【イベントレポート】将棋と投資、30年勝ち残るための秘訣に迫る!森内俊之十八世名人と公開対局
7/9(火)、「永世名人と考える『将棋と投資』~長期的に勝ちたい人へ」と題したセミナーを開催しました。森内俊之十八世名人をお招きして、ゲストにAIの開発を手がけるHEROZ林隆弘社長、進行役は鈴木環那女流二段という豪華な顔ぶれです。
今回のレポーターは、レオス・キャピタルワークス パートナー営業部の橋本裕一です。社内部活動の「レオス将棋部」の部長も務めております!
高校以来30年のブランクがあったのに、将棋が強くなっていた
当日の会場には、130名!将棋ファンの方も数多くいらしてくださったようです。
でも、投資信託の運用会社なのに、どうして将棋のイベントを? ちょっと不思議に思われた方もいらっしゃるかもしれません。
本セミナーのきっかけは、昨年秋、レオスの社長である藤野がテレビの企画でプロ棋士と対局をした際、森内先生・鈴木さんが解説・聞き手を務めてくださったことです。
藤野は高校時代まで街の将棋大会に出るなどよく将棋を指していましたが、それ以降は将棋から遠ざかっていたようです。けれども、たまたま藤野が個人で未上場のHEROZに投資をしていたところから、再び将棋の熱が高まることに。HEROZは将棋AIの開発で培われた技術で社会を変えていこうとしている企業です。HEROZのアプリ「将棋ウォーズ」に藤野はすっかり熱中し、ゲーム内でもランキング上位に入ってくるほどになりました。
このテレビ対局も、HEROZ林社長から森内先生を紹介いただき実現したものでした。
テレビ対局の当日は、200手を超える大熱戦の末、駒落ちながらもプロ棋士に勝利!そのとき藤野の感想は「高校以来30年のブランクがあったのに、将棋が強くなっていた」ということでした。投資という仕事を30年続けてきたことが将棋脳を鍛えていたのではないか、と。
おそらく「将棋と投資」には通ずるものがあり、棋士と投資家の勝負哲学には共通点があるのではないか?
そんな思いから今回のセミナーを企画するに至ったわけです。レオス将棋部のメンバーも総動員で準備に当たりました!ちなみに藤野は将棋部の部員でもあります。
将棋ウォーズ対局!森内名人の容赦ない攻め
前半パートでは、将棋対局アプリ「将棋ウォーズ」にて森内先生と藤野が対局し、スクリーンに映し出されたゲーム画面を見ながらの大盤解説を鈴木さんとHEROZ林社長が行ないました。藤野は森内先生の過去の棋譜を研究して対策は考えていたようですが、森内名人は全く容赦ない本気の指し回し!スピーディーな展開になり、対策を講じる前に展開を有利にされてしまいました。将棋ウォーズには「棋神」という、AIが代わりに5手分指してくれる機能があるのですが、藤野は2回使えるルールで行ない、2回とも使っていましたが、それでも壁は厚かったようです。
結果は森内先生の勝利。藤野も「さすがにプロ。今このタイミングという一瞬を全く見逃さずに突いてくる」とコメント。
会場の皆さんも、二人の熱い対局と、鈴木さんと林社長のユーモアまじえた大盤解説を楽しんでくださっていたようです。
プロの世界で勝敗を分けるもの
さて、ここからは後半パートのトークセッション。将棋・投資それぞれの世界で30年の長きに渡りトップで活躍してきたプロの考え方から、「長期的に勝つ」秘訣を学んでいきます。
鈴木さん:
「プロの世界では皆さんが同じように努力をするわけですが、中でもトップを取るためにはどこに差が出るのですか?」
森内さん:
「まず勝てた日には運が良かったのかなと思うようにしています、日々の対局では良くない所がわかるので、それを一つ一つ克服していく。強敵と戦うときやタイトル戦では、力を一点に集中して臨みます」
藤野:
「投資の世界でも、短期的には勝ち負けは『運』に左右されます。ですから、得意な局面ではどれだけ引き離すか、不利な局面のときにどれだけ頑張り抜くか。日々少しずつ勝ち点を重ねていくことによって、3年5年と経つとかなり大きな差になってくる」
林さん:
「会社経営をして10年になりますが、将棋から学んだことも多く、例えばミスをどれだけ減らすかということ。特に上場してからはより感じていますね。AIとか強い棋士は、実はエラーレートが著しく低いんです」
トップを狙う人は長い視点で見ている
森内さん:
「対局相手もプロですので、起死回生の妙手というのは実はほとんどありません。地味にやって、50%のものを51%、52%と、少しずつ積み上げていく。それが長い間勝つ秘訣なのだと思いますね。トップを狙う人は長い視点で見ている。若いときにどういうやり方をしているかで将来が決まってきます。
今話題の藤井聡太さんを見ていると、相手の得意形でも逃げずにあえてリスクをとって踏み込んで向かっていく。目先の勝ち星よりも将来の成長を選んでいる。それでもあれだけ勝てているので、とても末恐ろしいです(会場笑)」
藤野:
「投資でも目線の長さは大切にします。例えば、共立メンテナンスという会社があります。ドーミーインといったホテルなどを運営している会社です。数年前、業績が好調だったので、予定よりもたくさんホテルを作ることになりました。当然最初はコストだけかかるわけですから、目先は数字が悪くなります。そして株価は下がりますが、それは短期的には正しい。ただ、何年か経つとコストを回収し、売上、利益がドンと上がってくる。同じ情報があったとしても、時間軸によって判断が変わるんです」
鈴木さん:
「そういえば、羽生(善治)先生も若手相手に最新形で臨むとよくいわれます。そういったリスクについては、どう考えますか?」
藤野:
「リスクというのはリターンの裏返し。リスクがある手には大きなリターンもあります。大切なのは、どれだけ引き分けの状態にもち込むか、ということ。日々のマーケットを将棋に例えると、年間200数十局戦っているようなものです。今日は引き分けでいい、今日は引き分けでいい、と思っていて、その中でなんか勝てるときがある。のってるぞ、わかるぞ、と。調子が良いときに勝っておけば、結果的に1~2年を通じて勝てる。自分の体調にも波があるし、マーケットにも波があるし、ファンドにも性格による波があるので」
寝られることは、才能?
