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【舞台裏レポート④】宮古市の熱気に包まれた死闘の果て藤井叡王がタイトル防衛

こんにちは。ひふみラボ編集部です。

レオス(ひふみ)が特別協賛をつとめる将棋の八大タイトルの一つ「第8期叡王(えいおう)戦」の五番勝負は、藤井聡太叡王のタイトル防衛で熱戦に幕を閉じました。

「最高の振り飛車と最高の居飛車の戦い」と称された藤井聡太叡王と菅井竜也八段による今期の叡王戦は、たくさんの人に感動を与えたのではないでしょうか。
2度の千日手(せんにちて)=指しなおしとなった第4局のレポートは、社内で「千日手を呼ぶ女」と名を刻むこととなった経営企画&広報・IR室の仲岡が「観る将」目線でお届けします!

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ご縁が紡ぐ岩手県宮古市での開催

第4局は岩手県宮古市の「浄土ヶ浜パークホテル」での開催となりました。
「浄土ヶ浜パークホテル」は、2013年5月に羽生善治三冠(当時)と森内俊之名人(当時)による名人戦第3局が行なわれた会場で、タイトル戦の歴史が刻まれた場所でもあります。
10年ぶりの対局を実現するため、ちょうど1年前から宮古市での叡王戦開催に向けた検討が始まり、多くの方のご尽力のもと開催が実現しました。
それを表すかのように、前夜祭には主催・協賛社・協力会社に加えて、宮古市の関係者の方、地元企業の方や地域住民の方なども含め総勢140名が出席され、盛大な会となりました。

当社が初めて特別協賛を務めた第6期からは新型コロナウイルス感染症の影響でこのような大規模なリアルのイベントができない状況が続いていたこともあり、世の中の変化を感じた瞬間でもありました。

宮古市は東日本大震災で大きな被害を受けた地のひとつです。
2011年から10年以上が経過し復興も進んではいますが、宮古市の皆さんの心や街に刻まれた被害の後は残り続けます。

「風化させない為には話し続けることが大切です。だからこそ、この宮古市で叡王戦が開催されることに大きな意味があります。全国に叡王戦が中継され、報道で取り上げられることで多くの人の記憶に刻むことができます」
第4局の協力会社である岩手日報社 川村社長の言葉が心に響きました。前夜祭では重要無形民俗文化財に指定されている黒森神楽(くろもりかぐら)の権現舞(獅子舞) の歓迎を受け 、地元の小学生から藤井叡王と菅井八段へ花束と激励を送りました。
小学六年生からは「みんなを驚かせる一手を楽しみにしています!」という言葉がかけられ菅井八段が「将棋ファンに“プロのすごさ”を見ていただけるように頑張ります」と自信を感じる強気の返答。藤井叡王ともにさらに気合が注入されたように感じました。

本局の立会人は、2013年の名人戦で名人として対局を行なった森内俊之九段が務めました。

立会人の森内俊之九段と

藤野と森内九段は以前「お金のまなびば!」で対談しています。動画はこちら↓

さらに、大盤解説会は岩手県釜石市出身で2023年2月にプロ棋士となった小山怜央四段が解説されるなど、岩手県にご縁がある方々が対局をサポートします。そんな地元の熱烈な歓迎ムードに包まれて、いよいよ第4局の戦いが始まります。

1局で2度の千日手

私は昨年から叡王戦特別協賛の事務局を務めており、私が対局を現場で観戦するのは3度目でした。
初めて観戦した昨年の第7期叡王戦第2局は千日手(一局中に同じ局面が何回か現れること)で指し直しとなり、その時に藤野から「これは珍しいことで、初めての対局観戦でこんな機会に恵まれるなんてついてるね」と教えてもらいました。

そして今年の第8期は名古屋での第2局と、第4局を現地で観戦しました。
名古屋でも控室では「千日手になるかも」という声が出ていたのですが、結果はならず。そして今回を迎えたのですが、なんと1局で2度の千日手、指し直しという場に立ち会うことになろうとは思いもよりませんでした。

9時に対局が開始してからおよそ9時間半後の18時半過ぎに2度目の千日手となった瞬間、白熱の試合を3回分も見ることができるとはなんとすごいことだろうと思うと同時に、自分が観戦する対局が千日手となる確率の高さに驚きました。
藤野からは「千日手を呼ぶ女」とその場で命名され、一緒に控室で応援していた関係者の皆様の笑いが起きました。
両者一歩も譲らず、白熱した対局は一進一退、緊迫の時間が続きました。

