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投資信託にブランディングなんて必要なの? 「ひふみ」リブランディングの舞台裏ストーリー(前編)

こんにちは、ひふみラボ note 編集部の坂崎です。

noteで開催いたしました投稿コンテスト「#ゆたかさって何だろう」、ご参加くださった皆様、読んでくださった皆様、本当にありがとうございました!

コンテスト結果発表はこちらのnoteをご覧ください!↓

投資信託の会社がどうしてこのコンテストを開催したのか……というところにもつながるのですが、今日は私たちの商品である投資信託「ひふみ」のリブランディングについて、舞台裏ストーリーのnoteをお届けしたいと思います。

リブランディングから3ヶ月

今回、ブランドメッセージから、ロゴやデザイン、Webサイトまで一新しました。5月半ばの発表から3ヶ月。これまで長くお付き合いくださったお客様や、販売パートナーの皆様、そして社内のメンバーにとっては、最初は違和感があったかもしれませんが、だんだんと見慣れてきた頃だと思います。

ひふみ1

このリブランディング、実はスタートからお披露目まで1年以上かかった大プロジェクトでもありました。不慣れな私たちにとっては、なかなかハードなことが多かったですが、本当に学びが大きかったです。

しかも、皆様にお披露目するタイミングは、まさかのコロナ禍。

大きな時代の転換点と重なりました。しかし図らずも、新しいひふみのブランドデザインは次の時代にこそ受け入れられるものになっていたと自負しています。

運用会社による投資信託のリブランディング、あんまり他に事例がないと思います。

なぜ行なったのか?
どうやって行なったのか?
これを通じて何が変化したか?

1年以上にも及ぶプロジェクトだったため、このnoteもずいぶんと長くなってしまいましたが、まとめておきたいと思います。

投資信託で当たり前ではなかった「ブランド」の考え方

ひふみ投信がスタートしたのが2008年。そもそもその頃からひふみは「ブランド」を強く意識していました。代表の藤野は「当時、日本の投資信託にはブランドと呼べる商品がほとんどなかった」とよく話します。

従前の投資信託業界では、テーマに合わせて新しい商品が次々に組成され、お客様にはそれを乗り換えていってもらうというのが一般的なマーケティング手法とされていました。ひふみは、その業界の常識の逆を行きます。

それは、長く愛着を持てるブランドを育てること。

特に若い世代のお客様に向けて、「ためながらふやす」という考え方を訴求しました。安心して資産づくりをしていただくためのパートナーでありたい、その過程で投資の本質を知ってほしい。そんな想いで生まれたのがひふみ投信です。

それは、「ひふみ」というネーミングにも反映されました(ひらがなで親しみやすく、「1、2、3」とコツコツ続けてもらえるように、など)。

運用成績をしっかり残すことはもちろんでしたが、マーケティングも信頼できるブランドづくりのためにいろいろなことを手がけてきました。平日の夜や土日にセミナーやイベントを開催する、運用者が顔を出して積極的に情報開示する、SNSを活用する……いずれも、大手がやらない方法でした。

運用開始から5年ほどたって、「ひふみろ」というロケットのゆるキャラも誕生しました。投資信託の会社では初めてだったと思います。

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(運用報告会を映画館で開催し、他会場に同時中継するという試みでした)

軸を明確にすること、変化に合わせて再構築すること

リブランディングのきっかけとなったのは、2018年のひふみ投信10周年です。

69名のお客様、1億5000万円からスタートしたひふみ投信でしたが、おかげさまでシリーズの運用残高は7000億円を超えて、日本株のアクティブファンドとしては最大級の規模になっていました。お客様の数も、10年前とは比べ物にならないほど増えました。

それまでは急激な成長で社内がバタバタしていたのも事実ですし、これからの事業展開を落ち着いて考えるタイミングだったと思います。コミュニケーションの前提となるブランドの根幹から、ちゃんと見直しをしてみようということになりました。

