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アナリストの発想法は僕らの生活や仕事にも活かせる!彼らの目のつけどころとは

ピースオブケイクでnoteのディレクターをされている平野太一さんによるシリーズ連載です。

投資信託への積み立てをスタートして半年。順調に知識をつけてきた中で、「投資信託の中の人」はいったい何をしているのか?という疑問が湧いた平野さん。前回は、ひふみ投信の「中の人」として、レオス・キャピタルワークス運用部アナリストの堅田雄太と対談。アナリストの仕事の内容や、投資したい会社の見つけ方などを聞いてもらいました。

後編となる今回は、アナリストの「目のつけどころ」がテーマです。平野さんにとっての投資が「自分ごと」に変わる瞬間がありました。今回も対談形式でお届けします。

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アナリストは特別な情報を持っているわけではない

――前回までの堅田さんの話を聞いて、アナリストという仕事が投資信託の運用の中で果たす役割みたいなものがやっと見えてきました! アナリストは自分とは全然違うところから情報を見つけてくるのかと思っていたんですが、そういうわけではないんですね。

そうなんです、よく誤解されるんですけど。僕らアナリストやファンドマネージャーって言っても、何かものすごい特別な情報網を持っているわけではなくて。確かに直接、会社の社長やIR担当の方にインタビューできるというのはあるんですが、公開情報をベースにあれこれ考えるというところでは、基本的に皆さんと同じです。

――となると、どこで違いを出せるのでしょうか?

やっぱり僕たちは仕事ですから、年がら年中そのことを考えている、ということに尽きますね。とにかく「量」だと思います。

例えば今だったら……、ほら、あの向かいの工事現場。これから大きなビルが建つところなんですけど、うちの会社からちょうど工事の様子を見られるんですよ。どうやって作業しているか、どんな機材が使われているか。解体している時も面白かったですけどね。

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――え? 本当ですね。わざわざ注目したことなかったです!

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例えば、「近くのビルに缶コーヒーの看板が出ているけど、誰が見るんだろう? もしかして工事現場の人向けだったりするのかな?」とか考えたりね(笑)。こういうのがクセになっているので、つい、何でもじっくり見ちゃう。日々妄想ばっかりしているんですよ。

行列ができていたら調べるし、コンビニで目に付いた面白いものは実際に買ってみますし。

そうそう、コンビニといえば、ここ最近ガムよりもグミが多く並んでいるのを知っていますか?

――あ、言われてみれば。僕も好きなので、よく買います!

市場規模はガムに比べて小さいものの、グミの売上げは2017年のグミの出荷額は433億円と、ここ5年でおよそ5割増加し、市場は急速に拡大しているそうです。

それってどうしてだと思いますか?

ある会社に取材したときに教えてもらったんですが、働く女性が増えていることがひとつの理由なんだそうです。比較的低カロリーで小腹が満たせて、量も多く、ガムみたいにゴミが出ないし、低価格パッケージもおしゃれなのでデスクに置いておきやすいんだそうです。それにグミには、「固さ」という要素が入るので、製造する企業側としても飴やガムと比べて色んなバリエーションの製品が作れる。その結果として市場が伸びているんだそうです。

――そうか、グミといっても、確かに最近のものはハードグミが多いですね。

「市場が伸びているからグミをつくっている会社に投資しよう」ってすぐに銘柄につながるわけではないんですが、成長している企業を見つけるためのヒントにはなりますよね。じわじわとした変化は気づきにくいですけど、グミみたいに、言われてみれば最近良く見かけるようになったものってあるじゃないですか。

変化って、誰かが何か行動したからこそ起きることなんです。だから、日々の生活で気になったことを見過ごさないこと。「あれ、なんでだろう?」と気になって調べるようにしていくと、小さな変化とその背景の集まりから、大きなトレンドが見えてくることがあります。周りのみんなが大きなトレンドに気づく前に、動くことができるかどうか、それが僕らの仕事です。

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情報をどうやって投資につなげるか

――そうなると、アナリストって、生活が仕事みたいですね。仕事とプライベートの境界線が曖昧になっているような感じがします。

仕事とプライベートの境界線ってあんまり感じたことがないですね。学生時代に野球をやっていたときは、もっとうまくなるためにはどうしたらいいかということを常に考えていましたし、当社でマーケティングをしていたときは一人でも多くのお客様にひふみを知ってもらうためにどうすればいいのかということを常に考えてしまっていたので、たぶん僕はそういう性格なんだと思います。アナリストやファンドマネージャーってそういう人が多いような気がします。少なくともうちの会社のメンバーは、そういう仕事とプライベートがごっちゃになったような人ばかりですよ。だって、僕たちの生活は情報の宝庫なんです。重要な情報を見過ごしてしまったら悔しいじゃないですか!

――世の中の変化に気づいてから、そこから投資できるかどうかというのはどうやって考えていくんですか?

