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私たちは、もっと「お金」の話がしたい―ファンドマネージャーはお金とどう向き合うか―

2024年2月に出版した書籍『投資家と考える10歳からのお金の話』を題材に、前回はお金の持つポジティブな可能性を知り、お金との付き合い方を学ぶ意義について書きました。

普段の生活で目にするお金の額は、人によって様々だと思います。私は子どもの頃、数百円のお小遣いを持って本屋さんに行くのが嬉しかった記憶があります。社会人になると目にするお金の金額がかわってきます。働いていると、会社や事業で扱う金額が数百万、数千万円になることも珍しくありません。
レオスでは多くのお客様から1兆円以上のお金を預かり、資産運用しています。ひとつの投資信託で数百億から数千億円という金額になり、途方もない大きさだと感じます。

この大きなお金とどう向き合っているのか、今回はファンドマネージャーの藤野と渡邉、営業管理本部 副本部長の堅田に話を聞いてみました。
(聞き手:レオス・キャピタルワークス株式会社マーケティング部/長尾)


ファンドマネージャーは、数千億円のお金とどう向き合っているのか

―お客様から大切なお金を預かり、そのお金を企業に投資をしてリターンを得るのがファンドマネージャーの仕事です。企業に投資するのは、成長を期待してお金を託しているということになると思いますが、「企業にお金を託す」ことに関してどんなことを考えていますか。

レオス・キャピタルワークス株式会社 代表取締役社長 CIOの藤野

藤野:私はファンドマネージャーの仕事をしている時に、ふたつの矛盾した考えを持っています。

ひとつは、私たちを信じてお金を預けてくださった一人ひとりのお客様のことを考えようということです。一人ひとりのお金が集まって、レオス全体では1兆円という規模の預かり資産残高になっています。だから、一人ひとりのお客様に対する大きな責任を感じています。
もうひとつはそれとは真逆で、お金に対して少し突き放したような、ドライな感覚を持っています。それはなぜかというと、「1兆円のお金を運用するのは大変だ」とか「どきどきする」といったプレッシャーに負けて、合理的な判断ができなかったらまずいからです。扱う金額が大きくても、投資そのものを客観的なものと捉えています。

このふたつは矛盾していますが、同時に考えることが大切です。お客様からお金を「託されている」ことの責任を感じつつ、「投資を実行すること」に対しては責任を感じすぎずドライに行動する。
同業者を見ていると、どっちかに偏りすぎている場合が多いと感じます。責任とか重さを感じすぎてなかなか大胆に行動できない人がいるし、逆にその重さをあまり感じないでテクニカルに扱う人もいて。両方同時に考えるからこそ、慎重かつ大胆な判断ができるように思っています。

―堅田さんは営業部に異動になる前、ひふみの運用チーム(株式戦略部)でアナリストをしていました。投資をするための企業調査をする仕事ですね。

営業管理本部 副本部長の堅田
学生時代からアルバイトとしてレオスで仕事をしていた。

堅田:アナリスト時代の出来事で、思い出に残っていることがあるんです。当時私は、確実に成長していくような企業を選んで運用チームに提案していました。いわゆる大企業といいますか、堅実に伸びていくことが予想できるような会社です。
その時、ファンドマネージャーで社長でもある藤野から、「来期、この会社が20%伸びることはわかってる。でもそういう短い目線じゃなくて、時間がかかっても10倍成長しそうな企業はないの?」という趣旨のことを言われたんです。その言葉の裏側には、「その大企業の役員や社長は本当に信じられるのか、根拠があって言ってるのか」という問いがあったのではないかと。実際私は、企業を調査したといっても役員や社長に会って話を聞いたわけではありませんでした。
 
当時のことを振り返ると、私にはまだ「お客様のお金を預かって運用している」という自覚が足りなかったんだと思います。藤野の話を聞いて、目先の無難な選択をすることが自分の役割ではないと気が付きました。会社の規模が小さくても社長に会いに行って、10年後に株価が10倍になるような会社を探すこと。これから世の中を変えるような、ワクワクする可能性を持つ企業にお金を託す。そういう目線をアナリストとして持つことが、ひふみの運用チームとしてすごく重要なことなんだろうと分かりました。それがひいてはお客様の期待に応えることになる、そう気付いた出来事でした。

お金を託してくれるお客様が、目の前にいる

渡邉:私はレオスに入社した後、2008年にひふみ投信の運用が始まってから、ひときわお客様との距離が近くなったと感じています。それまでは前職含めて、いわゆる「プロ投資家」向けの仕事をしていましたから。プロ投資家は金融機関だったり、大口で資金運用をしているような先です。少し乱暴な言い方をすれば、そういう人たちに向けては数字を中心に話をすればいい。

渡邉:一方、ひふみ投信は個人のお客様向けの金融商品で、少額から購入することができます。私は株式戦略部のファンドマネージャーとして、セミナーや報告会で個人のお客様に向けて話をする機会がふえました。そうすると、目の前のお客様に「知ってよかった!」という楽しい気持ちになってもらいたいと思うように、意識が変わったんです。リアルの場で会う機会も多いですから、なおさら目標がクリアになったといいますか、「自分が提供できる、価値ある情報はどんなものだろう」と考えるようになりました。

お客様が本当に求めているのは投資信託なのか?

―さて、ここで前回からのテーマである金融教育について聞いてみたいと思います。レオスは投資信託の会社でありながら、「投資」ではなく「お金」についての本を出し、子どもの頃からお金について考えることを提案しています。そこにはどんな目的があるのでしょうか。

堅田:結果的に私たちがお客様に届けているのは投資信託という金融商品ですが、本質的にやりたいのは広い意味での金融教育のようなことかもしれないと思っています。お金を使うことでもっと明るい世の中をつくっていこうよとか、もっとワクワクした時間を過ごそうよ、というメッセージが中心にあって、それがあるときは「ひふみ」という投資信託の形をとり、あるときは「お金を学ぶ本」になったりもする。経営理念である「資本市場を通じて社会に貢献する」ことを目指すためにやってきている中で、今回はアウトプットの形がたまたま「お金を学ぶ本」になったのかな。
 
渡邉:僕も基本的にはその意見に賛成ですね。
とにかくシンプルに、この国を明るくしたいんです。ちょっとずつでいいから、何か新しいことしようとか、リスクとってみようよと言いたい。
例えばですが、アメリカはスタートアップ大国で多くの人が起業にチャレンジする風土があります。僕は日本人にもそれは可能だと思うんです。ほんのちょっとスイッチを入れて気分を変えるだけで、ものの見え方が変わって日本経済とか景気とか、良い方向に変わるんじゃないかな。そのきっかけをつくりたいと思っています。
 
藤野:もしかすると、投資信託が欲しい人は世の中に誰もいないかもしれない。大切なのは、投資を通じてどういう明るい社会をつくるのか、楽しい生活をつくるのかという未来の姿をお客様に提供することだと思っています。そうした価値の提供が本質で投資信託などの金融商品はおまけだと考えてみると、「安心する未来」とか、「投資についてわくわくする考え方」を伝えることそのものが、僕らの中心にあるものだといえるかもしれませんね。

―レオスのメンバーはいつも投資の楽しさを伝えたいと話していますが、その理由が分かった気がしました。金融商品を通して世の中にどんな価値を提供できるのか、これからも試行錯誤していきたいです。

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