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私たちは、もっと「お金」の話がしたいー投資の話をする前に知りたいことー

お金のことを知らずに良い投資はできない、そんな想いから1冊の本が生まれました。今回は書籍『投資家と考える10歳からのお金の話』を紹介するとともに、なぜいまお金の教育が必要なのかを全3回にわたりレオスメンバーと考えてみます。

お金とは何かを考えようとすると、いったいどこから考えてよいかわからないほど、歴史も長く、国によって地域によって、さらに個人によっても様々な考えがあり、簡単には答えが出ないことが想像できます。

そうした中でも今日は、お金ってけっこうポジティブな可能性を持っているものだよね、という話をしたいと思います。
(聞き手:レオス・キャピタルワークス株式会社マーケティング部/長尾)


投資についての課題意識

2024年、新NISAが始まり投資に興味を持つ人がふえてきている中、「金融教育」にも注目が集まっているようです。
一般的に金融教育というと、株式や保険などの金融商品について学んだり、いわゆる「投資詐欺」に遭わないための知識を得たりといった内容が多いように思います。

確かに、株取引の仕組みを学んだり、自分のお金を守るため危険なものに手を出さないよう知識を得たりすることはとても大切です。
私たちの会社は投資商品を運用、販売していますから、「投資って楽しいですよ」「投資始めましょう」と常日頃お話しているのも事実です。

でも、金融教育や投資の勉強が「どうやって儲けるか」「損しないか」というところからスタートするのだとしたら、それは少し極端なのではないかと考えています。
儲けるのがダメというわけではありません。ただ、損得に始終する考え方が身に沁みついてしまうと、かえって投資が楽しくなくなってしまうのではないか、苦しいものになってしまうのではないかと思うのです。

まずは「お金」のことを知ってみようという提案

そこで提案したいのが、「お金」について考えてみることです。

この度、『投資家と考える10歳からのお金の話』という書籍を出版しました。

社内でひふみ金融経済教育ラボというチームを立ち上げ、約2年の試行錯誤を経てようやく完成したこの本は、投資についてのノウハウを書いたものではありません。そもそも、投資についての話題にもほとんど触れていません。広く「お金」について考えるテーマになっています。

お金はどういうもの?
どうやって使うといい?
お金を稼ぐってどういうこと?

そんなテーマを扱っていて、10歳のお子さんでも楽しく読める本になっています。
一見するとテーマが広すぎて掴みづらい内容かもしれません。でもそれが「お金」の姿でもあると思います。これが正解という考え方を導くのは難しい中で、どうやってお金と付き合っていけばよいのか。その練習を子どもの頃からやってみましょう、お金とのよい付き合い方を学んでいきましょうというのが、この本で伝えたいことです。
今回のシリーズでは、ひふみ金融経済教育ラボのメンバーに、それぞれどんなことを考えて執筆に携わったのか、また「お金」についての価値観はどのようなものなのかをインタビューし、3回にわたってお伝えします。

ひふみ金融経済教育ラボのメンバーに聞く、お金の話

―ひふみ金融経済教育ラボには実際に金融経済教育に関するイベントを企画しているメンバーもいますね。このプロジェクトが立ち上がった際に皆さんが感じていた金融教育の課題はありましたか?
 
仲岡:最近、小学生が93万円の詐欺に遭う事件があって驚きました。小さいころからお金の教育は必要だと思います。おっしゃっていただいたように、私は金融教育を企画する上で学校の先生と話をする機会があるのですが、お金について教えたいという意見を聞きます。一方で金融機関が提供するパッケージには、株の売買の話で「勝った・負けた」というゲーム感覚のものが多い様子です。それはある面で大切な知識だと思いますが、それだけでいいのかなという問題意識を持っています。子どもと一緒にお金について考えるきっかけになるような、投資の勝ち負けに始終しない本があったらいいなと思っていました。

仲岡はセミナーで講師を務めるなど、積極的に金融教育に取り組んでいる。

―仲岡さんにとって、お金の価値観が変化したタイミングはありましたか。
 
仲岡:子どもの頃は、あんまりお金のことやその価値を考えていなかったんだと思います。小学校6年生のときに、親に「うちの家には10万円あるの?」と質問したらしいです。おそらく学校でそういう話になったんだと思います。そんなことを聞くなんて、この子の将来は大丈夫なんだろうかと親には心配されました。
 
―10万円がどういう金額か、子どもの感覚ではわからなかったんですね。
 
仲岡:お金に対する意識が低いまま、大学卒業後は銀行に入りました。銀行といえば将来的に安泰なのかなという印象を漠然と持っていました。ところが、当時業績が悪くなって…危機的な状況になり。入社してから2年間、なんとボーナスが8割カットになり、想定していた満額でもらえなかったんです。
 
