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【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝

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第14回山本七平賞を受賞され、100年経営の会顧問や、日本将棋連盟アドバイザーなど、多方面でご活躍されている作家・北康利先生による新連載企画です。 日本林学の父、公園の父と呼ば… もっと読む
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【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝 #39

前回はこちら↓ 【荒廃していた奥多摩の山々】 第四章 緑の力で国を支える (9) 東京の水道事業と奥多摩水源林(前編)東京の水道の歴史は江戸時代にさかのぼり、〝上水の水で産湯をつかい〟というのが江戸っ子の決まり文句だった。当然のことながら現在のように鋳鉄管で給水されていたはずもなく、〝上水〟とは玉川上水のような人工的な水路のことであり、江戸市内に入ったところで一部木管が使われた。 しかもそれは、明治に入ってもしばらくは江戸時代の設備のままだったのである。 やがて多摩川の水

【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝 #40

前回はこちら↓ 【緑に溢れる現在の大菩薩嶺】 第四章 緑の力で国を支える (10) 東京の水道事業と奥多摩水源林(後編)水源林予定地は手に入った。 明治三六年(一九〇三)、まずは多摩川源流の泉水谷(いずみたに)(山梨県丹波山村)に派出所を設け、はげ山(無立木地)となっている周辺一帯に針葉樹を植栽していく計画を立てた。 このあたりの地質は風化した花崗岩で地味がやせ、海抜一二〇〇メートル以上の厳しい寒冷地でもあるため環境は劣悪だった。それでも静六は果敢に挑戦し、後にこの事業が