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投資も「お金の教育」も、「自分軸」を見つけることが大事——レオス数原靖子が子どもに伝えたいこと【後編】

「これからのお金」「これからの投資」を一緒に考える“研究所”、ひふみラボ。以前大好評だった連載「子どもに伝えたい、お金のこと」が再始動しました! 

「お金への知識が乏しく、子どもに教えられることがない」
「子どもたちが生きる時代に、自分の知識が役に立つのか自信がない」

そんな、多くのお母さんお父さんと同じ不安を抱えるライターの森川さんが、個性豊かなレオス・キャピタルワークスのメンバーに「お金の教育」についてあれこれ疑問をぶつけていきます。
 
今回登場するのは、中学1年生の息子さんを持つ経営企画&広報・IR室の数原(すはら)靖子です。前編では、子どもとの会話から金融教育は始められると話してくれました。


お金との付き合い方に正解はない

レオスの広報などを担当する数原。中学1年生の息子と暮らしています。

——前半では「お金の教育は日常の会話からスタートさせたらいい」というお話を伺い、肩の荷が下りた気分です。とはいえ、自分の金融や投資の知識に自信が持てないのは相変わらず。何から学べばいいでしょうか?

数原:お金の知識は大切ですが、その前に、お伝えしたいことがあるんです。私も含め、多くの人が義務教育で「正解を探しなさい」と教えられてきたので、お金にも正解をついつい求めてしまいがちです。「小学生のうちにこんな金融教育をすべきだ」とか、「この金融商品を買ったら間違いない」とか、すべきことがあると思ってしまう。
 
でもじつは、世の中に誰もが似合うTシャツが存在しないように、お金との付き合い方にも唯一の正解はないと思っています。自分の収入やライフスタイル、価値観を見つめなおして、ひとつひとつ納得しながら決めていくものなのです。

——なるほど……! お金の教育にしろ、金融商品にしろ、自分にぴったりなものをみずから探っていくしかないんですね。たとえば、まずは親である私が自分らしい投資のスタイルを掴むとしたら、何から始めればいいでしょうか。

数原:小さな金額から始めてみるといいですよ。月々5千円や1万円など自分にとって無理のない金額を投資して、その値動きを見て、どう感じるのかを確かめてみる。長い目で、自分が納得できる金融商品との付き合い方を模索すればいいと思います。

自転車の練習をするように、投資の世界に慣れ親しむ

連載担当のライター、森川さん。4歳の娘さんへのお金の教育は、「現状ゼロ」。

——まずは自分が緊張しない範囲ではじめて、慣れていくことが大切なんですね。

数原:投資は、自転車の練習によく似ているんですよ。一度乗っただけでいきなりギューンと走れる人もいれば、転ばないように慎重にコツコツ練習する人もいる。そのどちらも正解なんです。ただ繰り返しになりますが、自分でやってみて、感覚を掴むことが本当に大切で。

——ああ、たしかに自転車の乗り方をYouTubeで研究したり本で読んだりするだけでは、乗れるようにはならないですもんね。

数原:そうなんですよね。「自転車の練習」という点でいうと、我が家は子どもが小学校低学年のときに子ども名義の投資信託の口座をつくったんです。お年玉を金利の低い銀行預金にただ置いておくのはもったいないという理由でしたが、今となっては、子どものいい「自転車の練習」になっているなと思います。

——へえー! お子さんに、投資信託の仕組みやノウハウをじっくり教えたということですか?

数原:いえいえ、そんなに詳しくは説明していません。子どもに口座の存在を伝えたのが小学校3年生ぐらいのときだったかな。パソコン上で残高を確認できる「ひふみWEBサービス」を見せてあげながら「ここに口座を持っていて、何社かの株が入っているパッケージなんだよ」とざっくり教えました。そうしたら興味を持って自分でログインするようになって、小学校高学年になる頃には、変動する数字を追いかけるようになりましたね。

——株価が変動して、ときには資産が目減りすることもあると思います。お子さんは怖がりませんか?

数原:割と平然としています。「株価が変動するのは当たり前のことで、トトロと同じなんだよ」と伝えてあるからかもしれません。

——えっ、トトロですか!?

数原:はい(笑)。トトロが「ハーックション!」と大きなクシャミをひとつすると、まわりはびっくりするし木々もザワザワするけれど、やがて静まりますよね。それと同じで、コロナショックなどの株価を揺るがす大きな出来事があっても、いつかはまた落ち着いてくる。マーケットは生きていて、息をしていて、動いている。ずっと同じということはないんです。

それを自分のお年玉の金額で実感できるのが、いい経験になっていると思います。数字が変動するのに長い期間触れていると、値動きを必要以上に怖がらなくなる。子どものときから自転車に慣れ親しんでいたら、大人になってからも怖がらず乗ることができるのと一緒ですね。

——早くから投資の世界に触れることは、最高のお金の勉強ですね。私も子どものときから学んでおきたかった!

