数が多すぎて再び苦戦!投資信託の選び方について、レオス・キャピタルワークスで働く同級生に聞いてきた
ピースオブケイクでnoteのディレクターをされている平野太一さんによるシリーズ連載です。
前回、不思議な巡り合わせで「静岡の高校時代の同級生」であるレオス・キャピタルワークスの赤池実咲との10年ぶりの再会を果たした平野さん。
ふだんダイレクト営業部でお客様向けセミナーなどを担当している赤池ですが、平野さんに向けて特別レクチャーをすることになりました。
投資信託の仕組みについて理解したところで、商品選びのポイントを押さえていきます。実際に数ある投資信託の中から自分に合った投資信託を見つけるのに、ちょっと苦戦したようです。
どうやって自分に合った投資信託を選べばいいの?
5月から始まったこの連載も第6回。最初は竹川美奈子さんと相談しながら貯金ゼロから脱するところから始まり、第3回で「iDeCoの商品を選んで毎月積み立てる」というところまでは進んだものの、つみたてNISAの口座で投資する商品が決まっていない、それが今のステータスだ。
つみたてNISAとは…
つみたてNISAは少額投資非課税制度(NISA)のうち、投信の「積み立て」に特化した制度(2018年1月からスタート)で、毎年40万円まで20年間の利益に対して課税されないというもの。長期的に国民に資産形成を促すという狙いから、金融庁はつみたてNISAの対象となる商品を限定している。
そのためには、投資信託についてもっと理解を深めなくては!
さて、どうしようか……と思っていたら、10年ぶりに高校時代の同級生、赤池さんに再会した。現在、奇遇にもレオス・キャピタルワークスで働いているという赤池さんから、投資信託について教えてもらえることになったのだ。新展開だ。
前回はこちら。
6000本もの数がある投資信託。みんな、どうやって善し悪しを判断しているのだろう。実際に選ぶとなったら、どこから手をつけたら良いのかわからない。すると、赤池さんが投資信託の選び方のステップを提案してくれた。
1)手数料
2)目論見書(もくろみしょ)
3)シャープレシオ
順に教えてもらう。
投資信託の「手数料」って何がある?
投資をした結果どれだけの利益が出るかは分からないが、手数料は確実にマイナスになるもの。できるだけコストは少ない方が助かるだろう。投資信託では、以下の3種類の手数料が掛かる。
・購入時手数料(投資信託を購入する際に販売会社に支払う手数料)
・信託報酬(投資信託を管理・運用してもらうための経費として、投資信託を保有している間支払い続ける費用)
・信託財産留保額(投資信託を解約する際に支払う費用)
数ヶ月前までは漢字の羅列にしか見えずなんのこっちゃだったのに、言葉としてはスッと理解できるようになっている自分に気づいた。
成長している……!そう感じる瞬間がワクワクする。たまらない。
手数料については、「もし家を借りるとしたら?」で例えてみるとイメージしやすかった。
・購入時手数料 → 不動産仲介料・初期費用
・信託報酬 → 家賃
・信託財産留保額 → クリーニング代
初期費用は商品を選んだり、その後のフォローにかかる費用だ。今回は自分で投資する商品を探して自立して投資を継続すると決めているので、購入時手数料は安いに越したことはないし、ゼロのものを選びたい。信託財産留保額は「解約後のファンドに残していくお金」だが、ゼロのものも多いそうだ。
そもそも、つみたてNISA対象商品の場合は、すべて購入時手数料がかからないという。理由は積み立てのたびに毎回手数料がかかっていたらなかなか資産が増えていかないから。金融庁の肝入りの制度だけあって、そこは投資家に優しい制度だ。
チェックすべきは、「信託報酬」の箇所。賃貸でいうところの家賃のようなもので、投資信託を保有し続ける間はずっと支払い続けるものだから、大切だ。ただし、家賃とは違って「毎月いくら」と具体的に支払っている金額かがわかりにくいという。毎日の投資信託の値段「基準価額」が決まる際に、信託報酬の365分の1にあたるコストが割り引かれて反映されているからだ。
話を聞きながら、「信託報酬」というネーミングがくせ者ではないか、とモヤモヤ思っていた。報酬という名前がついているからなんとなく僕らがお金をもらえるように感じていたのだが、報酬をもらうのはファンド。僕らは払う側なのだ。逆だった。それなら、高すぎない方がいい。
続いて、赤池さんが尋ねる。
「信託報酬について、インデックス(=パッシブ)ファンドとアクティブファンドの違いはわかる?」
これについては、だいぶわかってきている!(成長をアピール)
「インデックスファンドは、iDeCoで選んだみたいな『MSCIコクサイ・インデックス』とかの指数に沿って運用をするものだから、信託報酬は比較的低い。逆にアクティブは、ファンドマネージャーの思想を反映して独自に運用するから、信託報酬は高いということでしょ? ひふみもアクティブファンドだよね」
赤池さんがにっこりする。合っていたようだ。嬉しい。
「目論見書」では何を見ればいいの?
