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【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝

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第14回山本七平賞を受賞され、100年経営の会顧問や、日本将棋連盟アドバイザーなど、多方面でご活躍されている作家・北康利先生による新連載企画です。 日本林学の父、公園の父と呼ば… もっと読む
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2022年8月の記事一覧

【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝 #71

前回はこちら↓ 最終章 若者にエールを送り続けて (4) 希望を失うことなく そして迎えた敗戦。八月一一日に七九歳を迎えたばかりであった。 幸いにも渋谷の家は戦火を免れ、伊東の歓光荘も無事であった。 だが戦時中から続いていた食糧不足は一層深刻になり、猛烈なインフレが来襲する。 物資は闇市に行かなければ買えないという混乱の中、それでも静六は博夫婦に頼ることなく伊東で頑張っていた。静六の言葉に〝独立自強〟というのがある。他人の厄介にならず独立生活してゆく人のことである。晩年ま

【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝 #72

前回はこちら↓ 最終章 若者にエールを送り続けて (5) 『私の財産告白』 人生計画の最終章に到達し、計画通り晴耕雨読の隠居生活を楽しむはずであった。ところが、楽隠居が必ずしも〝楽〟でないことがわかったのだ。 八〇歳近くになったが、頭も体も少しも衰えたという自覚はなく、六〇歳の頃と少しも変わらない。これは人生計画を再度立案し直す必要があるのではと思い至った。そこで以前のものを旧人生計画と呼び、新人生計画を練り直し始めた。 その結果がこうだ。 八五歳までの二〇年間をお礼奉公

「若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝」著者・レオスメンバー座談会 (5)

前回(第4回座談会)はこちら↓ ================================== 本編 ――今回も第5回座談会にご参加いただきましてありがとうございます。早いもので連載は最終章に突入し、最後の座談会となりました。 前回と同じく本連載の作者である北康利先生と、レオス・キャピタルワークス株式戦略部のシニア・ファンドマネージャー八尾尚志、シニア・アナリスト小野頌太郎の3名でお送りいたします。 また、『若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝』完結記念イベントを2

【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝 #73

前回はこちら↓ 最終章 若者にエールを送り続けて (6) 帰還兵の若者に夢を語る 昭和二六年(一九五一)八月のことである。一人の青年が、雨の中をわざわざ訪ねてきた。 「『私の財産告白』を拝読し感銘を受けました。つきましては大金持ちになる秘訣を承りに参りました」 静六の顔を見るや否やそんなことを口走った。 (また変な人が舞い込んできたな…) と思ったがとにかく話を聞くことにした。 「私は中学卒業後、五年間満州に出征。幸い怪我もなく無事帰還し、その後死に物狂いで金儲けに志しま

【北康利連載】若者よ、人生に投資せよ 本多静六伝 #74

前回はこちら↓ 最終章 若者にエールを送り続けて (7) 楽老期をどう過ごすか 彼は『人生計画の立て方』の中で〝楽老期をどう過ごすか〟という章を立て、老境の生き方・暮らし方の秘訣を挙げている。 まず何より、老いたら負けであるように考えず、老いの到来を素直に認めることだと彼は言う。普通の養生法と健康法を励行しながら、愛欲も抑圧せず、自然な老人化に任せること。可能なら、後進の邪魔にならない程度に壮年期の仕事の一部を奉仕の精神で継続するのもいい。 そして早くから陰徳を積み、老年