湯浅さん_後編

「ひふみワールド」のファンドマネージャーが 米国のプロレス興行会社を取材した理由/湯浅光裕(後編)

投資信託「ひふみ」のアナリストにビジネスや世の中の流れを語ってもらう連載、「ひふみのアンテナ」。

前編に引き続き、9月26日から購入の 募集が始まる世界株投信ひふみワールドのファンドマネージャーを務める湯浅光裕が、「世界への投資」をテーマに語ります。

前編では、世界の地域別の注目ポイントを語ってもらいましたが、後編ではもう少し具体的に、どんな企業に興味を持っているのか、どんな取材をしているのか、そして新ファンド「ひふみワールド」をどんなファンドにしたいのか、を語ってもらいました。

聞き手はマーケティング・広報部の大酒です。

    前編はこちら↓

米国のプロレスにエンターテインメントの未来を見る

――ひふみワールドの投資先調査で、興味のある企業はありましたか?

もちろんたくさんありました。ちょっと変わったところでは、米国のWWE(ワールド・レスリング・エンターテイメント)です。プロレスの興行会社団体で、ニューヨーク証券取引所に上場しています。時価総額は6000億円近く。この前東証マザーズに上場した「新日本プロレス」を子会社に持つブシロードの10倍以上です。この前の出張ではリングサイド近くで観戦しました。素晴らしいエンターテインメントです。こうした興行もさることながら、映像コンテンツを配信して稼いでいます。

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取材したGeorge Barrios副社長は10年前に入社し、WWEを興行団体からメディア企業に育て上げた人です。一言で言うならビジネスマン。ともすれば暴力的でマスに受け入れられないコンテンツを、うまくコントロールして電波やインターネットに乗せているんです。

プロレスラーには、暴言や流血など、ルールを外れた暴力は禁止されています。唾を吐くこともダメ。悪役レスラーは、唾を吐くのではなく自分の汗を手で払って観客にかけています。観客は気持ち悪がりながらも大喜び。そうやって、“コードぎりぎり”で悪役を演じて観客を楽しませている。

案外、ファンは子供が多いんです。親が安心して子供に見せられるショーなんですね。試合時間は放送時間に入るようコントロールしています。「Putting smiles on people's faces」(人々に笑顔を)。プロレス団体らしくない理念だけれども、これに沿ったビジネスを展開し大当たりしている。海外にも放映権を売りに行っています。

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米WWE本社で。左から湯浅、WWEのGeorge Barrios副社長、レオスの運用部メンバー

理念があり、それをビジネスに落とし込む工夫や仕組みを持ち、それをやり遂げる経営者がいる。こんな会社が好きですね。

WWEについては、株式市場の期待が高く、株価が利益の何倍で取引されているかを示す株価収益率(PER)は80倍くらいと、さすがに割高感があります。でも、取材して魅力的だったのでここで語らせてもらいました。

フィリピン財閥のトップに尋ねたこと

――取材では面白い経営者にたくさん出会えますね。経営者にも話しやすい人、そうでない人といろいろといると思うのですが、どんな取材をしているのですか?

会社に投資をするということは、その中にいる人に投資をするということです。経営者が魅力的であることは、投資をする上で非常に重要です。だから私は経営者がどのような人なのか、色々な角度から質問します。

たとえばフィリピンの財閥企業のトップには「あなたは20代の時、どんな人生を歩みたいと思っていましたか」と質問しました。フィリピン有数の財閥の総帥ですから、周りのお付きの人たちは凍り付いていました。「えっ、そんなこと聞くの⁉」ってびっくりした表情です。

でも、その人を知るうえで、そういう質問って大切だと思っています。その経営者は、最初は5分しか会わないと言っていたのですが、結局1時間くらい話してくれました。最後には自ら「おいしいお菓子」といって、ふるまってくれた。それは日本人にはすごく見慣れた「ヨックモック」の「シガール」だったのがまた面白かったんですが(笑)。

利益成長も資本政策も、バランスよく

――世界には5万社を超える上場企業があります。何らかの定量的なスクリーニングはするのでしょうか?

