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子どもにめばえた「お金への好奇心」をはぐくむ。レオス西澤が子どもに伝えたいこと【前編】

「お金についての知識に自信がない」
「子どもたちが生きる時代に、自分の経験が役に立つのかわからない」

そんな多くの親御さんと同じ不安を抱えるライターの森川さんが、個性豊かなレオス・キャピタルワークスのメンバーに「お金の教育」についてあれこれ疑問をぶつけていく本連載。今回は5歳の女の子のパパ、営業部の西澤祐翔(にしざわ・ゆうと)が登場します。

子どもが小さいうちからできるお金の教育や、お金への姿勢が違う夫婦の子育ての話、「子どものちょっとむずかしい質問にどう答えるか? 」など、が次々と飛び出します。

「なぜ欲しいのか」、考えるクセをつけるための声かけ

——西澤さんには5歳の娘さんがいらっしゃると伺いました。じつは私の娘も5歳で、同い年の子どもを持つ親として、お話をとても楽しみにしていました。早速ですが、いま実践されている「お金の教育」について教えていただけますか?

西澤:はい。我が家がいま意識している「お金の教育」は、娘から何かをねだられたときには、欲しい理由を必ず訊くことです。「お金はそのへんに落ちているものではない」「大切に扱うべきものだ」と知ってもらいたくて始めました。

営業部 西澤祐翔(にしざわ・ゆうと)。妻と5歳の娘の3人暮らし。趣味はスポーツ観戦、ダイエットを兼ねた筋トレ

副次的なねらいとして、「論理的に考える力を身に付けてほしい」という思いもあります。自分の考えを人にわかりやすく伝える練習の場と捉えているんです。

——ああ! 前回のインタビューに応えてくださった山﨑さんも、「欲しい理由を訊くようにしている」とおっしゃっていました。ただ、山﨑さんのお子さんは小学2年生でしたが、西澤さんの娘さんは、まだ就学されていないご年齢です。どんなやりとりをされているのでしょうか? 私の娘に理由を訊いても、十分な回答は返ってこないだろうなと思いまして……。

連載担当のライター、森川さん。幼稚園年中の娘さんへの「お金の教育」を考えるべく、鋭意インプット中。

西澤:いやいや、うちの娘もそんな立派な受け答えはできません(笑)。どこの家庭でもしているような、ごくありふれた会話を交わしています。
 
たとえば、以前ゲームセンターに行ったときに、「キーホルダーが取れるUFOキャッチャーをしたい」と娘が言いだしまして。「なんでやりたいの?」と訊くと「幼稚園のバッグにつけたいから」と答えたんです。
 
ちゃんと欲しい理由や活用の見通しがあるわけですから、「それならいいよ」と許可して、一緒にUFOキャッチャーを楽しみました。

——なるほど。なにげない日常会話のなかで、欲しい理由を考えて伝える回数を重ねるだけでも十分なんですね。

西澤:もうひとつ例を挙げると、最近、娘のリクエストでゲーム機を買いました。割と高価なものですが、なぜ買ったかというと「いとこのお姉ちゃんのおうちで遊んだゲームがすっごく楽しかった! 今度一緒に遊ぶときのために練習したいから、買ってほしいな」と娘が言ってきたからです。
 
「なぜ欲しいか」の説明がよくできているなと感じましたね。ちゃんと時間を決めて遊ぶ約束もしてくれたので、運動会でがんばったご褒美に購入しました。

——とっても上手な説明ですね! 日ごろの会話で考える力や伝える力が鍛えられているんだなと感じました。

西澤:ありがとうございます。ゲーム機を買ってからは家族全員でレースゲームを楽しんでいます。娘はメキメキと腕をあげてきていて、近ごろは私や妻を負かして1位や2位を取ることもあるんですよ。自分の腕前を早く披露したいのか、「いとこのお姉ちゃんたちに会いたい」ともよく言っていて(笑)。
 
練習を重ね、技術を習得していくプロセスを楽しんでいる彼女の様子を見ていると、買ってよかったと思いますね。

夫婦の「お金観」が異なるからこそ、できる子育てがある

——「欲しい理由を訊く」方針は、奥さまと話し合って決められたのでしょうか?
 
西澤:というよりも、これは僕が妻から施されている教育そのものなんですよ(笑)。

——ええ!? どういうことでしょう。
 
西澤:僕はもともと、けっこうな浪費家だったんです。コンビニに行くと「なんとなく」でお金を使ったり、積読の本がものすごく溜まったり、何に使ったかよくわからないけど月末はピンチだったり……。
 
そんな調子だったので、結婚前から現在にかけて、妻からは口酸っぱく「ムダ遣いするな」と言われ続けているんです。同じ本を2冊買ってしまったとき、当時彼女だった妻から強くたしなめられたのを覚えています。
 
最近、電子書籍専用の端末を買ったのですが「なんで欲しいの?」「絶対に必要なものなの?」「スマホで代用できないの?」と何度も確認されました(笑)。
 
——おお。まさに娘さんに投げかけているような質問ですね。
 
西澤:そうなんですよ。買ったあとも「あんまり使っていないようだけど」なんて結果の後追いもされています(笑)。きびしいですが、妻のお金に対する考え方はとてもしっかりしていて勉強になります。彼女に影響されて、僕の金銭感覚もかなり矯正されました。
 