前回も話しましたが、投資するかどうかは「利益を出し続けているか」ですよね。利益が上がっているということは、その会社が提供している商品やサービスに対して多くの人が価値を感じてお金を払っているからです。

僕の場合は、まず自分が日々の生活の中でお金を使っているものは、どうして売れているのか理由を調べてみるように心がけています。訓練みたいなものですね。上場していたらすぐに調べられます。これって皆さんもお試しでやってみると面白いですよ。

その理由は製品がいいからかもしれないし、マーケティングがうまいからかもしれないし、ビジネスモデルがきれいだからかもしれません。企業によってさまざまな利益の上げ方があります。たくさん売って利益を上げるところもあれば、量は追わないけど単価を上げるところもある。納得できればより詳しく調べてみます。これまでに調べてきたものと重ね合わせて、その情報をポジティブに捉えるかネガティブに捉えるかは、アナリストもしくはファンドマネージャー次第ですね。

世界がカラフルに見えてくる

――今、堅田さんの話を聞きながら、ちょっとショックを受けています。自分がいかにぼーっと生きてきたかを痛感していて……(笑)。でも、少し話を聞いただけなんですけど、さっきより少しだけ意識的に見えるようになった気がします。

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でしょう? それが投資の面白いところなんですよ。

レオスのアナリストの先輩で栗岡って人がいて、彼はお客様にいつも「投資をすることで、世界がカラフルに見えます!」って熱弁しているんです。最初、自分はその言葉を聞くたびになんだか気恥ずかしいなあと思っていたんですけど(笑)、アナリストの仕事をしていると、まさにその気持ちがわかってきてしまうんですね。街がイキイキと色づいて見えてきます。

――僕自身、一社会人としても、目が開いていく感じがしました。

すれ違う人の服装や、看板や広告、お店の品揃え。街を歩けば気づくことはたくさんありますよ。アナリスト的な目線のスイッチを入れて街を歩いていると、あらゆる会社が透けて見えてきます。

それに、もし生活している中で不便だと思うことがあれば、そこには課題という名の「チャンス」があるということです。その課題はなんで生まれているんだろう、解決できるにはどうすればいいんだろう、どこの会社ならできるんだろう、って。

僕らは投資先を探しているわけですから、それぞれの会社がきちんと利益を出せているのか、と調べていきます。もちろん仕事だからちゃんと株価が上がる会社に投資して、ファンドとして結果を出さなきゃいけません。

でも、そうやって考えていくことそのものが面白いじゃないですか。それはアナリストという仕事じゃなくても、同じように面白がれるものだと思います。世界がカラフルに見えるということは、人生がカラフルになるということなんです。アナリストはそのことを伝える役割もあるのかな、と思っていますね。

堅田さんが参考になった投資本3選

――最後に、堅田さんが参考になった投資の本があれば教えていただきたいです。今回の話で、投資ってちょっと面白そうだな、と思った方のために。

昨日この質問をいただいて一晩考えました。この記事を読んでくださる方に合いそうな本を難易度別に3つ選んでみました。

1冊目は入門として、「ピーター・リンチの株の法則」。ピーター・リンチは、アメリカの有名な投資家で「90秒で説明できない会社には手を出すな」という副題がついています。投資は難しく考えがちですが、今日話してきたように、日々の中にアイデアが隠れているものです。投資をスタートしたばかりの人だけでなく、投資経験をある程度積んだ人であっても、どの投資のステージでも味わい深さが変わる。初めに読むと面白いと思いますね。

2冊目が、「投資で一番大切な20の教え」。この本は、ハワード・マークスというアメリカの有名なファンドの運用者で、運用報告書で書いていたことを書籍化したものです。著名な投資家、ウォーレン・バフェットが彼らの本を配ったというぐらい有名です。レベルとしてはちょっと難しいかもしれませんが、ファンドマネージャーが株式市場にどう向き合っているのかについて書かれています。

3冊目が「マーケットの魔術師」。正直、専門用語ばかり出てきますが(笑)。短期のトレーダーから長期まで、アメリカの有名ファンドマネージャーたちへのインタビュー集です。「どうして投資をはじめたんですか?」というところから、「一番起こした大きな失敗は何ですか?」とか。100人いれば100のやり方があることがわかると思います。自分に合うスタイルを探す前に、そもそもどんなスタイルがあるのかを知るときの参考図書にピッタリです。

インタビューを終えて 世界を見つめる解像度

投資の会社で働くアナリストは、世の中の話題になる前に特別なルートで知っていたり、人脈のツテなどで調べていったりするものだと思っていた。

ところが、今回話を聞いてみて、自分たちとスタートラインがそこまで違うわけではないことに驚いた。

違うのは、日々の生活での疑問や仮説が、圧倒的に多いということ。

身近なところでの「なんでそうなっているの?」「こうしたらいいのにな」「もしかしたらこうなっているのでは?」といった、疑問や仮説の量がとにかく多い。つまり、アナリストは「世界を見つめる解像度が高い」人たちなのだ。

対談中にも伝えたが、いかに自分がボーッと過ごしていたかを痛感したと同時に、個人的に自分で課題に感じていたことともつながっていた。自分はnoteのディレクターという仕事をしているが、何よりも日々の好奇心を大切にしなくてはいけない、と思っていたところだったのだ。

生活と仕事をパキッと切り分けるのではなく、仕事と生活をグラデーションのように混ぜていく姿勢は、アナリストと同じように自分の仕事でも活かせることがあると感じた。普段の生活から、少しずつ変わっていきそうだ。

   続編はこちら↓

プロフィール:

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ライター:平野太一
1991年静岡県生まれ。関西大学経済学部卒業。2013年10月よりWantedly, Inc.に入社。CSを経て、募集要項の作成・取材・ウェブメディア「WANTEDLY JOURNAL」の執筆・撮影などを担当。2016年1月よりBAKE Inc.に入社。ウェブマガジン「CAKE.TOKYO」の編集・執筆・撮影を担当。BAKE CHEESE TARTのSNS・LINE@運用、リーフレットの撮影などを担当中。2018年10月より、Piece of cake, Inc.にnoteのディレクターとして入社。クリエイターガイドやイベント企画、クリエイターサポートなど、全方位で担当中。
Twitter : https://twitter.com/yriica
note : https://note.mu/yriica

※当コメントは個人の見解であり、個別銘柄の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。また、当社運用ファンドへの組入れ等をお約束するものではありません。