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【新春企画】いきなりアマ六段、ファンドマネージャーが将棋で強くなれた理由は? 藤野英人&女流棋士・鈴木環那さん対談(前編)

こんにちは。ひふみラボnote 編集部です。

2020年もスタートいたしました。ひふみラボでは、みなさまと一緒にお金や投資のことを考える“研究所”として、今年もさまざまな切り口のnoteをお届けしていきたいと思います。

今回は新春企画ということで、ちょっと華やかな出で立ちで。代表の藤野英人が大好きな将棋について語りました!

お相手は女流棋士の鈴木環那さん。会社の公式部活動「将棋部」の特別顧問としてもお世話になっています。

どうして藤野は急速に将棋にハマっていったのか? ファンドマネージャーが将棋で強くなれた理由は? 聞き手は、レオス・キャピタルワークスの将棋部部長でもある、橋本裕一(パートナー営業部)です。

「将棋部」で成長するレオスメンバー

橋本裕一(レオス・キャピタルワークス):
鈴木環那先生とのご縁は、藤野が囲碁将棋チャンネルの番組「お好み将棋道場」にゲスト出演した時からですね(2019年2月に放映)。中村修九段と二枚落ちで対戦しました。

鈴木環那さん:
私は解説をしていたんですが、とにかくすごい棋風の方だな……!と圧倒されたんです。普通は100手くらいで終わるのに、204手の長丁場でしたね。そして見事勝利されて。藤野さんは将棋を指されるのが久しぶりだったと聞いて、また驚きました。一切、動じていなかったですから。

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鈴木環那女流二段

藤野英人(レオス・キャピタルワークス):
直近では、将棋アプリの「将棋ウォーズ」を遊んでいたんですが、リアルの将棋盤で指したのは、20年ぶりぐらいでしたね。ブランクがあったはずなんですが、昔よりは強くなっていて。おそらく、投資という仕事が将棋のトレーニングにもなっていた、ということのようなんですね。

橋本:
そこから藤野の将棋熱が唐突に再燃しまして(笑)、レオスにも公式部活動「将棋部」ができました。鈴木先生にはありがたいことに顧問をしていただいています。「将棋と投資」には通ずるものがある、ということで、森内九段と一緒にレオスでのイベントにいらしていただいたこともありました(イベントレポートはこちら)。

鈴木:
将棋部ができて、もう1年くらいになりますかね。皆さん、本当に強くなられて! まず、藤野社長がものすごく強くなられました。収録から2ヶ月後くらいに、「将棋ウォーズ八段になりました」って連絡があって。八段ってプロでもなかなか……。それで今、将棋ウォーズは九段ですよね。

藤野:
はい、九段はすぐ落っこちてしまいそうなんですが……(笑)。アマ六段の認定はいただきました。六段は一応アマの最高位ですが、ということは、うーんと強い六段とよわーい六段がいますからね、自分はまだまだ。

橋本:
それにしても、鈴木先生のおかげで、部員たちがかなり力をつけることができました。みんな「なんとか藤野さんに勝ちたい」って思っているみたいで、各自が「コソ練」してきています。部活動は、それを披露する場なんです。

藤野:
うん、みんなすごく強くなったよ。だって僕もこの間、水野さん(レオス総務部長)に負けたもん!

「負ける」からこそ、とことんハマった

鈴木:
そうそう、印象的だったのが、藤野さんが部員の方に負けた時に、「負けました!」って、とても明るい声でおっしゃるんですよね。「おめでとう!」という声に聞こえるようでした。悔しいというよりは、喜んでいるようでしたよね。普通なら、ちょっとはムスッとしちゃうものなので、不思議だな、と思っていたんです。

藤野:
実は、自分が将棋にハマっているのって、「負ける」からなんです。

鈴木:
え、どういうことですか?

藤野:
将棋って、やっぱり負けるじゃないですか、強くなればなるほど、強い相手が出てきて。負けると、悔しいですよね。この歳になったら誰かが指導してくれるということも減りますし、いかに負けられる場所に自分を置くかが大事だと思うんです。負かされるという悔しさがあるから、「改善しよう」とか「挑戦しよう」という力が湧いてくる。もちろん勝つ喜びもあるんだけど、そんなに実は嬉しくないですね。負ける悔しさの方が僕にとっては重要だし、負けた対局の方が、よく覚えていますね。特に相手が社員なら、社員の成功した瞬間でもあるし、なおさら嬉しい。

鈴木:
なるほど……。負けるからこそ成長できる、っていう感覚はすごくわかります。

藤野:
もちろん、対局としては「負けたくない」んですよ。負けないように、粘って、粘って、最後まで全力を尽くしますけどね!

橋本:
鈴木先生の対局を見ていても、絶対に諦めない、その執念を感じますよね!