——ご夫婦お二人が、もともと異なる「お金観」を持っていたとは意外でした。

西澤:はい。私たちは受けてきた「お金の教育」がまったく違うんです。妻の実家は会社を経営していて、その影響もあってか、妻はお金のムダ遣いを絶対にしません。なんでも、彼女の祖父からの教えのひとつに「高価なものを買うときは3年待て。それでも欲しいと思うなら買え」という言葉があるらしいです。
 
一方僕は、お金の使い方についてきびしく言われることなく育ちました。裕福だったわけではありませんが、「好きなことにはどんチャレンジしていいよ」という方針。おかげで子ども時代は、カードゲームやクワガタのブリードなど好きなことに没頭する日々を送りました。今思うと、自分がやりたいことを主体的に追求するいい経験ができたと思います。
 
——お金観が異なるお二人が一緒に暮らして子育てをするとなると、意見がぶつかることはありませんか?
 
西澤:意見が真っ向から対立することは、あまりないかもしれません。僕は自分の意見より、妻のほうがだいたい正しいと思っているので(笑)。もちろんなんでも妻の言う通りというわけではなく、その都度二人で話し合うプロセスを大事にしています。
 
僕と妻は、お金の使い方以外でもいろいろなところでタイプが真逆なんですよね。たとえば妻は、夏休みの宿題は初日に終わらせるタイプ。対する僕は、最終日になんとか帳尻を合わせてきました(笑)。
 
このようにタイプが違うと子育てしづらいように思われるかもしれませんが、むしろプラスの面が大きいと感じています。

たとえば妻は娘に「歯磨きやお風呂を全部済ましてから、ゲームをしようね」などと促して、娘の規律性を育んでくれてます。これは僕にはできないことです。一方で僕は、娘が好奇心を抱いたことや疑問に感じたことに対して、できる限りていねいに向き合って応えるようにしていて。
 
お互いに得意な部分を活かし、補いあいながら子育てできているような気がしますね。

子どもにめばえた「社会への興味・好奇心」にていねいに答える

——西澤さんはできる限り娘さんの好奇心に応えようとされているとのことですが、娘さんは今どんなことに興味を持たれているんですか?
 
西澤:僕が在宅勤務している様子を見たり、妻と僕が会話をしているのを聴いたりして、社会のいろんなことに少しずつ好奇心を抱くようになっています。最近は「ガソリンの値段ってなんで上がってるの?」と質問されました。

——ガソリンの価格ですか! 5歳児がガソリン価格の上昇を把握しているのもすごいし、そこに疑問を持つなんておどろきです。
 
西澤:おそらく妻のマネをしているんだと思います。家族でドライブをしているときに、妻からよく「ガソリンの値段、これからどうなりそう?」と質問されるので。
 
——ああ、たしかに大人の会話に興味を持ったり、マネをしたがったりする年頃ですよね。
 
西澤:はい。たとえ大人のマネであったとしても、社会に興味を向けてくれるのは頼もしいですね。せっかくめばえた好奇心を無碍にしたくないので、価格変動が起こるメカニズムを精一杯伝えました
 
「ガソリンの元になる原油は、中東の国で採れる」「原油が採れる国同士が話し合って、生産量を決めている」「今は新型コロナウイルスの流行や、ウクライナとロシアの戦争を気にかけて、生産量を減らしているらしい」「原油の生産量より、世界中が欲しがる量のほうが多いから、値段が上がっている」というふうに。
 
——とてもわかりやすいです。……けれど5歳の子どもでも理解できるのでしょうか?

西澤:いやあ、わかっていないと思います(笑)。でも「子どもだからわかないだろう」と簡単にあきらめたくないんですよね。
 
娘は、僕が株価チャートとにらめっこしている様子をよく見ているので、それに関する質問もしてきます。先日は為替相場のしくみにまで話が及びました。円安、円高とは何かを、おままごと用のお札やコインを使って工夫しながら伝えましたね。
 
妻には「まだわからないんじゃない?」と苦笑されましたけど(笑)、今はすべてを理解できなくてもいいんです。けれど、こちらが真剣に向き合えば子どもの知的好奇心は伸びていくに違いないと信じて、ていねいに伝える努力はしています。
 
——「大人の世界の話だからまだ知らなくていい」ではなく、「あなたが住んでいる世界の話だから」と様々なことを伝えていけば、子どもの興味の幅がグッと広がりそうですね! 私も「まだ早い」を禁句にして、子どもの好奇心を刺激していきたいと思います。
 
(つづく)

プロフィール:

ライター:森川紗名
1985年 兵庫県生まれ。ライター。4歳の娘を持つ母でもあります。食品会社に10年あまり勤めたのち、育児に専念したく退職。その後、書くことに魅了されフリーランスのライターに転身。現在はウェブ媒体記事の執筆などを担当しています。

取材・執筆:森川紗名
編集:田中裕子
写真:沼尾紗耶(レオス・キャピタルワークス)

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