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会社で働くのが人である以上、人を見るのが一番。『ひふみ投信』の“顔が見える運用” だからできること

ピースオブケイクでnoteのディレクターをされている平野太一さんによるシリーズ連載です。

「静岡の高校時代の同級生」であるレオス・キャピタルワークスの赤池実咲に「投資信託の仕組み」を聞いてきたのが前回まで。少しずつ腹落ちしてきたようです。

今回は、レオス・キャピタルワークスが運用する「ひふみ投信」の特徴について、赤池がレクチャーしました。

平野さんと赤池の対談形式でお届けします。

「ひふみ投信」の3つの特長

平野:これまでは、投資信託の仕組みや商品選びのポイントについて聞いてきたけど、そろそろレオスが運用している「ひふみ投信」についても教えてもらいたいな、と。つみたてNISAの口座で「ひふみプラス」に投資しようと思ってるから。

赤池:うん、前回、投資信託の手数料のところで、インデックス(パッシブ)型とアクティブ型という分類の話をしたけど、ひふみはアクティブ型だったよね。

アクティブ型…
運用会社やファンドマネージャーが独自の見通しや投資判断に基づいて、ベンチマーク以上の収益を目指すファンドのこと
インデックス型…
日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)など株価や債券の指数(インデックス)に、ファンドの基準価額が連動するような運用を目指すファンドのこと

アクティブ型にはファンドの独自の特色があるということなので、まずはそれを理解してもらうことが大切。

平野:ひふみの特色って、どんなものがあるの?

赤池:大きく分けて、3つあります。1つ目は、投資対象。主に日本にあるこれから成長していく企業に投資をしています。
銘柄の規模や業種、テーマにはこだわっていなくて、上場している企業だったら投資対象。一部、外国の株式も入っているんだけど、基本的には北海道から沖縄まで日本全国の上場企業の中から、これから3年、5年、10年と長期で成長しそうな(株価が上がりそうな)企業を探してきて、投資しています。

平野:インデックスは市場平均の指数を買うのに対して、ひふみは独自の目利き力を生かすということだね。

赤池:そう。2つ目が「守りながらふやす運用」で、日々の株式市場の動きに柔軟に対応して、基準価額の上下のブレを抑えて着実にリターンも目指していくというもの。相反するようだけど、ファンドマネージャーの腕の見せどころでもあるよ。前回も話した「シャープレシオ」という指標が高いほど良い運用ができている、ということ。

シャープレシオ…
取ったリスクに対してどれだけリターンを上げられたかを数値化したもの。数値が高いほど効率的。複数の投資信託を客観的に比較したいときに活用できる。

赤池:そして3つ目は、「顔が見える運用」。私がレオスで一番好きなところなの。
平野くん、自分が「iDeCo」や「つみたてNISA」で買っているインデックスファンド、ファンドマネージャーって誰か知っていますか?

平野:え、知らない……。僕が今投資してるのって、ひふみ以外は、インデックスファンドだしなぁ……。

赤池:そうか、そうだったね。でも運用者が独自に采配しているアクティブファンドの中でも、運用者の顔が見えるファンドって、ほとんどないの。私も銀行員時代によくアクティブファンドを売っていたのだけど、一番売れ筋だった投資信託でさえも、誰が運用しているのかわからなくて。
投資信託って、自分の大事なお金を託す相手なのに、そもそも誰がどういう考えをもって運用しているのかを知らないのって、お客様からしたらすごく不安だろうな、と思ってたよ。

平野: それは確かにそう思う。

赤池:だから私たちは “顔が見える運用”にこだわっているの。ウェブサイトや報告書に運用メンバーのコメントをたくさん載せているし、毎月1回「ひふみアカデミー」っていう運用報告会を開催しているんだけど、そこでは藤野をはじめ運用部のメンバーに直接質問できたりもします。遠方の方でも参加できるように、YouTubeでも配信しているよ。

赤池:他にも、かつての平野くんのような投資未経験者の方向けの入門セミナーや、女性限定の「女子勉強会」、工場見学会や疑似アナリスト体験をしてもらう「ひふみの社会科見学」(レポートはひふみラボnoteでも公開中)など、積極的にお客様と交流の機会を持っているんだけど、それは実は、お客様同士の顔が見える、という意味もあって。

平野:そうか、投資って知り合いがいないと孤独に感じるかも知れないけど、周りに同じように投資している人たちがいることが分かると、仲間意識が生まれる気がするなあ。

赤池:そう、まさに! 以前開催した「女子勉強会」では、後日私に連絡が来て、ワークショップが一緒だった人とご飯にいくことになったんだって。お客様同士で仲良くなるきっかけを作れたこともうれしかったなあ。

足で稼ぐアナリストたち

平野: “顔が見える運用”は、ひふみが始まってからずっと続けていること?

