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「生きること」と「生きたお金の使い方」の大切さを知ってほしい。レオス湯浅光裕が子どもに伝えたいこと【前編】

「これからのお金」「これからの投資」を一緒に考える研究所、「ひふみラボ」。大好評だった連載「子どもに伝えたい、お金のこと」が再始動しました!

「お金についての知識に自信がなく、子どもに教えられることがない」
「子どもたちが生きる時代に、自分の経験が役に立つのか自信がない」

そんな多くのお母さんお父さんと同じ不安を抱えるライターの森川さんが、個性豊かなレオス・キャピタルワークスのメンバーに「お金の教育」についてあれこれ疑問をぶつけていきます。

今回登場するのは、レオス・キャピタルワークス副社長の湯浅光裕。

「子どもにも演技以外で怒ったことがない」と語るポジティブエネルギーあふれる湯浅家の子育て、そして人生への向き合い方を語っていただきました。

そしてインタビューの最後には、息子さんの信臣さんから「子どもから見たお金の教育」についてもコメントが! ぜひお読みください。

子どもと親は、「生きている時間」がちがう


レオス・キャピタルワークス代表取締役副社長・湯浅光裕。妻と、高校3年生の信臣さんの3人暮らし。信臣さんは海外留学中

——この連載では、レオス社員のみなさんがお金について自分自身の考えを持っていること、そしてそれを子どもにどう伝えるか工夫されている様子をお聞きできて、とても学びになっています。今回は「レオス副社長のお金の教育」を伺えるということで、いっそう楽しみにしていました。さっそくですが、18歳になる息子さん、信臣さんへの「教育方針」について教えていただけますか?

湯浅:いやあ、むずかしいなあ(笑)。「教育方針」なんて、そんな大層なものはないんですよ。ただ、僕と息子でもっともちがうのは「生きている時間」だなと思っていて。それは、子どもに何度も伝えてきたかもしれません。

——「生きている時間」。というと?

連載担当のライター、森川さん。4歳の娘さんへの「お金の教育」を考えるべく、鋭意インプット中。

湯浅:その人の年齢や生きる時代によって、与えられる環境や経験できること、挑戦できることがちがうんだよ、という話です。人間の歴史を俯瞰したときにわかる、「時代によるちがい」と言えるでしょうか。
 
たとえば、80歳を超える僕の母は、戦争を経験しています。一方、57歳の僕は戦時を知りませんが、日本の高度成長期を経験しています。そして18歳の息子は、戦争も高度成長期も知らないけれど、これから先の未来を経験できるでしょう。ちがう「時間」を生きるわけです。
 
——そうした「俯瞰」での見方は、ちがう時間を生きる親だからこそ伝えられるものかもしれませんね。
 
また、母はあと10年、20年生きられるかわかりませんが、息子はこれから何十年と生きられます。母や僕が持ち合わせていない、たっぷりの「時間」を彼は持っている。
 
こうした外部環境のちがいを知ったうえで、時代のいいところを利用して、よりよく生きていくんだよと伝えています。
 
——なるほど。「今の時代」の特徴を考えたり、自分が持つ時間の長さを意識したりすることで、生き方を考えるきっかけになりそうです。

「お金のこと」より先に「生きること」を伝えたい

湯浅:もうひとつ、僕が「お金」以前に伝えている「人生において大切なこと」があります。それはどの時代でも変わらない普遍的なことなんですが、「人間というのは、生きていかなきゃいけない」ということです。80歳でも57歳でも18歳でも、まったく同じ。「どんな環境でもあなたは生きなければならない」、もっと言えば「与えられた環境のなかで、あなたはどうやって生きるんですか?」ということを話すのが、僕なりの教育かもしれません。
 
——「お金」について話すよりも前に、まず「生きること」を伝えられている。
 
湯浅:そうです。「生きること」を伝えずして、お金を語っても意味がないと思っています。
 
たとえば、もし母が戦時中に死んでしまっていたら、そこで何もかもが終わっていたわけでしょう。僕だって生まれていなかった。だけど母はその時代を生き延びてこられたから、こんなに楽しい世界を知れて、孫にも会えました。きれいごとでもなんでもなく、「生きること」が何よりも大切なんです。
 
だから、他人の命を奪うなんてもってのほかだし、自分で命を絶ってしまっては元も子もありません。子どもには「自分の命と他人の命を奪うこと以外は、なんでもやっていい」と伝えていますね。

お金は「命の次に大切」なもの?