数原:日本の大人の多くが、投資を怖がる理由がまさにそこだと思います。大人になってから突然、資産が増えたり減ったりする世界を見始めると、それは怖いですよね。だから子どもの口座をつくって、早いうちから投資に慣れ親しむ環境を整えてあげるのって、なかなかいい「金融教育」だと思いますよ。

投資もファッションも、「自分軸」で

数原:話は少し変わるのですが、最近新しく勉強を始めたことがあるんです。骨格診断やパーソナルカラー診断をご存じですか? 骨格診断は、骨格や筋肉の付き方など生まれ持った体の特徴に似合うファッションを見つける手法。パーソナルカラー診断は、肌や目の色から似合う色を導きだす手法です。
 
このふたつの何が楽しいかって、その人自身が起点であることなんです。つまり「歳をとっているから」「体型にコンプレックスがあるから」「流行っているから」と周りと比較するのではなく、「今のあなたからどう素敵になるか」だけを考えるんですね。
 
たとえば、最近はハイウエストボトムが流行っていますが、あれは全員に似合うアイテムではありません。骨格のタイプによっては、プラス3㎏の体型に見えてしまうこともあるくらい。「あの人が着ていてすごく素敵だったのに、自分が着るといまいち…」という経験ありませんか? 自分の骨格を知って、からだのつくりに合った服を選ぶことが大事なんです。

数原の「お師匠さん」が執筆した本と、診断してもらった自分に似合う色見本

それって投資も同じだなと思えます。人が毎月10万円の投資をしているから、1万円じゃ少ないのでは? と思う必要はありません。他人もトレンドも関係なくて、「あなたの収入のなかで、納得して投資できる金額はいくらか」「人生をより楽しむために、あなたはどうお金と付き合いたいのか」をぜひ考えていただきたいです。とにかく「自分」が軸であることがとても大切です。

——なるほど! ファッションと同じと言われると、とてもよく理解できます。まずは自分の軸を見つけないと、ですね。

数原:ええ。皆さんきっと好きなことや趣味は持ってらっしゃいますよね。そのことについて、なぜ好きなのか、どのようにお金をつかっていきたいのかを突き詰めて考えていくと、自分のこだわりや「どう生きたいか」の軸が見えてくるんじゃないかと思います。
 
子どもにも「好きなことを大切に」と常々話しています。この先、子どもが好きなものや趣味、行ってみたいところにお金をかけたいと言うのであれば、投資信託で運用しているお金を換金して使ってみる経験もさせてあげたいですね。

レオスの代表・藤野の書籍にある言葉ですが、「買い物は自分自身の“意思”そのもの」。意思の宿った買い物を経験していくことで、彼の本音や生き方の軸が見えてくるんじゃないかと思います。

いろいろな仕事に触れる機会をつくりたい

——最後に、「こんなお金の教育が当たり前になればいいのに!」というお考えがあれば教えていただきたいです。

数原:そうですね。家庭のなかでお金のことを日々話すことはぜひ実践してみていただきたいのですが……もうひとつ、子どもが仕事や働くことに触れる時間が持てるといいなと思います。
 
そのためにまずできるのが、親から子どもにどんな仕事をしているのかを伝えてあげることでしょうか。そんなに難しい話ではなく、お母さんがなぜパン屋で働いているのか、きっかけは? なぜそこを選んだの? といった動機や理由を伝えるだけでも、お子さんの働くことに対する理解は深まります。

——数原さんも、お子さんによく仕事のことを話されるんですか?

数原:はい。子どもが4歳の頃、「お母さんの会社を見たい!」と言うので会社の休憩スペースに連れてきたことがあるんです。そうしたら興味深そうに「へー!」と言いながら喜んでいました。「なるほど、子どもは子どもなりに親の仕事を理解しようとしているんだ」と気付いてからは、自分の仕事のことを子どもに積極的に話すようにしています。仕事で悩んだ時には子どもに相談することも。「うーん」と唸りながら、一生懸命考えてアドバイスしてくれるんですよ。
 
あと、欲を言えば、親以外のいろんな仕事に触れられる機会がもっとあればありがたいですね。私自身、子どもの頃からいろんな職業についてのリアルな理解をもっと深めたかったという思いがあります。

——たしかに! 思い返せば、就職活動を始めるまでに直接触れて理解できていた職業って、ごくわずかでした。

数原:そうなんですよね。大学3年生になって、急に業界研究を始めるのって違和感がありますよね。学校教育のなかで、様々な職業に関する理解を深められて、子どもの仕事観を養えるプログラムができたら素敵だなと思います。それを実現するには、すべてを先生任せにするのではなく、保護者や地域社会の人たちの協力が必要になります。そういう社会のサポートが当たり前になってくるといいのですが。
 
とはいえ、やっぱり子どもにとって親の仕事が一番理解しやすいし、一番興味を持てるところ。親がイキイキと働いている姿を見せたり、悩んでいることも包み隠さず話したりすることから始めたいですね。

——はい! 娘が仕事にポジティブな印象を持てるよう、まずは自分が仕事を楽しんでいきたいと思います。

プロフィール:

ライター:森川紗名
1985年 兵庫県生まれ。ライター。4歳の娘を持つ母でもあります。食品会社に10年あまり勤めたのち、育児に専念したく退職。その後、書くことに魅了されフリーランスのライターに転身。現在はウェブ媒体記事の執筆などを担当しています。

取材・執筆:森川紗名
編集:田中裕子
写真:沼尾紗耶(レオス・キャピタルワークス)
 
 ※当記事のコメント等は、掲載時点での個人の見解を示すものであり、市場動向や個別銘柄の将来の動きや結果を保証するものではありません。ならびに、当社が運用する投資信託への組み入れ等をお約束するものではなく、また、金融商品等の売却・購入等の行為の推奨を目的とするものではありません。


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