赤池:そう、ずっと。

平野:顔が見えることって良いことだと思うのに、他のところはどうしてやらないんだろう……?

赤池: うーん。投資信託によっては流行やテーマに沿った目新しい商品を販売していくところもあるし、顔出しすると責任取らなくちゃいけないから、嫌がるのかもしれないね。あと、ファンドマネージャーの顔を出すと、優秀な人が他のファンドから引き抜きの対象になりやすいというのも聞いたことがあるな。

平野:それはレオスも同じなんじゃないの?

赤池:うちの場合、ファンドマネージャーは代表の藤野だから、そもそも引き抜こうとしても無理だね(笑)。

平野: そっか。資料では藤野さんの周りに何人か並んでいるけど……?

赤池:彼らはアナリスト。こんな素敵な企業があるよ、ここは伸びそうだよ、っていうのを調べてきて、ファンドマネージャーにその情報を報告する。それで、ファンドマネージャーが運用の方針を決めて、ファンド全体のバランスを見ながら売買の指示を出すの。

平野:調査する人と、運用する人の役割があるということなんだ。

赤池:この資料に「足で稼いだ情報で」とあるんだけど、まさにそれがうちのアナリストの強みかな。
業績の数字は当然ながら分析している一方で、かなりの頻度で会社や工場などの現場に足を運んでいって、話を聞いているの。それは、会社の中で働いて支えているのが「人」である以上、「人が見る」のが一番だと思っているから。

池:あと、アナリストは担当が決まっているのは普通なんだけど、レオスはそれが決まっていなくて。ゆるやかなジャンル分けはあるけど、複数の人が同じ企業を見ることもあります。あと、一部は海外の株式にも投資しているから、海外への出張も多くなったよ。

平野:へえ、アナリストの皆さんの話は、かなり面白そうだな。

赤池:うん、みんなすごく個性的。アナリストたちが足で仕入れてきた新鮮なネタを、先に挙げた「ひふみアカデミー」でお客様に報告していたりします。

ひふみ投信、ひふみプラス、ひふみ年金、何が違うの?

平野:あと、「ひふみ投信」っていくつか種類があるよね。僕がSBI証券のつみたてNISAで投資しようとしているのが「ひふみプラス」で。何が違うのかな?

赤池:簡単に言うと、どこの口座から投資信託を買っていただくかの違いなんです。
「ひふみ投信」は、「直販」と言って、レオス・キャピタルワークスで口座を開いて買うもの。「ひふみプラス」というのは、パートナーさんの地方銀行や證券会社で口座を開いて買うもの。「ひふみ年金」は、iDeCo専用の口座を開いて買うもの。

赤池:手数料(信託報酬)の体系が少し違うんだけど、運用内容が違うかというとそうではなくて、それぞれのルートで入ってきたお金は、マザーファンド(親ファンド)というもっと大きな箱の中にガサッと入れられて、そこから投資をしています。だから成績はどれもほぼ同じ。

赤池:私の所属は「ダイレクト営業部」という部署なんだけど、「ひふみ投信」、つまりレオスで直接口座を開いている(=ダイレクト)お客様の日々の取引管理とか、それに関わる業務がメインです。事務面もやるし、ひふみ投信を持っているお客様の満足度を高めるための営業企画もやったり、セミナーの講師もやったり……。

平野:なるほど、赤池さんの仕事もだいぶわかってきたな。

「投資って素敵だ」と声を大にして言っていた

平野:そういえば、赤池さんがレオスに転職したきっかけは何?

赤池:「投資って素敵なことなんだよ」っていうのを、レオスは声を大にして言っていたからかな。前に銀行に勤めていたとき、投資の素晴らしさを自分では実感していたものの、一方で利益も取るように言われていたから。お客様のためになっていないことなのかもしれないものを売るのは、すごく心苦しかったの。

赤池:私がいた銀行では、投資信託と保険だったら、実は保険を売った方が手数料が高かったんです。例えば「お子さんが生まれた」という人には学資保険を売っていたんだけど、学資保険って実は今だと利率もそんなに高くないし……。お客様は「投資」という選択肢を知らないだけで、その選択肢があったなら、どんなにいいかと思ってた。

平野:赤池さんの感じてる投資の素晴らしさって、どんなところなの?