藤野:
うん、とにかく最後まで、全力投球! それが鈴木先生の将棋の魅力。

鈴木:
なんだかちょっと恥ずかしいですけど(笑)、対局が始まる前までは、意外と「今日は勝っても負けてもどちらでもいいや」と思っていたりするんですよ。楽しみだな、勉強したことがどれくらい活かせるかな、って。

でも、だんだん終わりになってくると、「絶対負けたくない!」って気持ちがフツフツと湧き上がってくるんです(笑)。1%しか可能性なくても、最後まで考えますね。一番の悪手は投了することだと思っているんで。

橋本:
格好いいです!

ファンドマネージャーと将棋の共通点

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鈴木:
最初に藤野さんの対局を見たとき、その棋風に驚いたことはお話ししましたけど、何より「盤面全部を使う方だな」と思ったんですよ。端から端まで。守りも怠らず。

藤野:
それはまさに、今の自分の仕事とリンクしていると思いますね。将棋とファンドマネージャーの仕事ってすごく似ているんですよ。

ファンドマネージャーって、銘柄を選んで盤面に配置して動かす、というイメージで。上場企業の3600社のうち、任意の株を選んで、盤面に並べる。それは5個でもいいし50個でもいいし。僕の場合は、200個。将棋の場合は駒に個性がありますが、銘柄にはベンチャーもあれば老舗大企業もあってそれぞれに個性があるので、それらを適切に配置しながら「マーケット」という相手と戦っていく。だから、盤面全体を見ているように見えたのではないでしょうか。

鈴木:
それは、まさに将棋ですね。個性を見抜くことも大事ですし、それが生かせる配置でなければいけないんですものね。

藤野:
将棋の場合は王将があって、運用にはありません。それは違うところですけどね。この銘柄は攻めに強い、守りに強い、っていうのがあるので、攻めと守りの駒をバランス良く盤面に配置しているイメージです。

将棋では「攻防手」と言って、攻めと守り、両方に効くという一手があるんですが、実はこれは運用の世界でもあると思っています。攻めながら守る、そういう展開ができるように、いつも考えていますね。

鈴木:
受けが強い人こそが本物だと思います。アマチュアだと攻めがすごく強くて勝てる人というのはいるんですけども、だんだんと攻めだけでは勝てなくなってきます。攻めている途中で、ふっと王様を囲ったり、王様がひたひたと逃げていたり。こういうのは将棋の世界では「格調高い一手」って言ったりしますが。

橋本:
本当に高度な戦いですね、それができると並大抵の方じゃないなという印象ですよね。

ファンドマネージャーの強いメンタルの秘密

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藤野:
あと、ファンドマネージャーの仕事が将棋に生きたと思えることが、もう一つあって。それは「切り替えの早さ」かもしれないな、と。

年間、市場が開いている日が対局日だとすると、月曜から金曜までお正月祝日を除けば、220日あるんです。だから1年に220試合やっているようなもので。毎日、毎日勝敗がつくわけですが、けっこう負けるんですね。220日あったら、120勝100敗ならいい方なんです。でも、その負けを翌日に引きずっちゃいけない。負けてもそれを忘れて翌日の試合に挑むみたいなところがあるんですよ。だから切り替えが良くないとやっていられない。

鈴木:
そこまで局数があったら精神を保てる自信がないですが、一体、どうやっているんですか?

藤野:
当然、勝つとホッとして、負けると悔しいです。それに成績が悪くなると周囲からもアレヤコレヤ言われますし。実際、その波に耐えられなくてウツになる運用者ってものすごく多いですよ。僕が30年続けられたのは、そうならないように日々、訓練してきたからだと思いますね。

その秘訣がね……僕、「ふじのひでとさん」は着ぐるみだと思うことにしているんです。

橋本:
どういうことですか(笑)?

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藤野:
今、みんなに見えている「ふじのさん」は着ぐるみで、実はチャックがあって、その中にはイケメンの細マッチョの本体が入っているんです。お風呂の時だけ、それを脱ぐ(笑)。中から覗いているだけなので、着ぐるみのことを何て言われても気にならないし、着ぐるみが勝っても負けても、冷静でいられるわけですね。他人事にしてしまって、客観的情報にしてしまうこと。そうしたら、戦うことが苦ではなくなります。

鈴木:
なるほど、それはいいかもしれない(笑)。まさに将棋もそうですよ。勝負の世界でそこができればすごく長く戦えるんじゃないか、と思います。負けた痛みを痛みとして感じてしまうと、長くこの世界にはいられないです。

橋本:
それに、のめり込みすぎるよりは冷静な判断もできるようになりそうですね。

藤野:
そう、「傍目八目」って言うじゃないですか。将棋にしてもビジネスにしても、別の傍観者としての目を持っておくといいと思いますね。

鈴木:
将棋では、1回目のミスは致命傷にはならないといわれるんです。でも、実際はそれが焦りとなって2回目のミスを呼ぶんですよね。ミスにミスを重ねてしまうという……。どうやってフラットな状態に戻すかというところで、冷静に傍観者としての目を持つということは、投資家としての藤野さんからの大きな学びになりそうです。

          (後編に続きます!)

撮影:坂本泰士

※ 当記事のコメントは、個人の見解であり、市場動向や個別銘柄の将来の結果をお約束するものではありません。ならびに、当社運用ファンドへの組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。