ひふみでの資産づくりは10年、20年と「長く持っていただくこと」が前提になっています。これが、リブランディングの意味につながります。この先10年を見据えた上で、ひふみとしてブレない価値を明確にすること、さらに時代の変化に合わせた価値の伝え方に再構築することが必要だったのです。

心優しきプロフェッショナルとの出会い

リブランディングに際してデザインのプロとして伴走いただいたのが、西村拓紀デザイン株式会社の西村ひろあきさん率いるチームでした。

《クリエーティブチーム》(敬称略)
クリエーティブディレクター・西村ひろあき(西村拓紀デザイン株式会社)
アートディレクター・三木香(株式会社ミックデザインワークス)
コピーライター・宮代幸枝(marble graphics)
ストラテジックプランナー・夏目則子(株式会社レッドフロッグズ)

スライド1

西村さんはこれまで主にプロダクトデザインをメインに手がけていた方です。

今回、投資信託という形のないものをテーマにするというのは、西村さんにとっても新しい挑戦だったそうです。それでも、ひふみの目指す「お金の循環」の概念をすぐに理解して、ぜひやってみたい、とおっしゃってくださりました。

印象的だったのは、2回目のミーティングでこちらが「チームメンバーをどのように選定するのか?」と尋ねたときの西村さんの返答でした。

「“優しい人”かどうか、です」

まさかそこで「優しい」という言葉が出てくるとは思わず、少しあっけにとられました。そして、ジーンと涙ぐんでしまった……。

投資信託という商品、一般的には無機質で冷たいイメージを抱かれがちです。ひふみが持っている本質的な「優しさ」の部分に最初に注目してくださって、ビジネスライクになりすぎず、より人の心に寄り添えるようなメンバーにお声がけいただいたそうです。それを聞いて、私たちはとても嬉しく、この方たちと一緒にやっていきたい、そう思いました。

「時代は確かに変わっていて、これから、優しい時代がやってくると思っています。でも、優しいだけでは生き残れない。プロフェッショナルとしての強さがあってこそ、お客様に貢献できる。いい意味での二面性を落とし込んだブランドを表現できるといいですね」

たった一度のブリーフィングで、ここまで掴んでくださるのか!

私たち当事者がグルグルとつかみあぐねているような本質を、シンプルに的確に言葉にしてくださったこと。プロってすごいなあ、と驚くばかりでした。

「会社」と「商品」の曖昧な関係を解消する

心強いチームができあがり、ようやくリブランディングプロジェクトが動き出しました。これが、2019年の夏。

リブランディングのフェーズとしては、ざっくりわけて 分析 → 制作 → 浸透 と3段階あります。

まず、自分たちのことをあらためて知り分析するフェーズです。

プロジェクトの最初に、社員有志でワークショップを行ないました。

動物のカードを使って、私たちが潜在的に持っているひふみ、そして会社であるレオスのイメージをあぶり出しました。

研修

結果、この時点ではメンバーそれぞれのイメージは統一されていないことが判明しました。おそらく部署によっても異なりますし、古くからのメンバーと新しいメンバーでも異なります。何が正解ということではなく、やはり見えている景色が異なるんですね。

変わらない軸は大事にしなくてはいけないけれど、環境の変化に応じて変わっていくことも必要です。

こういう時に客観的な立場で伴走してくださるデザインチームの心強さを感じました。社内のメンバーだけではきっと意見のすり合わせだけで相当な時間を取られていたと思います……。

ワークショップを経て、西村さんから指摘されたことは、大きく二つ。

1)会社(レオス)と、商品(ひふみ)のイメージが混同されている
2)「レオス」「ひふみ」は、どちらもブランドイメージに二面性がある

1)のご指摘は確かにそのとおりだと思いました。これまでは私たちの知名度を高めるため、あえて会社名との明確な切り分けをしていなかった面もあります。

でも、ここから先、さらに事業を進化させていくのであれば、表に見える商品ブランドのイメージとそれを支える提供者である会社のイメージを切り分けたほうが良いだろう、と。ユニクロ(商品ブランド)と、ファーストリテイリング(会社)の関係性と考えるとわかりやすいでしょうか。

