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時間を味方につけて「投資」する姿を見せる。レオス湯浅光裕が子どもに伝えたいこと【後編】

「これからのお金」「これからの投資」を一緒に考える研究所、「ひふみラボ」。大好評だった連載「子どもに伝えたい、お金のこと」が再始動しました! 
 
「お金についての知識に自信がなく、子どもに教えられることがない」
「子どもたちが生きる時代に、自分の経験が役に立つのか自信がない」
 
そんな多くのお母さんお父さんと同じ不安を抱えるライターの森川さんが、個性豊かなレオス・キャピタルワークスのメンバーに「お金の教育」についてあれこれ疑問をぶつけていきます。
 
今回のゲストは、レオス・キャピタルワークス副社長の湯浅光裕。「夕ごはんはなるべく家族3人揃って食べる」と語る湯浅が子どもに伝えていること、そして夫婦のコミュニケーションで心がけていることとは? 
 
そしてインタビューの最後には、息子さんの信臣さんから「子どもから見たお金の教育」についてもコメントが! ぜひお読みください。

「時間を味方につける」工夫と努力が必要


レオス・キャピタルワークス代表取締役副社長・湯浅光裕。妻と、高校3年生の信臣さんの3人暮らし。信臣さんは海外留学中

——前編では、「生きることの大切さ」や「お金とは何か」ということを、息子さんの信臣さんに伝えていると伺いました。ほかに意識してお話しされていることはありますか?
 
湯浅:「時間を味方につけなさい」とはよく言い聞かせています。どの時代でも、どの国でも変わらないもののひとつが「時間」なんですよ。日本でもブラジルでも南極でも、通貨にちがいはあっても1分は1分でしょう? 宇宙で生きても、地球で生きても、80年生きるなら80年の時間が流れる。
 
だから、「誰もが等しく持つ時間を価値と捉え、どう使うかで、その人の人生は変わるんだよ」と話していますね。
 
——ああ、それはまさに「投資」の話ですね。何をどう投じるか次第で、得られる価値が増減するという。

連載担当のライター、森川さん。4歳の娘さんへの「お金の教育」を考えるべく、鋭意インプット中。

湯浅:その通りです。「投資」とは、お金だけではなく、時間や情熱などのエネルギーを投じて未来からリターンを得ることを指す言葉です。時間の投じ方ひとつで、その人の未来が豊かなものにも、貧しいものにもなるわけです。どうせだったら、時間を敵にまわすのではなく、味方につけて楽しく生きたいですよね。
 
——「時間を味方にする」って、具体的にどうすればいいのでしょうか?
 
湯浅:たとえば、学校を卒業して社会人になったら、誰もが労働にかなりの時間を投じるようになります。働かないと「価値の交換手段」である貨幣が得られないので、労働からは逃れられません。そこでもし、働くことが楽しくなかったらどうなるか。時間が過ぎるのが遅くて、ただただつらいばかりですよね。これが「時間が敵になる」ということです。
 
一方で、同じ労働でも、楽しく過ごす工夫をすれば「時間を味方にする」ことができます。充実した日々を送ることができるし、ディズニーランドで過ごす一日みたいにあっという間に時間が過ぎていくんです。
 
——自分の工夫ひとつで、仕事の捉え方も、人生も変わるんですね。
 
湯浅:そうです、そうです。自分では何も考えず、受け身の姿勢のまま生きてきて、いざ死ぬ瞬間がやってきたときに、「ああ、全然楽しくなかったな。やりたいことを全部やっておけばよかった」と後悔して死ぬのか。それとも、自分なりに工夫や努力を重ねながら生きて「すっごく楽しかったな、充実した人生だったな」と満足して死んでいくのか。
 
きっと誰もが、後者のような生き方をしたいですよね。「だったらそういう風に生きましょうよ」という話を、子どもや社員たちにはしています。

仕事や人生を楽しむ親の姿を見せる意味

——「楽しく仕事をすることで、人生を豊かに生きる」という話は、信臣さんにどのように伝えていらっしゃるんですか?

レオスの創業メンバー3人。中華料理屋さんに集まっては起業計画を練っていたそう。湯浅さんは当時まだ30代後半!

湯浅:言葉で伝えるだけでなく、まず親である自分がそういう風に生きないと伝わらないですよね。仕事していて楽しそうな姿とか、イキイキと生きている姿を子どもに見せてやるのも大切な教育だと思います。
 
——なるほど。でも、働いていると、しんどいこともたくさんありますよね。ネガティブな姿を見せることもありますか?
 
湯浅:そりゃあ、妻も僕も、すんなり毎日を楽しく生きられるわけではないです(笑)。でも、その中でもポジティブでいようと意識することで、実際にそう過ごせるようになるんですよね。
 
たとえば、妻は仕事で大変なことがあったときには僕や息子にその日の出来事を話してくれます。全部話し終えると「あー、スッキリした!」とポジティブな言葉で締める。それで彼女はリラックスできて、1日を楽しく終われるんだそうです。これが彼女の「楽しく生きる工夫」で、子どもはその姿を見ています。
 
「楽しく生きる」は、誰かに導いてもらうものではないんです。自分で考えることだし、自分で行動することです。息子も、「楽しく生きるには自分で努力しなくちゃいけないんだ」ということぐらいは、きっと分かっていると思います。ぼーっとしていても楽しいことはやってこないぞ、と。

子どもに伝えたいことは100万回言う


——お話を伺っていると、お子さんへの「伝え方」がすごくお上手だなと感じます。なにかコツがあるんですか? 


