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「自立して生活する力」をはぐくむお金の教育とは。レオス水野が子どもに伝えたいこと【前編】

「お金についての知識に自信がない」
「子どもたちが生きる時代に、自分の経験が役に立つのかわからない」

そんな多くの親御さんと同じ不安を抱えるライターの森川さんが、個性豊かなレオス・キャピタルワークスのメンバーに「お金の教育」についてあれこれ疑問をぶつけていく本連載。今回は15歳の長女、12歳の長男、10歳の次女の父親である、コミュニケーション・センター部長の水野宏樹(みずの・ひろき)が登場します。

「3人の子育てでてんやわんや」だった期間を経て、上の子どもたちに「お金の教育」をスタートしたという水野。とはいえ、もっとも重視するのは「生活力」だそうで……? 日々の暮らしの中で、いったい何を伝えているのでしょうか。

子どもたちには、「生活力」を身に付けてほしい

——水野さんには、10代のお子さんが3人いらっしゃるとのこと。交遊関係が広がり、多感な時期を過ごすティーンエイジャーのお子さんにどんな「お金の教育」をされているのか、ぜひ教えていただきたいです!

水野:いやあ、お恥ずかしい話ですけれど、つい最近まで「お金の教育」なんて何もできていませんでした。年齢の近い3人の子どもたちの世話をしながら、普段の生活をまわしていくのに手一杯だったんです。

——3人のお子さんを育てる日々の慌ただしさは、察するに余りあります……!

本連載担当のライター、森川さん。お金について勉強中。幼稚園年中の娘さんへの「お金の教育」を考えるべく、鋭意インプット中。

水野:子どもたちが就学する前は、夫婦で力を合わせても手が足りないぐらいでしたねえ。下の子をあやしている隙に上の子たちが行方をくらましたり、ケンカをはじめたり、もう大変(笑)! 彼らを追いかけまわしてドタバタしていたら、あっという間に時間が過ぎていってしまいました。
 
末っ子の次女が10歳になった今、ようやく時間や気持ちに余裕が出てきたので、1年前から少しずつお金の教育に取り組み始めたところです。

——全員のお子さんに対して、ですか?

水野:今のところ、中学3年生の長女と小学6年生の長男だけですね。彼らには、日々の生活を送るために必要な、最低限のお金の知識を伝えることから始めています。というのも、僕は子どもたちに「生活力」を身に付けてほしいと常々思っていて。

——「生活力」とは、経済的な能力のことでしょうか?

水野:いいえ。家事をこなす力や、周囲と良好な関係を築く力。そして健やかに生活するうえで最低限必要なお金に関する知識。それらを総合した「自立して生活していく力」全般を、僕は「生活力」と呼んでいます。
 
けれど、その「生活力」を身に付けるために必要なお金の知識がどういうものなのか、僕もまだ明確な答えを持ってるわけではないんですよ。自問自答しながら、手探りしているところです。

「お金」と「生活」の関わりを知る

——「生活力を身に付けるためのお金の教育」……はじめて伺う視点で興味深いです。模索中とのことですが、現在、何を伝えていらっしゃるのでしょうか。

水野:お金と生活がどう関わっているのか、です。たとえば、「生活に必要な品物の価格の相場」や「その価格がつけられている理由」を考えてもらえればなと。
 
先日は、スーパーの精肉コーナーを一緒に見てまわりながら「同じ鶏肉でも、モモ肉は○○円。ムネ肉は△△円。価格に差があるね。どうしてだと思う?」と子どもたちに訊いてみたんです。すると「取れる量が少ないほうが高い?」「部位というより、こっちは国産だからかな?」など、子どもなりの仮説を出してくれました。

——問いかけに対してしっかり考えてくれるんですね。答え合わせはされるんですか?

水野:厳密な「答え」は教えません。「僕はこう思うよ」と言い添えるぐらいでしょうか。どんな答えが返ってきても「そうかもしれないね」と受け入れて、否定はしないようにしています。
 
僕は、彼女たちが考えた理由が正しいか、そうでないかは、あまり重要ではないと思っていて。大事なのは、はじめて知った事柄について興味を持ったり、考えたりする行為そのものだと考えています。

——ああ、私はついつい「正解を教えよう」「知識を与えよう」と意気込みがちです。もう少しおおらかに構えていいんですね。

水野:いやいや、子どもに何を、どう伝えるかには正解はないので、あくまでも僕の場合ですよ。ただ、押しつけすぎると、子どもたちがうんざりしちゃいますからね。僕は考えるきっかけだけつくって、軽いところで止めるように心がけています(笑)。

モノの価値を冷静に判断できる大人になってほしい

——お金の「使い方」について伝えていることはありますか?
 