鈴木さん:
「やはり才能というのも関係あるのでしょうか?」
藤野:
「私の一番強い才能は、どんなときでも寝られるということ(笑)。かつてリーマンショックのあおりで、自分で作った会社を1株1円で売ることになった日の前日も、『明日株価1円かあ、しょうがないな、寝よ』といってすぐに寝ました(笑)。ともに起業したパートナーの湯浅も全く同じタイプです」
森内さん:
「ミスや失敗は日常。なくすことはできないので、受け入れて対策していくだけ。ただ、致命傷にはならないようにということを心がけてきました。棋士は自分の負けは自分だけの影響で済みますが、社員やお客様を抱える社長はすごいなあと思います(笑)」
林さん:
「私も『すぐ寝られそうだよね』と、よく言われるのですが、実際そうなんです(笑)。5秒で、どこでも寝られます。最近は海外出張にもよく行きますが、どこのホテルでもすぐに寝られます!」
藤野:
「よく同じニオイを感じるんですよね…(笑)」
今後、AIは将棋や投資にどのような変化をもたらすか
鈴木さん:
「今後の将棋や投資の世界における、AIの位置づけについてお聞かせください」
森内さん:
「ここ10年でずいぶん変わりました。最初はAIと人間の対局という構図でしたが、今は研究パートナーという位置づけです。自分が見ても意味がわからないような手、それが本当に良い手だったとしたら、自分の将棋観が変わってしまうような感覚さえ持ちます」
林さん:
「はい、将棋においてはプレイヤーとオーディエンスによって、AIの活用が違います。
プレイヤーにとっては、研究時間が短縮され、これまでの固定観念も変わってくる。今のタイトルホルダーと話しても、AIを上手く活用されているなぁと思います。
オーディエンスにとっては、評価値という点数で将棋を見られるようになりました。指す人だけでなく、『見る将』も増えています。野球やサッカーを見るように、観戦する人にも点数で見て欲しいという思いがありました。
投資に関しては、短期投資やHFT(高頻度取引)みたないものはAIが強いと言われています。ただ、長期的な投資に関しては、経営者に会ったり会社訪問をしたりして感じる雰囲気のようなものは、まだ人間には敵いません」
藤野:
「人間が全部やるのが正しいということはなくて、組み合わせるのが大事。僕らもAIを活用して『棋力』ならぬ『投資力』を上げていきたい。将来的には、人間の魅力や意志の強さ、リスクへの対応度などを測ることが出来るAIも登場するかもしれません。経営者の表情を読み取って、『あの眉の動かし方は成功する」とか(笑)。そんな時代が来るかもしれないし、またそういうのを否定してはいけないと思いますね」
2時間に渡るセミナーは、最後に森内先生とのじゃんけん大会が行なわれ、森内先生と鈴木さんから揮毫入り扇子のプレゼントがあり、盛会のうちに幕を閉じました。
ひとつひとつの駒に性格があり、相手や戦況に応じて組み合わせを考えて戦う将棋。3600社の上場企業にも同じように個々の特徴があり、市況に応じてポートフォリオマネジメントを行なう投資。
戦い方やココロの持ち方について多くの共通点があるように思いました。このセミナーで得られた長期的に勝つエッセンスを、将棋や投資はもちろん、人生の様々な場面で活かしていただければ嬉しいです。
森内さん、林さん、鈴木さん、そしてご参加いただいた皆様、どうもありがとうございました!
※個別銘柄を推奨するものではありません。