湯浅:なにより、普段から会話量が多いんですよね。現在は子どもが留学中で、家族全員が揃う機会は限られているんですが、彼が帰国している期間はできるだけ一緒に夕食をとるようにしています。もともと留学前もそうでしたしね。その時間は、家族でニュースを見ながら、その話題についてディスカッションするのが我が家の日常です。
 
家族3人が揃うと「この場でしか言えない」みたいな、歯に衣着せぬホンネの話がたくさん出てきます。ちょっと口が悪いくらい(笑)。でも、日頃からお互いにリラックスした状態で「大人だから」「子どもだから」と関係なく意見を交換していることは、いろいろな考えを学び合える場になっているんじゃないかと思います。
 
あとは、「人は、一度聞いただけでは物事を理解できない」という前提に立って、何度でも繰り返し伝えることも大事にしていますね。小学校、中学校、高校と、同じ話をコツコツと何度でもする。彼が大人になったときに、なんらかの理解に繋がればいいなという感覚です。
 
——子どもに何かを伝えるって、根気が必要なんですねえ。
 
湯浅:子どもに限らず、人間ってそんなもんですよ。だから、同じことを100万回話さないといけないんです。
 
——100万回伝えてこられた今、信臣さんの理解度は深まっていると感じますか? たとえば、「投資」の話についてはどうでしょう。
 
湯浅:「投資」という言葉の意味や定義について、彼はまだ全てをわかっているわけではないと思います。けれど、少しずつ理解が深まっているな、というエピソードがあって。
 
1年ぐらい前だったかな。彼が妻に向かって「パパとママってさ、僕に使うお金は投資だっていつも言うけれど、投資ってリターンを期待してやるものなんでしょう?」と心配そうに訊いてきたらしいんです。
 
——ああ、投資をしてくれたご両親のために「リターンを生み出さないと」と心配になったんですね!
 
湯浅:そうそう。「投資とはリターンを期待するもの」とわかった瞬間、不安になったそうなんですね(笑)。そんな彼に対して、妻は「あなたが生きていること自体が、私たちにとっての大きなリターン。だから、それ以上のことはなにも期待していないんだよ」と言ったらしくて。彼は「ああ、よかった」と安堵したそうです。

——なんだか微笑ましいエピソードです(笑)。
 
湯浅:うん、かわいいですよね(笑)。つまり、子どもは、わかっているようで、わかっていない。でも、頭のなかには何かしら残っている。人間は生きて経験を重ねていくなかで、記憶の断片が徐々に繋がって、あるとき、理解にたどり着くものだと思います。
 
子育ては投資と同じで、待つことが大事です。日常の会話にしろ、お小遣いにしろ、親としてやってあげたいと思うことを焦らずコツコツ続けていけば、いつか「結果」が出るのではないでしょうか。

子育ての前に、夫婦の対話を

——それにしても、お母様も信臣さんの質問にぱっと答えられたということは、ご夫婦で日頃からよく子育てについてお話しされているんだなと感じました。
 
湯浅:妻とはきちんと話し合いの場をつくって、じっくり会話を重ねていますよ。話す内容は子育てに限らず、夫婦二人に関する事柄など、本当にいろいろです。パートナー同士がお互いの考えを深く理解し合って、向かう方向を共有することはすごく大事ですからね。子どもにも、「パートナーとはよく話すことが重要なんだよ」と伝えているぐらいです(笑)。
 
——子育てだけでなく家族で楽しい時間を過ごすためにも、パートナーとの粘り強いコミュニケーションは不可欠なんですね。夫と足並みを揃えて子育てに向き合えるよう、対話を大事にしていきたいと思います!

息子・信臣さんからのコメント

今回、留学先のスイスより夏休みで帰国していた湯浅副社長の息子さん(高校3年生)に直接お話を伺うことができました! 湯浅さんの「お金の教育」、なにより「生き方」のメッセージを、子ども本人はどのように受けとっているのでしょうか?

「時間を味方につけなさい」という言葉は、本当に小さなころから言われ続けてきました。「投資」って時間をかけないと結果が出ないものじゃないですか。それはお金の投資じゃなくても、時間の投資でも同じことが言える。だから「できることは早めにやったほうがいい」という意味で言ってくれているのかなと解釈しています。
 
今しかできないことは、とりあえずやってみる。失敗してもいいから、挑戦してみる。そういう姿勢が大切だと教えてもらいました。
 
父と母の仕事については、僕から積極的に訊くことはあまりありません。でも、二人ともが、楽しく仕事をしているのは伝わってきます。とくに母は、仕事から帰ってきたら「こんな仕事が終わったんだよ」と笑顔で勢いよく話してくれる。言葉では「大変だったんだよ」と言うんですけど、表情はニッコニコの笑顔なんです。
 
父は、母ほど仕事の話をしないんですが、なんて言うんでしょう……家で過ごす姿や言葉の端々から「お金のために仕事をしていない」感じが伝わってくるんですよね。きっと一緒に仕事をしている方々のことが好きなんだと思います。
 
両親の姿を見ていると、「好きなこと」を仕事にできたら、一時的に大変なことがあっても、きっとそれを上回る楽しみがあるんだろうなと感じます。僕は今高校3年生で、進路を考えている最中なんですが、どんな仕事をしたいかが、まだわからないんですよね。
 
ただ、「両親のように好きなことを仕事にできたらいいな」という漠然とした思いがあります。将来に向けて若干の不安はありますが、だからこそ、これからもっとたくさんの経験をして、自分の好きなことを探していきたいと思います。

プロフィール:

ライター:森川紗名
1985年 兵庫県生まれ。ライター。4歳の娘を持つ母でもあります。食品会社に10年あまり勤めたのち、育児に専念したく退職。その後、書くことに魅了されフリーランスのライターに転身。現在はウェブ媒体記事の執筆などを担当しています。

取材・執筆:森川紗名
編集:田中裕子

※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の動きや結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。

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