世界中の「現場」を飛び回って見つけたすばらしい企業やモノ・サービスを、投資を通して伝える湯浅さん

——ただ、生きていくうえでは「お金」も必要ですよね。

湯浅:もちろんです。お金は生きるために必要な手段でしかありませんが、同時に、生きることとお金は切っても切り離せません。お金は命の次に大切です。
 
——「命の次に大切」ですか! たしかにお金は大切ですが、「命の次」となるとちょっと極端な気がします。たとえば、仲間の存在だって、生きていくのに欠かせないと思うのですが……。
 
湯浅:たとえば、生きるために必要な食べものは、自給自足の生活でない限り「買うもの」ですよね。今は水も買わないといけなくなったし、そのうち空気だって「買うもの」になるかもしれない。もし、空気や水が簡単に手に入らなくなって、高値で取引されるようになったら、何がなんでもお金を手に入れるでしょう?
 
——たしかに。突き詰めて考えると、生きていくには何よりもまずお金が必要ですね……!
 
湯浅:そうそう。だって死んじゃったら終わりなわけだから。貨幣は「価値を貯める」ものでもあるし、「価値を交換する」手段でもある。生きるために必要なものを手に入れる「価値の交換手段」は、命の次に大切ですよ。もちろん仲間も大事ですけどね、それは命あってのことです。
 
——息子の信臣さんにも、お金の大切さについては伝えていらっしゃるんですか?
 
湯浅:はい。小学1年生のときからコツコツ、何度も伝えてきました。「生きること」についても、お金の役割や大切さについても、最初はまったくピンと来ていなかったと思いますし、いまもわかっているかは定かではありません(笑)。でも、彼なりに少しずつ理解していくんじゃないかなと思います。

寄付や投資は「生きたお金の使い方」

——お金の大切さについてお話するほかに、どんな「お金の教育」をされているんですか?
 
湯浅:「教育」というほどでもないですが、中学生になった頃から、毎月3000円のお小遣いを複数の通貨で貯金していくルールを取り入れました。
 
——ああ! 以前のインタビューで、代表の藤野さんから「複数の通貨でお小遣いをあげるといいよ」とアドバイスをいただきました。

湯浅:そうそう。藤野からの受け売りなんですよ。この仕組みのいいところは、「日本以外にもたくさんの国があって、様々な通貨が存在するんだ」と子どもに伝えるいい機会になることです。為替を理解してもらいたいわけでもリスクを分散させるわけでもなく、ただ外国や外貨の存在に親しんでほしくて始めました。
 
——そうして貯めたお金の使い方については、具体的にアドバイスするんですか?
 
湯浅:細かい使い方については、あまり話さないですね。子どもが自由に使える金額なんて、ごくわずかなものですから。けれど「『生きたお金の使い方』をするといいよ」という話は、いろんな場面でしています。たとえば、寄付がそのひとつです。
 
——寄付ですか! 恥ずかしながら寄付はあまり身近なものではなくて、子どもに伝えようと考えたことすらなかったです。
 
湯浅:僕は、寄付という行為をとても大切にしています。寄付と聞くと立派で近寄りがたいものに感じるかもしれないけれど、その行動は巡りめぐって自分たちが生きる世界をゆたかにすることにつながるんですよ。
 
生きていくうえでは、やりたいことに挑戦したり、好きなものを買ったりする「自由」が大事ですよね。そして「自由」を得るためには、「価値の交換手段」であるお金が必要です。けれど人間の世界には、どうしても貧富の差が生まれてしまうもの。
 
——お金と自由を十分に得られる人たちと、そうでない人たちが存在してしまう。

湯浅:そうです。そこで、お金にゆとりのある人たちが、自由な環境を得られない人たちに寄付をする。すると、寄付を受けた人がやりたいことに挑戦したり好きなものを買えるようになったりして、経済に循環が生まれます。
 
つまり、寄付を受けた人だけでなく、社会全体が少し豊かになるんです。ただ、寄付ばっかりして自分の生活がままならなくなってしまってはダメですからね。しっかり稼いで、自分にとって無理のない範囲で、考えながらやらないといけません。
 
寄付のいいところと懸念点の両方を踏まえたうえで、「生きたお金の使い方」の例として子どもに話をしています。
 
——寄付は単なる出費ではなく、経済に循環を起こしていずれ自分に返ってくるものなんですね。まずは親である私が寄付を経験してみたいと思います! ほかに「生きたお金の使い方」の例はありますか?
 
