想い
対局前日の夜は関係者での食事会が行なわれ、そこでは藤井叡王、伊藤七段による挨拶の場も設けられています。お二人とも21歳とは思えない堂々としたお話しぶりでしたが、特に印象に残ったのはお二人の将棋にかける想いの強さと純粋さでした。
藤井八冠の誕生でますます将棋界も盛り上がるなか、両対局者への世間の注目も一層集まるでしょうし、もし俗っぽい自分だったら恥ずかしながら賞金のことなどが頭に浮かんでしまいそうなものです。
(ちなみに、藤井叡王の2023年の獲得賞金・対局料は推定1億8,000万円以上だそうです……!(『2023年獲得賞金・対局料ベスト10』日本将棋連盟より))
しかし、お二人の話から私が感じたのは将棋が好きで極めたい、目の前の相手に勝ちたいという純粋な気持ちでした。前夜祭には藤井叡王の師匠である杉本昌隆八段もいらしており藤井叡王に関するエピソードを語られましたが、昔、藤井叡王が将棋に負けて泣いているところを何度も見たそうです。そんなエピソードを聞くに、藤井叡王は将棋で勝ちたいという純粋な気持ちを、ずっと持ち続けているのではないでしょうか。
叡王戦から話題が逸れますが、当社の藤野も事業を成長させる要素のひとつとして、自分たちの事業について涙ぐみながら語るような情熱をもった経営者の存在を挙げることがあります。そのように情熱をもってひとつのことに真っすぐ打ち込むような人たちの存在こそが、将棋でもビジネスでも、新しい時代を拓いていくのかもしれません。
さて、そんな両対局者の熱い想いを感じた前夜祭も終わり、翌日、肝心の対局を迎えます。その熱戦の様子をレオスらしい視点も交えながら熱くレポート、といきたいところですが、将棋は子どものころに父親と指したきりの全くの素人の私には荷が重いようです。
将棋の内容は、ファンの方々やそれこそ本職の棋士の方々がいくつもの素晴らしい記事や動画を用意されると思いますのでそちらに譲るとして、ここでは「AIと将棋」「叡王戦を裏で支える人たち」の二つのトピックで叡王戦の裏側をレポートしていきたいと思います。
間もなくくる“AIネイティブ”の時代の棋士の価値とは?
棋士が研究のためにAIを利用するのはもちろん、中継画面でもAIによる評価値や最前手が表示され、AIはもはや将棋とは切っても切れない関係となっています。第8期からは叡王戦の協賛に、世界的半導体メーカーの日本法人である日本AMD(※)も名前を連ねることとなり、そのことを一層感じました。
前夜祭や対局中の控室では協賛者を含む関係者とともに棋士の方々もいらっしゃりお話をする機会に恵まれるのですが、そんな中でも自然と将棋界におけるAIの話題に話が向きます。そんな話の中ではっとさせられたのは「藤井叡王ですら“AIネイティブ” ではない。これからAIがあって当たり前の世界で育ってきた棋士が出てくる」ということでした。
ソフトによる研究が進み序盤はハイスピードで進行するようになったということですが、今後それがもっと加速したり、あるいはもっと根本的なことが変わったりする時代がくるのかもしれません。
そんな話を聞いたうえで対局を見て素人ながら私が感じたのは、棋士という存在の大きさです。
AIであれば最善、あるいは正解の手を、人間より早く正確に導けるのでしょう。しかし、驚きや感動で多くの人の心を動かすことが出来るのは生身の棋士です。長考の末に指した意外な一手からくる驚きや、評価のうえでは劣勢になりながらも諦めず勝ちを目指す対局者の姿に見る感動は、決してAIには作り出すことのできないものではないでしょうか。
資産運用の世界においてもAIの活用が進んでいますし、人間の判断を介さないインデックス運用こそが資産運用の“正解”だという声が根強くあります。たしかに、“間違い”が少ないのはそれらの方法なのかもしれません。
しかし、純粋に企業調査や運用が好きというメンバーが運用しているからこそ、「ひふみ」が届けることのできる驚きやワクワクがあると、将棋盤と40枚の駒だけで多くの人の心を動かす藤井叡王、伊藤七段の姿から勇気をもらったように思います。
叡王戦を裏で支える人たち
また、このレポートでどうしても書きたかったのが、叡王戦を裏で支える人たちの存在です。
それを感じたのは、先手後手を決める振り駒の予行演習(叡王戦では協賛社の代表により振り駒が行なわれるため、流れの確認がされました)のときのことでした。流れの説明をする日本将棋連盟の職員の方が「よく振った方が視聴者の方も喜びますから」と何気なく言ったのです。私の隣で様子を見ていた副社長の湯浅は「誰のためにやっているか分かっているんだね」と思わずこぼしました。湯浅は普段の仕事の中でも“お客様の視点”をとても大切にしているので、感じるところがあったのでしょう。
また、大盤解説会の会場でも400人近い来場者の方の受付や案内をスムーズにこなされ、かつ希望のお連れ様には並びの席を用意したり、受付時のトラブルにも丁寧に対応されたりしていたのも印象に残りました。私たちレオスでもお客様をお招きするイベントを複数開催しているので想像ができますが、それだけの人数をお招きして半日がかりのイベントをスムーズに進行するは、決して簡単なことではありません。
このように、叡王戦を将棋ファンの方々に楽しんでいただきたいという想いを込めて運営されていることが、様々な場面や、何よりも大盤解説会にいらしている将棋ファンの方々の楽しそうな様子から伺えました。
叡王戦の盛り上がりは、純粋に将棋に打ち込む棋士、将棋を愛するファン、日本将棋連盟の皆さまをはじめ最高の舞台を整えてくださる関係者の皆さま、すべての繋がりがあってこそだと感じます。
ぜひ、このレポートを読んでいただいた方には、そんな“叡王戦の裏側”にも思いを馳せていただければ幸いです。
第9期叡王戦五番勝負は藤井叡王の勝利でスタートしました。中盤まではどう転ぶか分からない熱戦でしたが、それに対して藤井叡王がインタビューで「終盤はかなり難しいところが多く、その点では充実感のある将棋が指せたかと思っています」と話されていたことも、将棋への純粋な想いを感じさせました。
五番勝負の行方はもちろん、将棋を愛する人たちが生む盛り上がりにも注目しながら今後の対局を見守っていきたいと思います。
(※)個別銘柄を推奨するものではありません。