2)についても、西村さんが最初からおっしゃっていたことでしたが、社員からもワークショップでも多く出てきた意見でした。レオスやひふみは「強さ」と「優しさ」のような二面性を包含しているため、どちらかに偏ると違和感がある。伝え方に悩むこともしばしばでした。

レオスとひふみ、お互いの位置関係の曖昧さを解消していくこと
ブランドの持つ二面性の魅力を伝えること

この2点のベストバランスを意識しながらブランドの持つポテンシャルを引き出して、一貫したメッセージを伝えていこう、という方針が決まりました。

そして、キーワードとしてまとめたのがこちらです。↓

研修2

商品ブランドのひふみを後ろで支えているのがレオスであり、両者を貫くビジョンが存在する、という関係性として整理されました。

ブランドの拠り所「タグライン」「ステートメント」をつくる

制作に進むために次のステップとして重要なのが、「タグライン」でした。

私たちにとってはあまり馴染みのない用語でしたが、タグラインとは「ブランドが持つ感情面と機能面のベネフィットを端的に伝えるための言葉」のことです。土台であるため、キャッチーさや尖り具合よりも、地味でも普遍的で本質的な言葉が求められるとのこと。西村さんは、ブランドの「背骨みたいなもの」とも、おっしゃっていました。

あらためてマーケターの夏目さんと市場環境の分析をして、しっくりくる言葉が見つかるまで、ひふみのブランドとしての現状の姿とこれからありたい姿を何度も話し合いました。

そこで出てきたのが、「まんなか」というキーワード。

ひふみは、人と企業と社会の循環のまんなかであり、お客様の資産形成をまんなかで支えられる存在でありたい、そんな投資の本質を伝えられるようなイメージを目指しました。

そこからコピーライターの宮代さんと一緒に、いろんな案を検討します。

最終的に決まったタグラインが…

「次のゆたかさの、まんなかへ」

です。

「お金」「投資信託」「ファンド」という直接的な言葉を使わずとも、私たちがひふみを通じてやりたいことはこれなら表現できるのではないか、ということでした。

なんのために投資をするのか。それは一人ひとり異なる「ゆたかさ」のためだし、社会の転換期にあって「“次の”ゆたかさ」のあり方をこれからみんなで一緒に考えていきましょう、そんな思いが込められています。

さらに、タグラインと一緒に「ステートメント」も作成しました。

タグラインはシンプルな一言ですが、ステートメントはブランドが社会に対して果たそうとする内容や約束する価値を、簡潔な文章で表現したものです。

短い文章ですが、ひふみ“らしさ”に、一言一句こだわりました。ひらがなとカタカナの使い分けとか、句読点の位置など、細かいところまで。

ステートメントはこちら。↓

投資信託を、もっとみんなのものに。
一人ひとりの夢や希望へ向かっていく、まんなかのチカラに。
ひふみは、生まれた時の想いをさらに大きく育てるために、
いま、次のステージへと動き始めています。

ひふみを通して、あなたが応援する会社はとても多彩。
それぞれの会社が成長することで、
社会もよりカラフルに、元気になっていく。
そして、可能性に満ちた世界では、
あなたもあなたの未来に向かって羽ばたいていける。

一人ひとりが、そんな幸せの循環のチカラ。
ゆたかさの新しいカタチは、もう始まっている。

発想もつながり方も、枠にとらわれずに、
ここからみんなで、ひふみを進化させていこう。
みんなでつくる、次のゆたかさのまんなかへ、
さあ、いっしょに。

タグラインとステートメントが形になってきた時に、ずいぶん安心したのを覚えています。迷った時に立ち帰れる「拠り所」になるだろう、という心強さが生まれました。

このあと、このタグラインとステートメントをもとにビジュアルとして落とし込むことになります!

後編へ続きます)

***

noteの投稿コンテストを開催した背景はこちらにもインタビューしていただいています!↓

ひふみブランドサイトはこちら↓

※当記事は、当社が運用する投資信託や金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。

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