湯浅:投資について話すこともありますね。「パパたちが君に使うお金は、すべて投資なんだよ」という話は、彼が小学生のときからよくしていました。「君が挑戦したいと思うことは自由になんでもやっていい。パパたちは君の挑戦に投資する。それが『生きたお金の使い方』なんだよ」と。

子どもを通じて、親が教育されている

——「自由になんでもやっていい」。親として子どもにぜひ言ってあげたい言葉です。でも、我が身を振り返ると「こうしなさい」「ああしなさい」とついつい言ってしまいがちだなあ……。
 
湯浅:僕の場合、「こんなのあるけど、やってみる?」と選択肢を提案することはあっても、子どもに細かく指示することはほとんどないですね。だって、意味がないじゃないですか。何かを強制されて、「やってみよう」と気持ちよく前向きになれる人ってほとんどいないと思いますよ。森川さんもそうじゃないですか?
 
——おっしゃるとおりです(笑)。
 

湯浅:「こういう風に生きてもらいたいんだな」と察して、親の価値観に合わせてもらいたくはないんです。そんなことに頭を使うより、自分が何をしたいか、どう生きたいかを理解し、選択する力をつけるほうがよっぽど大切です。
 
もちろん、子どもの様子を見ていると、ハラハラして口を出してしまいそうになることはあります。でも、それは僕が彼に教育されているんだなと思ってグッとこらえる(笑)。子育てしているからこそ味わえる経験なので、この瞬間も楽しんでいます。
 
——子育てには胆力が必要ですね。信臣さんを信頼して、判断を委ねていらっしゃるのがとても素敵だと思いました。
 
湯浅:子どもにしろ、会社のメンバーにしろ、信じなければ何も始まりませんからね。
 
——はい! 私も子どもを信頼して、子どもの挑戦に気持ちよく投資できる親でありたいと思います。

息子・信臣さんからのコメント

今回、留学先のスイスより夏休みで帰国していた湯浅副社長の息子さん(高校3年生)に直接お話を伺うことができました! 湯浅さんの「お金の教育」、なにより「生き方」のメッセージを、子ども本人はどのように受けとっているのでしょうか?

「お金」や「投資」については子どものころから話を聞くことはありましたが、僕自身の興味が向くようになったのは、高校生になったころからだったと思います。最近では、今まで「難しそうだからいいや」と耳に入ってこなかった言葉も(笑)、少しずつ理解できるようになってきました。
 
お金に興味を持てるようになったのは、複数の通貨で定額貯金する習慣のおかげもあるかもしれません。毎月、自分で為替レートを調べたり、ドルで貯金した金額をメモしたりするうちに、外貨や為替の存在がずっと身近なものになりました。
 
 
「自分の好きなことを、なんでも自由にやっていいよ」という言葉も、常々言われて育ちましたね。どんなことでも背中を押してくれる両親の応援を受けて、サッカーをはじめとした習い事や留学など、本当にいろんな挑戦をしてきました。
 
僕の両親は少し変わっているのかもしれません。「後悔しないようにしなさいね」と言うだけで、僕に何かを強制したり、反対したりすることはほとんどありません。
 
たとえば「そろそろテレビ消しなさい」「何時までに帰りなさい」と言われることもなかったし、僕がカードゲームにハマったときも、「もうやめなさい」と止められることもありませんでした。「カードをいくら集めたって、いずれただの紙切れになってしまうだけ」と、両親は分かっていたと思うんです。だけど、何も言わずに僕が満足して、納得するまでやらせてくれました。もちろんお小遣いの範囲内ですが。
 
子どもの意思を尊重する姿勢は、すべてに一貫しています。たとえば何かに挑戦するときだけでなく、辞めたり諦めたりするときもそう。習い事にしても勉強にしても、「辞めたきゃ辞めな」「イヤイヤやっても意味ないから」と言ってくる。そう言われると、むやみに辞められないんですよね(笑)。
 
両親はいろいろ選択肢を見せてくれるんですが、最後は僕に決めさせてくれます。おかげで、自分で考えるクセや、自分で選択する勇気みたいなものが、自然と身についたように思います。

プロフィール:

ライター:森川紗名
1985年 兵庫県生まれ。ライター。4歳の娘を持つ母でもあります。食品会社に10年あまり勤めたのち、育児に専念したく退職。その後、書くことに魅了されフリーランスのライターに転身。現在はウェブ媒体記事の執筆などを担当しています。

取材・執筆:森川紗名
編集:田中裕子

※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の動きや結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。

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