年4カ月は「出張中」アナリストのトランクの中身、見せてください/八尾尚志
投資信託「ひふみ」のアナリストにビジネスや世の中の流れを語ってもらう連載、「ひふみのアンテナ」。今回は海外出張前の八尾尚志シニア・アナリストを捕まえて、役立つ出張術を聞いてみました。大きなトランクの中にはビジネスのヒントがいっぱい詰まっていました。
レポーターはレオス・キャピタルワークス マーケティング・広報部の大酒が担当します。
海外は現地での利便性、国内は機動性
――八尾さん、今日はトランクを持っていましたけど、またこれから海外出張ですか?かなり頻繁に出かけているようですけど。
はい、今回は米国に行きます。
レオスは昨年から海外企業の調査を本格化しています。行き先は米国、欧州、中国が多いですね。もちろん国内での出張もしますから、年間4分の1くらいは出張生活になりますね。
――今回は米国出張とのことですが、行くエリアによって荷物は違うのですか。
僕は出張するとき、国内か海外かで重視することが違います。海外出張では、現地でいかに便利に快適に過ごすかを重視します。荷物の量にはこだわらないので、こんなに荷物が多くなっちゃう。一方で国内出張では、軽快さを重視します。機動性ですね。日本はコンビニがあるので、何でも手に入ります。だから荷物は最小限。機内持ち込みをして、現地に着くとすぐに取材先に向かいます。
あと、国内出張する際は気温を必ず調べますね。屋外で観光するわけではなくて、服の準備のためです。僕は汗っかきなので、暑ければスラックスを2本持っていきます。1日あれば乾くので、きれいなスラックスで気持ちよく取材します。ジャケットは、ハンガーにつるしておけばしわが取れる素材のものを着ています。
――服装の選び方もコツがありそうですね。
そうですね、今回はインターネット系企業が集積する西海岸に行くので、カジュアルめです。取材先もTシャツとかで手ぶらでフラッと出てくるので。中西部の場合は製造業が多いので、比較的ちゃんとした格好にします。
その場合、服は空気を圧縮する袋に入れています。中西部の企業はスライド資料や冊子など、たくさん資料をくれます。服を圧縮していれば、資料をたくさん持って帰れますから。
トランクの中の便利グッズの数々
――それにしても重いトランクですね。中身を見せてもらってもいいですか。
かまいませんよ。海外はお店がなかったり、あっても早い時間に閉店したりするので、リスクを最小限にする意味でなんでも持っていきます。荷物を運ぶ瞬間って、自宅から空港までなんですよね。現地ではタクシーやウーバーの移動だし、滞在中はホテルに置いておける。
――便利グッズが多くて面白いですね。
スマートフォンに非接触充電できるバッテリーは重宝しています。取材中でも、コードレスで重ねて置いておけば違和感なく充電できる。
海外ではスマホは生命線です。地図、ウーバー、航空チケットなどなど、すべてスマホの中。昔、米国出張でホテルから遠い取材先に行ったときに、長電話をしてバッテリーが切れかけてすごく焦りました。ウーバーが呼べないのが困りました。その時はたまたま、親切な人に出会って、その人のクルマの中で充電させてもらってウーバーを呼べたんですけど。
あとはコネクター類。コンセントの変換コネクターですね。
米国はそのまま日本のコンセントでも使えるホテルが多いですが、欧州はだいたい変換コネクターが必要ですね。特に、USBポートが付いている変換コネクターが便利です。海外のホテルって、なぜか通電していないコンセントの差込口があったりするんですよ。通電している差込口が少ないとなると、USBポートがあれば1か所の差込口でいろんなガジェットの充電ができるこのコネクターは気に入っていますね。
――ヘッドホンまである(笑)
これはノイズキャンセラーです。飛行機の中の騒音をずっと聞いていると、すごく疲れるんですよ。あとはホテルでハズレの部屋に当たって、夜間にやたらとうるさいときに、装着したまま寝る。一度、レストランの裏手の部屋に泊まった時、ごみ収集車の音がひどくて。質の高い取材をするために眠るのも仕事です。イヤホンタイプはなくすので、ヘッドホンを使っています。
グルメアナリストのおいしいレストランの見つけ方
――ところで、グルメで知られている八尾さんですが、出張中の食事はどうするのですか。
食事のリサーチには手間をかけます。アナリストとしての調査力を生かして(笑)。まずはグーグルマップの周辺情報でレストランを検索。あまり遠くに行きたくないので、距離を優先して並べ替えしたうえで、クチコミを見ます。でも、これだけでは決めません。複数のソースに当たります。イェルプ、トリップアドバイザーも確認しますね。そこまですると、だいたい失敗しない。
あとはオープンテーブルで席を予約。ネットで席を確保できるので便利です。「いい企業を見つける」のも「いいレストランを見つける」のも海外出張の楽しみです。
いいレストランを見つけると、連日行くことも珍しくないです。お店で知らない人に話しかけられて、他愛もない話をするのも楽しいです。マイアミに泊まった時は、中年の男性と「世界の渋滞事情」について議論しました。
――プライベートでの旅行にもノウハウがあるのですか。
それが、プライベートではまったく事前にリサーチしません。現地で行き当たりばったりに調べます。しかも、インターネットで調べるのではなくて、ホテルのコンシェルジュなど、人に聞いて情報を仕入れます。ネット検索すると、思わぬ発見の可能性が狭まってしまいますから。あとは、おいしいレストランの店員に、他のおいしいレストランを尋ねると、だいたい間違いありません。
最近は仕事で海外に行きすぎているので、プライベートでは国内の温泉でただゆっくりするのが好きですね。
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(インタビューを終えて)
レオス・キャピタルワークスのアナリストは6月、「VIPツアー」と称する東南アジア調査出張に出かけました。Vietnam(ベトナム)、Indonesia(インドネシア)、Philippines(フィリピン)の頭文字をとって「VIP」です。
レオスの最高投資責任者(CIO)の藤野が、VIP出張で取材した、とある財閥企業の総帥の話を社内でしていました。最初は5分だけという約束だったのが、1時間近く取材に応じてくれ、実りある調査ができたとのことです。その取材中には、トップ自らが「とっておきのお菓子」をふるまったそうです。「とっておきのお菓子」が日本の洋菓子「ヨックモック」だったことは、先方のお洒落な歓迎の意だったのでしょうか。
運用規模が大きくなるにつれて、世界でもレオスの存在感が少しずつ高まり、海外企業でもトップやCFOクラスが取材に応じてくれるようになったそうです。八尾シニア・アナリストも、気が付けば海外出張に出かけています。世界のいろいろな面白い話をnoteで紹介していければと思っています。(マーケティング・広報部 大酒)
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