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「家族会議」でお金の使い方の練習をしてほしい レオス蛭田純が子どもに伝えたいこと(後編)

レオス・キャピタルワークスのメンバーが考える「子どものお金の教育」について、ライターの田中裕子さんが根ほり葉ほり尋ねていく本連載。

パートナー営業部・蛭田純が語る前編ではなぜ「使い方」を伝えたいと考えているのかをお話ししました。後編は、具体的に「お金をどう教えるか」がテーマです。運用会社に勤めているからこその発想で、これからやってみたい金融教育の方法も考えているようです。

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今回の話し手:蛭田純
レオス・キャピタルワークス パートナー営業部。2012年レオス・キャピタルワークスに入社、運用部を経てパートナー営業部に所属。二児の父。子どもたちにはあえて早期教育はさせなかった。お金についての考え方が30歳前後でガラッと変わった経験を持つ。
聞き手:田中裕子
ライター。1歳9ヶ月の娘を持つ母、ビジネス系出版社出身だが、お金についてはどうもフワフワしている。

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お金の教育こそが日本を救う?

——最近はメディアで、金融教育の大切さが叫ばれています。この連載をはじめたのもそれに対して不安を覚えたから、という面もあるわけですが……そもそも、なぜいまの子どもたちには金融教育が必要なんでしょうか? 

いろいろな理由がありますが、それも「使い方」に紐付けてお話しできます。

ぼくはいま、外国のお客様に対してレオスの運用する商品をご提案する仕事もしています。そこで伝えなければならないのが、「なぜいま日本に投資するのか」。人口は減っている。少子高齢化は止まらない。国の借金もたくさんある。経済成長もしていない……。

そんな国の企業になぜ自分の大切なお金を託すのか、納得してもらわなければならないわけです。

——たしかに条件を見れば、日本は「選ばれない国」ですよね。

ええ。でも日本は現状、教育の水準も高くインフラも整っている先進国です。なにより、「お金はたくさんある」んですよ。

——うーん。お金、ありますか?

日本人の個人の金融資産は、およそ1800兆円もあります。これはじゅうぶん「お金がある国」と言っていい数字でしょう。問題は、その半分以上が預金されていること。つまりお金が動いていないこと、循環しないことが問題なんですね。

ではなぜ、お金を使えないのか? ……「使い方を教えられていないから」です。

——あ、そこにつながるんですね!

金融教育によっていいお金の使い方を身につけた子どもたちが大人になり、滞っているお金がすこしずつでも動いていったら、日本は「よろこんで投資される国」になれる。まだまだ元気になるポテンシャルはあると思います。……ただ、このことにピンと来ている日本人が少ないのが現状ですが。

——ピンと来る人たちを増やすためにも金融教育が必要、とも言えますね。

はい。祖父母世代はもちろん、親世代にも「貯めるマインド」は染みついているでしょう。だから、子どもがお金に対して先入観を持つ前に、金融教育で「いいお金の使い方」を伝えることが必要なんですね。

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「好きなチョコレート」で、親の価値観を伝える

——個人の人生だけでなく日本社会にも影響を与えるなんて、教育ってすごい……! では、どうすれば家庭で「いい使い方」の練習ができるでしょう?

レオスでは毎朝、アナリストたちが会議を開きます。「この会社に投資しよう、なぜならこんな魅力があって……」と議論を交わす場なのですが、家庭でもこうした会議を開けたらおもしろいのではないでしょうか。

たとえば「500円以内で好きなチョコレートを買ってきましょう」とお題を出し、家族全員がそれぞれ自分の選んだチョコを持ちよる。そして、その理由をプレゼンするんです。おいしい、パッケージがいい、この会社が好き……と。

この「家族会議」の時間を重ねるなかで自然と親の価値観は伝わりますし、なにより「お金を使うことは何が好きか、何を応援するか表明することなんだ」と気づいてもらえるんじゃないかなと。これ、いわば子どもへの500円の投資なんですよね。

——なるほど、「教育投資」ですね。

ええ。子どもが小さいうちはこちらがお金を出しますが、ゆくゆくはお小遣いやアルバイト代のなかで、自分がもっとも納得できる消費を模索してほしいと思います。

——アルバイトといえば、藤野さんは「子どもとお金の話をする前に『働くこと』について親子で話し合おう」とおっしゃっていました。蛭田さんは「働くこと」についてお子さんにどう伝えていきたいですか?

端的に言えば、自由に、自分がやりたいことをやってほしいですね。ぼく、子どもにいい会社に勤めてほしい、高給取りになってほしいとはちっとも思っていないんですよ。自分が働いていて楽しいならそれでよくて。

これは決していい親ぶっているわけではなく、自分自身が、仕事でしんどい思いをしていた時期があるからこそ伝えたいことです。

——そうなんですね。

前職ではマーケットリサーチャーだったのですが、朝から夜遅くまでひたすらパソコンに向かっていて、社会から隔離されているような感覚でした。仕事の意義を見いだせず、体力的にも精神的にもつらかった。少なくとも、子どもには当時のぼくのような気持ちで働いてほしくないんです。

——じゃあ、いまはお仕事を楽しんでいらっしゃるわけですね。……広報の方もそばにいて正直に言いづらいかもしれませんが(笑)。

いやいや、心の底から楽しく働いていますよ!(笑) 好きなことを好きなようにやらせてもらっていて、あまり「仕事をしている」という意識もありませんし。子どもにも、胸を張れる仕事ができています。

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親の務めは、経験を与えることだけ

あと、子どもに「自由にやりたいことをやってほしい」と願うのは、前職の経験に加えて、自分が受けてきた親の教育に対してちょっと思うところがあるからなんですよね。

——というと?

ぼくね、小さい頃ピアノを習っていたんです。自分は好きじゃなかったけど、親の勧めではじめました。当時は男の子なのにピアノをやっているのが恥ずかしくて、友だちにも言えず、結局全然上達しませんでした。

だから、反面教師というほどでもないですけど、自分は子どもになるべく「これをやれ」と言わないように心がけています。その代わり、彼らが自ら「やりたい」と言ったことには全力で応えたいですね。

——自分が親にされてよかったことも嫌だったことも、どうしても教育の指針に影響を与えますよね。

そうですね。いまはとにかく、「もっとやりたい」を見つけてもらうべく、できるだけ多くの経験をさせようと意識しています。親ができることは、たくさんの場所に連れて行き、さまざまな環境に触れさせ、いろいろな人に会わせることかなと。

その中で、「あ、自分はこれが好きだな」というものを見つけてくれたらうれしいですね。

——前半のお話に引き寄せると、そのために蛭田さんがお金を使うのは「いい消費」というわけですね。子育てのすこし先輩である蛭田さんの「お金×教育」論は、同世代ということもありとてもリアリティがありました。ありがとうございました!

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プロフィール:

ライター:田中裕子
鹿児島県生まれ。新卒でダイヤモンド社に入社、2年間の書店営業で本を売る現場のあれこれを学び、書籍編集局へ異動。ビジネス書の編集を経験したのち、2014年9月にフリーランスのライター・編集者に転身、書籍の執筆やウェブや雑誌のインタビュー記事などを担当する。現在はライターズカンパニーbatonsに所属。1歳の娘を持つ母。
ウェブサイト: https://tnkyuko.themedia.jp/
Twitter : https://twitter.com/yukotyu
note : https://note.mu/tanakayuko

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