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普段の会話で、お金への親近感と“幸せに生きる力”を育てていく——レオス数原が子どもに伝えたいお金のこと【前編】

「これからのお金」「これからの投資」を一緒に考える“研究所”、ひふみラボ。以前大好評だった連載「子どもに伝えたい、お金のこと」が再始動! シーズン2の聞き手は、自身も一児(4歳)の母であるライターの森川紗名さんです。

「お金への知識が乏しく、子どもに教えられることがない」「子どもたちが生きる時代に、自分の知識が役に立つのか自信がない」

多くのお母さんお父さんと同じように不安を抱える森川さんが、レオス・キャピタルワークスのメンバーに「お金の教育」についてあれこれ疑問をぶつけていきます。

 今回のゲストは、経営企画&広報・IR室の数原(すはら)靖子です。中学1年生の息子さんが小学生の時に投資信託の口座を開いている(!)という数原。普段からどのような金融教育をしているのでしょうか。


日常の会話で実践できる「お金の教育」とは

レオスの広報などを担当する数原。中学1年生の息子と暮らしています。

——「もっと知る・もっと学ぶ ひふみラボで、数原さんをはじめとしたレオスの皆さんが「子どものお金の教育」について座談会を開かれていたのを拝見しました。各ご家庭が、それぞれの考え方で「お金の教育」と向き合っていらっしゃったのがとても印象に残っています。
 
一方、私はお金についてはまるっきり素人で、4歳の娘にお金のことをきちんと教えていけるのか不安に思っています。何から学んでいいのかわからないのですが……?

数原:私たちが子どもの頃は、学校でお金の教育を受けることはほとんどなかったですし、不安を感じて当然だと思います。それに、「お金の教育」と聞くとどうしても「正しい情報を伝えなければ」と肩に力が入りがちです。でも、あまり構えず、日々の会話のなかでお金について話していくのがいいのではないでしょうか。
 
というのも私自身、家族の影響で幼いころから投資に親近感を持って育ってきたんですね。

——子どもが、投資に親近感を……? どういうことでしょうか?

連載担当のライター、森川さん。4歳の娘さんへのお金の教育は、「現状ゼロ」。

数原:私の祖父は、銘柄の分析をして株を買うのが大好きな人でした。楽しそうに新聞を読む姿は幼いころから見ていましたし、祖父が105歳で他界したあと家の整理をしていると、細かいマス目に日付と株価がびっしり書かれた方眼紙がたくさん出てきたんです。それを見て、「ああ、おじいちゃんは本当に投資が好きだったんだな」と実感しましたね。
 
そして私の父も、祖父の影響を受けてか、数字にとても強く、様々な企業に投資をしていました。子どものころ、父と話していると「会社を応援する」という言葉がよく出てくるんです。「投資した会社が、そのお金を使ってもっといい商品やサービスを作ってくれたら、日本はもっと良くなる」とも言っていました。
 
日頃から父の言葉をよく聞いていたので、中学生、高校生になる頃には「投資って素敵なものだ」と思っていましたし、「投資がないと世の中って成り立たないんだな」とも理解していました。

郵送されてきた高祖父名義の株券。明治32年のもの。

——お父様やおじい様から、自然と「投資やお金の教育」を受けられていたんですね。

数原:そうですね。母親になった今、子育てで大事にしているのは、祖父が見せてくれたような投資に対するポジティブな姿勢、父が話してくれたようなお金に関する日常会話です。「なんでそれを買いたいと思ったの?」「どうしてニュースでこんなにも株価のことを報道しているんだと思う?」などの何気ない問いかけを重ねることで、子どもにお金や投資について考えるクセがついたらいいなと思っています。

リアルな体験・実感が、たしかな学びにつながってゆく

——日常会話のなかでお金の教育をする……。お金の知識に自信のない私には少々ハードルが高い気がします。

数原:そんなに気負わなくていいんですよ。 お金の教育というと、やれ金利だ、やれ株価だと難しく感じるかもしれません。けれど、自分の身の回りのことに引き寄せて考えると伝えやすいし、子どももよく分かってくれるんですよね。子どもも一人の消費者として社会に参加しているので、まずはお金を使うことに対して興味を持ってもらうのがいいのかなと。

たとえば私の場合、保育園の帰り道に子どもとスーパーに行ったときに「きゅうりの値段は冬に高くなって、夏は安くなるんだよ。どうしてだと思う?」と話したりしました。市場に出回る野菜の量が少ないときは値上がりするし、旬を迎えてたくさん採れるようになれば値下がりする。そんな些細なことでもちゃんと伝えると、子どもは価格の変動を意識できるようになるんです。

——なるほど! 目に見える身近なものだと、子どもも興味を持ってくれるんですね。

数原:そうなんです。身の回りの話をすると「ああ、なるほどねえ」って納得してくれます。それでいくと、最近は電子決済取引が増えて、お金を使うことに実感が伴わない場面が多いのがむずかしいところですね。特にゲームの課金との付き合い方は、小学生以上の子どもを持つ多くの親御さんが悩んでいるんじゃないかな。

——ゲームの課金ですか……! 私たちが子どものころにはなかった問題ですね。 数原さんはどうやって対応されているんですか?

数原:我が家は小学4年生の頃、テレビCMもやっている人気の猫キャラゲームに課金したいと言い出しました。お兄ちゃんがいる友だちが課金しているのを見て、うらやましくなったんでしょうね。内容を聞いてみると、アイテムのパック売りで、3千円、5千円、1万円。予想していた金額よりゼロが1個多い!(笑) 子どもは金額の大きさを掴めていないようだったので、納得いくまで話し合いをしました。

——親が決めるのではなく、話し合う。どんな話し合いをしたんでしょうか?