赤池:ひふみの投資する企業は主に日本の成長企業。で、これから成長する企業に投資をして応援することって、巡り巡って私たち日本の未来に貢献することになると思うんだよね。その循環に多くの人が加われるようになったらいいのに、って。日本に「投資文化」を広めたい、っていうのがレオスの根っこの考え方なんだけど、私はそこに一番、共感しているかな。それに、何度も言っているけど、顔が見える運用って、いいなあって。

平野:なんだか、楽しそうに働いていていいね。

赤池:それに、この企画にも共感してる! 平野くんのような全く投資を知らなかった人が興味を持って、投資を始められたということを多くの人に知ってほしいな。同級生にも自分の仕事を知ってもらうチャンスになったし。

平野:ね、自分の周りでも、連載を読んで投資に興味持った、ってよく声かけられる。今度、赤池さんが講師の勉強会に参加してみようかなあ。

赤池: うん、ぜひ!

セミナーに参加してみる

ということで、後日、赤池さんが講師を勤めるセミナーに参加してみた。

土曜日の午後、参加したのは初心者向けの「人生100年時代 いまからはじめる資産形成」というセミナーだ。参加者は50名ほど。年代は幅広かったが、20代後半くらいの若い人も意外と来ている。あとで聞くと、僕のことを知っていた人も来ていたらしい。同世代の人もひふみに興味を持っているのだ。

これまで教えてもらったように、セミナー前半ではどうして投資が必要なのか、投資信託の仕組みについての話に、たっぷり時間が取られていた。赤池さんも「投資ってどういうところが素晴らしいのか、そこにまずは腹落ちをしてほしい」と話していたが、そういう意図なのだろう。

赤池さんは、「投資」というものに対してできるだけハードルを上げないように、むずかしい言葉を使わずに説明していたのが印象的だった。メモ取っている人が多かったし、自分も1から聞いたことで理解が進んだ。

たまに周りを見渡してみたが、皆さんかなり熱心に話を聞いているよう。こういうセミナーって眠たくなるのに、全然眠くならなかった。

真剣に聞いている平野さん

中でも自分が興味を持ったのは、セミナー後半にあった、レオスが実際にどういう観点で企業を探し、どういう企業に投資をしているのか、ということだ。
「長期的には株価と利益はほぼ一致する」という考えから、着実に長期的に利益を伸ばしていける会社を選んでいるらしい。

事例として紹介されていたのが「朝日印刷」という会社。富山県に医薬品のパッケージの印刷に特化する業界トップ企業があるなんて、知らなかった。普段生活しているだけでは見過ごしてしまうような素晴らしい企業があるのだ。ひふみを通じてこういう企業にお金が投資されていくのか、とわかるとリアリティがあって面白くなる。

【次回】投資信託の運用者はどんな人なんだろう

赤池さんから話を聞き、さらにそれをセミナーでも聞いてみたことで、投資信託がどのように成り立っているのか、全体像がだんだんと見えてきた気がしている。

赤池さんも「顔が見える」ことの意味を繰り返し言っていたけれど、やはり、自分が投資しているお金を誰が運用しているのかがわかると、納得感が違うし、学びも大きい。

さらに今、自分が気になっているのは、実際にアナリストさんたちが普段どういう仕事をしているのか、どういう視点で企業を見ているのか、ということ。次回以降、投資信託の「中の人」に話を聞いていってみたいと思う。

プロフィール:

ライター:平野太一
1991年静岡県生まれ。関西大学経済学部卒業。2013年10月よりWantedly, Inc.に入社。CSを経て、募集要項の作成・取材・ウェブメディア「WANTEDLY JOURNAL」の執筆・撮影などを担当。2016年1月よりBAKE Inc.に入社。ウェブマガジン「CAKE.TOKYO」の編集・執筆・撮影を担当。BAKE CHEESE TARTのSNS・LINE@運用、リーフレットの撮影などを担当中。2018年10月より、Piece of cake, Inc.にnoteのディレクターとして入社。クリエイターガイドやイベント企画、クリエイターサポートなど、全方位で担当中。
Twitter : https://twitter.com/yriica
note : https://note.mu/yriica

※当記事のコメントは、個人の見解であり、市場動向や個別銘柄の将来の結果をお約束するものではありません。ならびに、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。

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