はい、ある程度の定量的なスクリーニングは必要です。株価の変動(ボラティリティ)、営業利益の変化率、現状のバリュエーションなどで、絞り込みします。しかし、こうしたスクリーニングに漏れても、取材するべき会社はたくさんあります。

実は「ひふみ投信マザーファンド」では、すでに800億円以上の海外株式を運用しています。海外株の調査経験が長いアナリストも活躍しています。私や彼らが興味を持っている銘柄はたくさんあって、スクリーニングに頼りすぎなくてもやっていける陣容です。

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――銘柄を選別するうえで、企業の将来の利益を最も重視しますか?

利益成長は大切ですよ。ただ、バランスよく考えたいと思っています。米国チックに1株利益で考えてみましょう。単純に本業が好調で、1株利益が成長するのが最高ですよね。一方で、設備投資など有望なお金の使い先がない場合には、自社株買いによって株式数を減らすことで1株利益を上昇させるという判断もまた重要だと思っています。

もちろん、金利が低い近年は社債を発行して、つまり借り入れをして自社株を買い、1株利益を上げていくという金融手法が米国で一種ブームになっていて、それを危ぶむ声があることは承知しています。要はバランスなんです。

適切な投資でいかに利益を成長させようとしているのか。そして利益が出て資本が積みあがってきたときに、どのような資本政策を考えているのか。足を運んで経営陣とコミュニケーションを取りながら、利益成長も資本政策も、どちらもバランスよく見ていきたいと思っています。

日本人が海外株を調査するメリット

――日本人が海外株について調べるということにハンディキャップはないのですか?

海外の投資家が日本企業を調査しに来日するということは普通にありますからね、実はあまりそのあたりのことは心配していないんですよ。当然、距離の面で、「移動して取材する」というハンディキャップはあります。ですが、むしろちゃんと足を使って日本から取材に行くことで、相手は喜んでくれて深い話をしてくれるんです。

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レオスがニューヨークに新しく開設した「New York Research Base」は、米国企業の調査や、現地の市場関係者との情報交換の拠点に

日本企業も国際展開していますから、日本企業との比較で海外企業を取材することもできる。日本企業のライバルを取材したり、顧客や仕入れ先を取材したりする場面も出てきます。「ひふみ投信」「ひふみワールド」には相乗効果があると実感しています。

運用成績を上げるという最も重要なミッションに全力で取り組みます。ひふみワールドには「世界にあふれるビックリ!をみつけにいこう」というキャッチコピーがあります。皆さんには、世界のビックリするような企業、経営者、こぼれ話をイベントや動画、活字で積極的に紹介していきたいと思っています。こんなファンド、あまり聞いたことがありません。ぜひ期待してください。

(インタビューを終えて)
数年前、前職の新聞記者時代ですが、米国のとある聞きなれない家電メーカーが日本に上陸するとのうわさを聞き、興味を持って関係者と食事をしたことがありました。米国ではダイソンを抜き、掃除機のトップシェアを握ると聞いて、驚いたのを覚えています。そんな企業があるのか、と。食事をした方は、日本になじみのない会社をどう知ってもらえばいいか悩んでいたので、新聞でもテレビでも見出しになる言葉として「ダイソン・キラー」がいいのでは、と何気なく提案しました。実際に新聞やテレビではその言葉で紹介され、後にえらく感謝されたことがあります。

広い世界にはたくさんのスター企業が生まれ、さらにその「キラー」も生まれます。米国のハンバーガーチェーンのシェイクシャックは2015年の新規上場の際はやはり「マクドナルド・キラー」と紹介されました。「テスラ・キラー」の異名を持つ電気自動車メーカーは山ほどあります。

1980年代、プロレスの黄金時代を支えた小林邦昭選手は「虎ハンター」と呼ばれ、人気絶頂のタイガーマスクのライバルでした。スターが生まれ、さらにそのハンターやキラーが生まれる世界というのは、ワクワクドキドキするものです。趣旨からずれるため、湯浅とのプロレス談議を詳細にお伝え出来ませんでしたが(けっこう詳細ではあるけれど)、世界が驚きにあふれていることは確かです。(マーケティング・広報部 大酒)

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世界にあふれるビックリ!をみつけにいこう
ひふみワールド、誕生

このたびレオス・キャピタルワークスは、日本を除く世界の株式を投資対象としたアクティブ運用の公募型投資信託「ひふみワールド」を新規設定いたします!(9/26募集開始・10/8運用開始)
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9/28(土)10:00-11:30 名古屋会場
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◎当コメントは個人の見解であり、個別銘柄の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。また、当社運用ファンドへの組入れ等をお約束するものではありません。