数原:まず、日ごろのお小遣いの金額と紐づけながら話をしました。当時、うちのお小遣いは定額制ではありませんでした。お風呂掃除、洗濯物たたみ、掃除機がけ、玄関の掃除……それぞれのお手伝いに50円や30円と価格が決まっていて、お手伝いした分だけ報酬を得られるルールです。基本料金はないスタイルですね(笑)。
 
そこで「これはね、いい? 30円の洗濯物たたみや20円のお風呂掃除を、何百回もやらないと買えないものなんだよ」と実感のわく数字を使って説明すると「ああ、高いね」と納得してくれました。他にも、友達がやっているかどうかは買う理由にならないこと。そして、他の欲しいものや好きなものと比べたうえで、納得して買いたいと思えるかどうかが大事だと伝えて。

彼によく考えてもらった結果、その時は3千円のパッケージを買うことに決めました。あとは買いっぱなしにするのではなく、買って体験したあとに「やってみてどうだった? どんな風に楽しかった?」と訊いて、振り返る時間もつくりましたね。

——実感のわく例と結び付けて考えて、納得して、体験して、買ってよかったかどうかを振り返る……。まさにお金を使うスキルが身につく体験ですね。

数原:いずれ彼が大人になったときに、ひとりで判断して生きていくための練習台になろうと思ってやっています。ただ欲に任せて衝動的にお金を使うのではなく、買うものに対して、自分の心がそこにあるのか、本当に使い切る覚悟があるのかを考えられる人になってほしいですね。

「なぜだろう」の好奇心と考えるクセが、子どもの人生の糧になる

——数原さんは、とにかくお子さんと向き合って「対話」されていらっしゃるんですね。

数原:ありがとうございます。でも現実は毎日バタバタ、日々迷走しているのが現状です(笑)。あまりにすぐに日常の出来事を忘れさるので、私がレオスに入社した2019年頃から、子どもとの会話を手書きのメモに残すようにしました。今日はそのメモを一部持ってきました。

息子さんのメモ

——ありがとうございます。うわぁ、いろいろある……!

数原:(右上の茶色いメモを指さして)たとえばこれ。当時10歳だった彼に「お金とは何?」と聞いたら「5番目に必要なもの」って返ってきたんです。「じゃあ1番目から言ってみて」と促すと「①心と身体 ②食べ物 ③飲み物 ④お店(仕事)」と。
「なぜこの順番に大切なの?」と聞くと、「健康でないとお金を稼げないし、おいしいご飯と飲み物がないと毎日働けない、あとお店がないとお金が使えないから」。

——10歳にして、自分の感性と言葉でお金の説明ができるなんてすごい! 日頃からよく考えていないと答えられないです。お母さんの考えを伝えることもあるんですか?

数原:はい。でも私の考えを言う前に、必ず彼の考えを聴くようにしています。学校教育を受けていると、少しでも早く正解を探そうとするクセがついてしまいがちですが、世の中はもっと自由だし、正解がないことのほうが多い。自分の考えは大事にして欲しいんです。
 
つい最近「お金について何か一言書いて」とお願いしたところ、書いて返された言葉は「お金とは人類トップ10に入る発明」。「お金の他に、トップ10に入るものは何?」と訊くと「クーラー、布団、エアガン……」(笑)。

——ふふふ。中学生らしくてかわいい! これはまさに教科書には載ってない、お子さんの本心の言葉ですね。

数原:クーラー、重要ですよね。お金があってもクーラーがなければ生きられない。布団も寝るのが好きな彼にとっては大切、サバイバルゲームは今、一番大好きなこと。その素直さがなかなかいいでしょ(笑)。

——「スマイルゼミって儲かる気がする。だって目標を決めて丸付けまでしてくれるから」というメモも気になります。

数原:2020年のメモですね。コロナ禍で子どもたちが学校に通えなくなった頃、タブレット学習の「スマイルゼミ」が流行りました。テレワーク中の親御さんが、子どもの答案に丸付けをして勉強を教えるのはすごく大変ですよね。でも、スマイルゼミを子どもに渡しておけば、採点も解説もしてくれる。コロナ直後に会社から在宅支援金が支給されて、我が家も使い始め、休校期間中は本当に助けられました。
 
そんな経験を経て子どもから出てきたのが、この言葉なんです。ただ「便利だな」と思って終わるのではなく「人の役に立つと報酬が得られる」という視点があるのがすごくいいですよね。
 
自分がやってみたものについて、「いい」と思った理由をよく考えてみたら、普段見えていたものの裏側が見えてきたということだと思うんです。つまり、彼の世界を見る力、解像度が少し上がったんですね。
 
こうやって「なんでだろう」「どうしてだろう」の好奇心を持って、考えるクセを身に付けていくことが、彼の幸せに生きていく力になると信じています。

——「お金の教育」は、子どもの生きる力そのものを育てることに繋がるんですね。さっそく娘にとって身近なものの「値段」の話をしてみるところからトライしてみます!

(後編に続く こちら

プロフィール:

ライター:森川紗名
1985年 兵庫県生まれ。ライター。4歳の娘を持つ母でもあります。食品会社に10年あまり勤めたのち、育児に専念したく退職。その後、書くことに魅了されフリーランスのライターに転身。現在はウェブ媒体記事の執筆などを担当しています。

取材・執筆:森川紗名
編集:田中裕子
写真:沼尾紗耶(レオス・キャピタルワークス)

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