静寂の中に

将棋の応援をしていて、いつも思うことがあります。
それは「美しい」ということです。

私は将棋を指したことがなく、完全に「観る将」なのですが、対局者のお二人が醸し出す空気感がたまらなく好きです。
初手に立ち会わせていただいたときに見た、凛と向かい合う姿は美しいという言葉そのものでした。所作が一つ一つ丁寧で、駒を動かすその指先は繊細かつ意志の強さを感じます。言葉を交わすことのない、静寂の中での二人きりの戦い。私にとってこれ以上美しい情景はありません。。

第4局の終盤で藤野が「菅井八段の兵が城壁を駆け上っている。それを藤井叡王の軍がすごい勢いで斬っているような状況」と解説してくれました。
あんなに静かに向き合っていて、盤上ではそんなすさまじい戦いが起こっているとは……。

2度目の指し直し局でも、それまでの2回の千日手局と同様に三間飛車から相穴熊戦が繰り広げられました。藤井叡王が「全体を通して大変な戦いでした」と振り返られたほど、21時過ぎまでまさに“死闘”が続きました。

今回も藤井叡王の終盤の強さを目の当たりする対局となりましたが、菅井八段の「自分が負けると、自分以外の振り飛車党は絶対勝てない」という強い想いをもって叡王戦に挑む姿、そして対局前のインタビューでの「(会見前に遊覧船に乗ったことにふれ)船が苦手なので遊覧船に乗るのは正直イヤだなと思っていたんですが、空気もとても綺麗で楽しめました」や「不二家さんのお菓子、棋士の中では自分が一番食べていると思います」という、くすっと笑えるコメントで、周りを楽しませようというチャーミングなお人柄を少し垣間見れたような気がします。

ボーダレスな将棋の世界

今回の対局控室でもう1つ、ハッとしたことがあります。

それは、大盤解説会で聞き手を務められた竹部さゆり女流四段とお話していた時のことです。竹部女流四段に将棋を初めたきっかけをお伺いしました。

「共働きの家だったので、小学生の頃、学童保育に行っていました。でも学童保育は3年生までしか行けないので、4年生からどうする?となって、学童保育で将棋を少し習ったこともあり、託児所代わりに将棋教室に通ったんです(笑)。女子が少なかったこともあり、たくさん丁寧に教えてもらったので、今でも感謝しています。」とおっしゃっていました。

竹部女流四段は様々な事情で学校に通うことが難しくなってしまった子どもたちに将棋を教えられたこともあるそうです。
「将棋を通じて人と繋がることができるんです。実際に、学校に行けなかった子が、将棋を学び、大会に出場するために仲間を集めてチームとして出場した時は嬉しかったですね」と柔らかい笑顔で語ってくださいました。

また、将棋は耳の不自由な方も指すことができ、目の不自由な方の大会もあるそうです。性別、国籍、年齢、ハンディキャップに関わらず、盤に向き合い戦うことができることも将棋の魅力の1つだと思いました。

控室ではいつも棋士の先生方や関係者が、みんな目をキラキラさせて検討会を行ないながら、戦いの行方を真剣に温かく見守っています。将棋に関わる方たちの熱意や想いが伝播し、将棋ファンが増えているのかもしれない、そんな事も感じました。

こうして、第8期叡王戦は激戦の末、藤井叡王がタイトルを防衛し3連覇達成となりました。

私が応援に参加する対局は千日手になる可能性がございます。
その際は皆様、お時間にゆとりをもっていただき(笑)、たっぷりと観戦を楽しみましょう!

さて来期はどんな棋士が立ちはだかる圧倒的王者に挑戦を挑むのでしょうか?どんな戦いが繰り広げられるのか、今から楽しみです。

おまけ

今回は藤野、白水とともに参加しました。スケジュールの合間に宮古市を車で少し周り、青の洞窟にも行ってきました。洞窟の奥の穴は八戸に通じているという伝説があるそうです。
浄土ヶ浜は「さながら極楽浄土のごとし」という由来で名づけられた名勝地です。この素晴らしい自然がずっと守られますように。

青の洞窟 (船でここに入っていきます)


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