次に、赤池さんが冊子を差し出す。
「これが目論見書。過去の運用成績や、どの会社に投資をしているのか、ファンドの特色、手数料などが載っている冊子なの。実際に『ひふみ投信』の交付目論見書で見てみようか。各投資信託に必ず1つあって、デザインのフォーマットは共通してるよ」
『ひふみ投信』の交付目論見書 ↓
「数字の羅列に見えてしまって、なかなか頭に入ってこないんだけど……。例えば、7ページの『手続・手数料等』のところの、『購入価額の単位』が1万口当りになっているのだけどどういうこと? 1口あたりで換算しないの?」
「基準価額はどこのファンドも最初に1口1円で設定しているの。基準価額は1万口あたりで表示するから、設定時の基準価額は1万円。その後の運用結果により値段が変動していって、1万円からスタートしたものが今どれぐらいになっているかで、自分の資産の評価がわかるよ」
「1万口」というのがずっとよくわからなかったので、謎が解けた。こういう細かいところがわからなくて立ち止まってしまうので、せっかくだから次々と質問してみる。
「あと、6ページの『運用実績』のところ。ひふみ投信の分配金は毎年0円なんだけど、これは書く意味があるの?」
「直近5期分の分配金額を書かないといけないルールなの。この分配金っていうのは、投資信託の純資産から、投資家に還元するお金のことで、決算時に支払われるのが一般的だけど、収益の有無にかかわらず分配金を払うファンドもあったりして……」
よくよく考えてみると、プラスになってもマイナスであっても分配金を支払うということは、投資する側にとって短期的には良いかもしれないけれど、長期的には投資に回す額が減ってしまうということか……。僕の場合は、手元に戻ってきたらさっさと使ってしまいそうだ。
「定期的に分配金が払われないということは、儲かった分も次の投資に回すことで複利効果(利益が利益を生んで増えていく効果)を得られるメリットがあるね」
目論見書の内容はもちろんどれも重要な項目であることには違いないが、
・そのファンドがどういうことを目的として投資を行っているか
・実際に成果は出ているのか
・投資対象は何か
・どれぐらい手数料がかかるのか
をよくチェックしておけば良さそうだとわかった。
「シャープレシオ」でどうやって成績を比べる?
目論見書で、それぞれのファンドがどんなふうに投資を行っているかがわかった。3つ目に教えてもらったのが、複数の投資信託を客観的に比較したいときに活用できる「シャープレシオ」という指標だ。
「シャープレシオ」とは、取ったリスクに対してどれだけリターンを上げられたかを数値化したもの(高いほど良い)。名前の由来は、何かがとんがっているわけでも、SHARP社が作ったものでもなく、ウィリアム・シャープ氏が考案した指標(Ratio)だからそういう名前がついているそうだ。
「例えるなら、素敵な彼氏を探すのと同じ」と赤池さん。
「え、どういうこと?」
「キュンキュンもさせてくれるけど、結局一緒にいて安心感とか安定感がある、みたいな? そういう人と長く付き合っていきたいじゃない。ハラハラさせられる割に優しくもない、とかよりいいよね(笑)。リスクはとっているけれども、その分しっかりリターンが出ている彼氏……いや、ファンドを選びたい、ってこと」
「かっこよくて優しい、のバランスってことか。あ、自分も彼女選びに置き換えればわかるかな(笑)」
人間の魅力については数値化は難しいけれど、ファンドの場合は数値で効率よく収益を得られているかどうかの比較ができるらしい。実際に、R&I(格付投資情報センター)のファンド大賞はシャープレシオを基準に受賞ファンドを決定しているという。
ただし、比べるときは、同じ期間で、同じ分類、同じカテゴリーでないと比較する意味がなくなってしまうので注意だそう(日本株に投資する投信と、新興国株に投資する投信を比較しても意味がない)。
検索画面で途方に暮れる
ここまでの話を聞いたところで、「できる気がする!」と明るい気持ちになりながら、この日は帰宅。赤池さんから聞いた話を元に、さっそく投資信託を選んでみることにした。
……が、それでも壁にぶつかったのだ(涙)。
最初に、赤池さんからも参考サイトとしてオススメされていた「モーニングスター」というサイトを見てみた。
シャープレシオの数値が高い投資信託ランキングがあったので、のぞいてみた。だが、知らない名前のものばかりだし、本当にこれを選んで自分のお金を預けてもいいものなのか迷う。なんとなくしっくりこない。
「わからないことがあったらなんでも聞いて」と言われていたので赤池さんに再度尋ねてみたところ「リターンがマイナスの場合、運用効率の悪い投信の方がシャープレシオが高く計算されてしまうから、注意が必要」とのこと。そうだったのか! 直近1年では運用成績がマイナスのファンドもあるから、これはちょっと参考にするのは難しいかもしれない。
他にも検索画面にはいろんな探し方があったのだけど、そもそもその検索の方法が合っているのか、自信がない。
わかったようなつもりになっていたけれど、全然わかっていなかったのか……!