水野:今はまだですが、今後は生活力につながるお金の使い方は伝えていきたいですね。たとえば「高価なものが、必ずしも自分にとってイイものだとは限らない」ということ。
 
具体的に言うと、野菜や果物の初物の時期は、希少性に価値があるので価格が高くなります。けれど栄養価やおいしさは、旬の時期に比べると劣る。一方、旬を迎えた食材は価格が下がるうえに、一段とおいしくなって、栄養価も上がります。安価だからといって品質がよくないとは限らない。そういった、生活に関連したお金の知恵を身に付けてほしいですね。
 
加えて、周りの評価や見栄に振り回されるのではなく、自分の軸を持った買い物ができるようになってもらいたいと思っています。たとえばブランド品。僕も憧れてデザイナーブランドの服を買った経験がありますが、名の知れたブランドの製品が、すべて自分にぴったりくるわけではありません。単純にそのブランド名だけに惹かれて買うのではなく、冷静に他のものと比べて考えるクセをつけてほしいです。
比較した結果、「やっぱりあのブランドのものが欲しい」と思うんだったら買えばいい。「意外とファストファッションブランドで十分だな」と納得できれば、そっちを選べばいい。自分の価値観に照らして判断できるようになるといいなと思います。

——品物の価値を自分の軸を持って見定めるのは、大人になった今でもむずかしいと感じます。友達に影響されやすい10代なら、なおさらでしょう。きっちり管理したほうがいいのかな……。

水野:僕は、子どもたちがお小遣いで得たお金を使うぶんには、厳しい制限は必要ないと思っているんですよ。実際に買って経験してみないと、わからないことってたくさんありますよね。子どものうちに、買い物の成功も失敗もお小遣いの範囲内で経験できたらいいのかなと。
 
子どもたちもいつか自分で稼ぐようになって、買い物を楽しむ余裕が持てるようになるでしょう。そのときに「そういえば昔、お父さんがこんなこと言っていたな」と思い出してもらえれば、それで十分だと思います。

夫婦で異なる「お金観」。お互いを認め合い、いいところを取り入れる

水野:そうそう。お金を使うことに関しては、僕より妻のほうがより実践的な知恵を伝えていると思います。

——「実践的な知恵」とは……?

水野:「それが本当に必要かどうか」をじっくり考える重要性を、子どもたちに伝えてくれています。
 
先日の話ですが、長男がちょっと高級なカップラーメンを自分で買ってきて食べていました。好きなYouTuberが食べているのを見て、「僕も食べてみたいなあ」と興味を持ったみたいです(笑)。

水野:その際にも、妻が彼に問いかけていました。「このラーメンは300円だよね。300円あれば、いつも食べてるお菓子がたくさん買えるよ。カップラーメンをひとつ買うのがいいか、お菓子をたくさん買うのがいいか、ちゃんと考えた?」と。

——「なんとなく」でお金を使わないように諭されているんですね。以前お話を伺った山﨑さん西澤さんの、「意志が宿った買い物をしてほしい」という思いと共通しいます。
 
水野:そうですね、妻にも同じ狙いがあるんだと思います。妻は子どものころから、「お金の無駄遣いはしないように」と言われて育ってきたらしくて。一方で、僕はすべての買い物を厳しく律する必要はないと思っているんですけどね。そこはちょっと、妻と僕で価値観の違うところなのかもしれないです(笑)。

——へえ! ご夫婦の考え方の違いについて、話し合うことはあるのですか?

水野:妻の考え方に大方は同意しているので、スタンスの違いでぶつかったり、時間をとって議論したりはしません。けれど、旅行や外食など家族でゆたかな時間を過ごすために使うお金は、浪費でなく投資。そのあたりは分けて考えたいと伝えています。
 
妻もそれは理解してくれているようで「旅行に行くときは、お金が減っていくのを気にしないようにしている。どれだけ減ってもお財布は見ない!」と言っていました。歩み寄ってくれているみたいです(笑)。
 
——夫婦のあいだでお金観に違いがあっても、反発し合うのではなく、それぞれのいいところを取り入れていらっしゃるんですね。見習いたいです。

お金と生活に興味を持ちはじめた長女の変化

——お金の教育を実践されるようになってから、お子さんのお金に対する意識に変化はありましたか?
 
水野:そうですね。長女は最近、家賃や光熱費など、生活にかかっているお金について知りたがるようになりました。
 
——中学生にして、そんな現実的なテーマに興味を持つなんて。
 
水野:長女には「いつか一人暮らしがしたい」という夢があるので、なおさら興味がわくんだと思います。
 
先日、長女と街を歩いていたときに、たまたま単身者用マンションの賃貸情報を見つけました。家賃8万円の物件だったかな。そこで何気なく「一人暮らしだと、だいたいこんな部屋だよ。初任給が18万円だとしたら、どんな生活ができるかな」と話したんです。

すると長女は「一人暮らしってけっこうお金がかかるんだ」と気づいたらしくて。それをきっかけに「そういえば、私のスマホ代って月々いくらかかってるの? 」「水道代や電気代ってどれくらい?」と次々と質問が出てきました(笑)。
 
——まさに「生活力」が育っていると感じさせる質問ですね!
 
水野:そうだったらいいのですが。これからも、彼女たちの成長のペースや興味に合わせて、お金の知識を少しずつ伝えていければいいのかなと思っています。
 
(つづく)

プロフィール:

ライター:森川紗名
1985年 兵庫県生まれ。ライター。4歳の娘を持つ母でもあります。食品会社に10年あまり勤めたのち、育児に専念したく退職。その後、書くことに魅了されフリーランスのライターに転身。現在はウェブ媒体記事の執筆などを担当しています。

取材・執筆:森川紗名
編集:田中裕子
写真:沼尾紗耶(レオス・キャピタルワークス)

※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の動きや結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。

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