佐々木さん前編

取材では「変化」に注目!エクセル活用メモ術/佐々木 靖人(前編)

投資信託「ひふみ」のアナリストに、ビジネスや世の中の流れを語ってもらう連載、「ひふみのアンテナ」。今回はひふみ投信の屋台骨ともいえるシニア・アナリスト、佐々木靖人に語ってもらいます。企業調査力は運用責任者の藤野英人も一目置いているようです。

前編では、世の中を先読みするため、どんなアンテナを立てているのか、探りたいと思います。

インタビューはマーケティング・広報部の大酒が担当します。

佐々木 靖人(ささき やすと)
レオス・キャピタルワークス 運用部 シニア・アナリスト
2006年、California State University, Bakersfield校卒業後。2009年、レオス・キャピタルワークス入社。 2013年、ダーウィン・キャピタル・パートナーズ入社。運用・調査業務に従事。2016年、レオス・キャピタルワークス再入社。

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ボトルネックはどこにあるのか

――佐々木さんの調査スタイルは、どちらかというと世の中のトレンドを先読みして銘柄を選ぶ印象があります。どうやってアンテナを立てているのでしょうか?

私の場合は「サプライチェーン」を考えるようにしています。ひとつの商品ができあがるには、その原材料・部品の調達までの長い供給チェーンがあるわけですが、どこかで在庫がたまっていたり、不足していたりします。ボトルネックは今どこにあるのか。そのボトルネックは誰が解消するのか、という観点が大切です。ボトルネック解消のために要する生産量が多いほど、その材料を生産する会社はもうかるわけですね。
少し前になりますが、行ってよかった工場見学がありました。ある部品メーカーの新工場で、その会社としてはリスクを取った大きな設備投資でした。工場見学をしているうちに、そこで生産する部品を作る技術を持つ会社が他にあまりないことがわかったのですが、こんな大きな工場を建てても一体どこで部品を売るんだろうと疑問に思っていました。それからしばらくして、部品の需要の追い風になるようなニュースが出ました。まさに、この新工場がボトルネック解消の現場だったわけです。


――工場見学をすることで、頭の中にたくさんの情報が残り、いろんなことがつながっていくんですね。

取材や工場見学で手に入れた情報をもとに、サプライチェーンをつなぐ他の会社にも取材します。「あの会社が増産しているのだから、次は御社の受注が増えるのではないか」といった具合に質問するわけです。具体的な答えが返ってくることはないですが、大切なことは、何度も取材するうちに、その答えがどう「変化」していくかです。変化を追うことで、サプライチェーン上で起きているボトルネックの発生点の移動がわかることが多いと思います。

エクセルメモで変化をとらえる

――発言を記憶しているのですか?

記憶するようにしています。でも、プライベートでは記録しないので、うっかり予定を忘れてしまうことが多いですね(笑)。

ただ会議室で話を聞くだけでなく、先ほども言ったように工場などの現場を見て回ることも大切にしています。自分の目と耳で直接体験したことは記憶として粘るんです。だから、何かのきっかけでその記憶を引き出しやすくなります。

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――メモの取り方で工夫をしているところはありますか?

自分の場合は、取材しながらエクセルでメモをとっています。会社ごとにシートを変え、1回取材したら1つのセルに書き込みます。左から右に見ると、時系列が新しくなっていき、発言の変化がわかるんですね。エクセルは検索も早いので、取材しながら検索して過去の発言を確認します。例えばアメリカ事業の話題が出たら、「アメリカ」と検索してハイライトされた過去の取材内容を読み、それを元にさらに突っ込んだ質問をする、といった具合ですね。忙しくて取材準備が十分にできなくても、最低限、取材の直前や取材中にエクセルシートを読めば、有意義な取材ができます。

エクセルのメモはシンプルながらもなかなか便利で、パッと見れば取材の濃さが視覚的にわかるんですよ。文字がたくさん書き込まれていて黒っぽかったら密度の濃い中身のある取材。スカスカしていたら、そんなに重要ではない、と。

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気になったらクラウド保存

――アナリストによって、メモの取り方も違いそうですね。

そうですね、人によってタイプが違うと思います。

昔、コンサルティング会社でジュニアをやっていた時、顧客からヒアリングする席では言い間違いも含めて正確にノートを取れと指導されました。そういうスタイルの人もいます。ですが私の場合、ノートにメモを取っていては、その時の話の順番に記録が残ることになり、後で見ると変化を追いづらかったのです。それで、今のようにエクセルにメモをするスタイルになりました。
それから、気になったことは何でもクラウドに落として、時間ができたときに読みます。ニュース、開示資料、ツイッター、証券会社のレポート。プライベートでも気が付けばスマホを見て何かを読んでいるので、嫁に怒られています。

――後半では財務諸表の利用の仕方なども聞いてみたいと思います。

    後編はこちら↓

※当記事のコメントは、個人の見解であり、市場動向や個別銘柄の将来の結果をお約束するものではありません。ならびに、当社運用ファンドへの組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。