―8割カット!そんなことがあるんですね。
 
仲岡:初めてもらったボーナスは手取り金額が1万円とかで、ビックリしたんですよ。私は実家で暮らしていたので家賃などはあまり気にしなくてよかったのですが、家族を養っている上司たちは大変だったんじゃないかと思います。
一般的に安泰と思われている銀行でもこんな状態でしたから、人生って自分が思っていた通りにいかないし、お金のことは「どうしようもない」と厳しさを知りました。どこに行っても稼げる人にならないと、と気が付いたんです。それならば、自分でスキルを上げて、外の(銀行以外の)世界に積極的に出ていかなければと。
 
予期せぬことが起きるのが人生だと学び、今ではセミナーなどを通して「経済やマーケットのことは何が起きるか分からないから、自分でスキルを身に付けましょう、力を付けましょう」という話をしています。その1万円事件がなければ、今も銀行にいたかもしれませんね。

なぜ「10歳」なのか

―この本のタイトルには「10歳からの」という言葉がついています。それには何か理由があるんでしょうか?

千葉:たとえば小学校1年生だと、お金についてまだ分からない部分が大きそうですが、小学校中学年くらいになるとある程度お小遣いも自分で使って「お金」についての実感がわき、お金観もよりリアルになってくるのではと思います。なんとなく世の中のことも理解し始めて、かつ(この本の内容は)まだ知らないくらいではないかとイメージしました。

経営企画部の千葉は、社内で編集担当として書籍の制作に携わった。

千葉:それから、10歳といってもいろんな子がいますよね。この本を手に取るのはどんなお子さんなんだろうと考えたときに、学校から帰ってすぐに遊びに行くような子をイメージしました。進学のために猛勉強していたり、既に株の取引をやっているような元々勉強が好きな子たちもいると思うのですが、難しい本を読むのが好きではない「普通の子」たちにも、おもしろい読み物として楽しんでもらいたいという気持ちがあります。だから「株の仕組とは…」といった勉強のような話にはしていません。子どもと一緒に考えたいという姿勢を大切にして作った本なので、大人の方もぜひ一緒に読んでもらえると嬉しいです。

山崎:私の娘は9歳になったのですが、合理的に育てすぎたせいか将来は「お金持ちになりたい」と言います。そんな答え、ぜんぜん面白くないんですが…。お金のことを知ってほしいと思って、買い物をするときに私があれこれ説明したり聞いたりしていたら、「お父さんからいろいろ言われないくらい何でも買えるようお金持ちになりたい」ということらしいです。

経営企画部の山崎は、娘さんとの「お金」トークについて話してくれた。

山崎:この本には、「お金を使うとどうなるか」を載せました。使ったお金がどこに行って、どんな影響を与えるのかが書いてあります。お金は使ったら手元からはなくなってしまいますが、次の人に渡り社会を循環していきます。商品やサービスを買うことを通して、私たちは社会に何らかの影響を与えることができる。それを理解し、良いお金の使い方をしてほしいという気持ちで娘には話をしてきたつもりなのですが…学校の先生たちも悩みますよね、子育てとか上手くいかないですから(笑)

お金を使うと別の資産にかわる?

山崎:私は大学で商学部に入り、簿記の勉強をしたときに「負債」という項目があることに気が付いたんです。「お金って借りていいんだ」ということを、そこで知りました。企業もお金を借りて事業をしています。
それまではお金を借りたらダメだと思っていましたから、お金に対する意識が大きく変化したタイミングでした。企業がお金を借りて事業をしているんだったら、個人もお金を借りて問題ないと思うようになって…それから自分でもお金を借りるようになりました。
当時は会計士を目指していたので、借りたお金はその学費にしました。両親からも「高校生までお金をかけたから大学生からは自立しなさい」と言われていたので。

山崎:その後、会計士になりたい気持ちがなくなったので企業に就職しましたが、勉強したことは今でも役に立っています。「お金は借りられる」「お金を使ったら資産にかわる」ということが、自分のお金観の土台になっているように思います。お金って使ったらなくなるイメージが大きいかもしれませんが、使った先の自分や周りに効果を及ぼすことができます。

そのため、資産として残るようなものにお金を使おうと考えるようになりました。例えばですが、英語の勉強とか自己投資的なものです。企業はバランスシートを使って資産や負債を管理していますが、それを自分にも当てはめてみたことになります。複式簿記の考え方は大学生の私にとって「大発見」でした。

―レオスのメンバーも様々な経験を経て、お金との付き合い方を学んできたということがわかりました!お金を使うとどこに行くのか・どうなるのかと想像し、一歩立ち止まってお金と向き合う時間をつくることで、自分にとってより良い選択肢を見つけることができそうですね。

次回は働くこととお金の関係について探求してみたいと思います!ぜひご覧ください。

金融教育プログラムに関するお問い合わせ・ご依頼は広報IR部までご連絡ください。

email:pr@rheos.jp

山崎がお金について子どもとどうコミュニケーションしているかは、こちらの記事をご覧ください。