長いファンド名がずらずらと表示されるPCの前で途方に暮れた。なるべく早く投資を始めたい気持ちと、わからないから不安な気持ちのせめぎ合いだ。
「つみたてNISA」の商品から選ぶ
途方に暮れながら、「この段階で全部分かろうとするのは無謀なのでは?」と思い始めた。
このままではどうにもこうにも先に進めない。まずは始めてみよう。最初に押さえておくべきポイントはあるのだろうけど、わかる範囲(大幅なマイナスをしないように)で投資を始めて、徐々に中身を理解していくのが良さそうだ、と納得した。
自分が口座を開設したSBI証券のサイトで、つみたてNISAで扱っている投資信託一覧を見てみた。こちらの方が早そうだ。
画面を見ると、つみたてNISA対象商品は152本あったが、そのほとんどがインデックスファンドだった。ちなみに、日本で売られている投信の88%がアクティブファンドだそうだが、つみたてNISAだとアクティブファンドの割合がかなり少ない。長期投資にふさわしいか、と金融庁の出したハードル(以下)を超えているアクティブファンドが少ないということらしい。
つみたてNISAのアクティブファンドの条件
・購入時手数料が0円
・信託報酬が1.0%+税以下(投資対象が海外資産の場合は1.5%+税以下)
・純資産が50億円以上かつ設定以降5年以上の実績があること
・デリバティブ取引による運用を行っていないこと(ヘッジ目的の場合を除く)
・毎月分配型ではない
・信託契約期間が無期限(または20年以上)
iDeCoでは初心者向けということでインデックスの商品を選んでいたので、つみたてNISAの口座ではアクティブファンドにも挑戦してみようと思っていたのだが、アクティブファンドの中で知っているのは「ひふみプラス」ぐらいだった。もちろん知っていたのはこの連載をやっていたから、だけど。
今のところは、安定的な運用を目指す外国株式インデックスファンドの割合を70%(インデックスファンドの中でも信託報酬が低いものを選んだ)にして、残り30%でアクティブファンドの「ひふみプラス」を選ぼうと思っている。
【次回】「ひふみ」ってどんな特徴があるの?
焦りもしたけれど、確実に解像度が上がっていっている実感はある。やっぱり本を読んでいるだけでは「わかったつもり」のままだ。
次回は、「ひふみ投信(ひふみプラス)」の特徴について、赤池さんに聞いていく。あと、静岡の銀行からどうしてレオス・キャピタルワークスに転職したのかというところも含めて。
(次回は8月下旬更新予定)
プロフィール:
ライター:平野太一
1991年静岡県生まれ。関西大学経済学部卒業。2013年10月よりWantedly, Inc.に入社。CSを経て、募集要項の作成・取材・ウェブメディア「WANTEDLY JOURNAL」の執筆・撮影などを担当。2016年1月よりBAKE Inc.に入社。ウェブマガジン「CAKE.TOKYO」の編集・執筆・撮影を担当。BAKE CHEESE TARTのSNS・LINE@運用、リーフレットの撮影などを担当中。2018年10月より、Piece of cake, Inc.にnoteのディレクターとして入社。クリエイターガイドやイベント企画、クリエイターサポートなど、全方位で担当中。
Twitter : https://twitter.com/yriica
note : https://note.mu/yriica
※当記事のコメントは、個人の見解であり、市場動向や個別銘柄の将来の結果をお約束するものではありません。ならびに、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。